Don't来る、いまじねーしょん。

2013,7月現在 証拠隠滅するものが無かった

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第七話 それぞれの運命 前


霊夢と魔理沙は弾幕ごっこを終えて、社の段差に腰掛けていた。
霊夢は先程の言葉を忘れなかったと見えて、社の奥から缶と包帯を持ってきてくれた。
缶の中はどろりとした半固形状の軟膏のようなものだった。霊夢はそれを軽く指につけると、傷口に塗りたくった。
ひりひりとしたむず痒い痛みに顔をしかめる。かなり染みる。
「なあ魔理沙、さっきのスペルカードなんちゃらってどういう意味なんだ? 」
ふと、気になっていたことを聞いた。
魔理沙や霊夢の弾幕ごっこを見て、もっと弾幕ごっこを知りたいと思ったのだ。
それにスペルカードのことを知っていれば、もし、何か事が起きたときに役に立つかもしれない。
「ああ、スペルカードブレイクか。文字通り、スペルが打ち破られることだ。そもそも------」

そもそも、スペルカードルールはその名を命名決闘法と言う。
まあ、馴染みやすいようにか、横文字で言う奴が多いがな。
この命名決闘法は最近、妖怪の代表者と博麗の巫女が決めた画期的な決闘方法だ。
妖怪という奴はその強靭さや、恐ろしさとは裏腹に、存外人間に依存してるものなんだ。
人間を襲ったり、人間に退治されたりを繰り返すことによって力を保持することができるんだな。
だが、人間も妖怪も長い年月の間に大分ふぬけてしまったようで。
更に博麗大結界がそれに拍車をかけた。
博麗大結界は今から百数十年前に張られた結界だ。
博麗大結界はその効果の強力さに比べては脆弱だった。
強大な能力と強靭な術を両立するのは難しいらしい。
だから、しょっちゅう穴やら歪みやらが発生して、管理者は大忙しって話だ。司る巫女はのんびり茶を啜ってるがな。
そういう、歪みや結界の穴から外界の物が流れついたり、お前みたいな外来人が来るんだ。
幻想郷では、さほど珍しいことじゃないぜ。外界の物を売る店もあるくらいだしな。
話はそれたが、つまり強い妖怪と人間や妖怪同士が争えば幻想郷を囲む結界を壊しかねない。
そのためか、迂闊に争えなくなった。
そのせいで妖怪の力が弱まってしまったんだ。
そして、博麗大結界によってやって来た吸血鬼達に、幻想郷の妖怪達は蹴散らされてしまった。
まあ、最終的には強力な妖怪が吸血鬼を圧倒してその場は収まったんだが。これが俗に言う「吸血鬼異変」だな。
この出来事に危機感を覚えた妖怪達が自分達の力を保持するため、且つ安全に人間達と争うため、この命名決闘法を編み出した……

------ということだ」
「はあ……」
あまりにも突飛な話しで思考が追いつかなかった。
しかし、魔理沙の言うことにはリアリティがあった。実際、その命名決闘法を行っているところをこの目で見たのだから、これが相変わらず夢でも無い限り嘘ではないだろう。
それに、この軟膏がひりひりとしたむず痒さを示してくれている。この感覚は夢ではあるまい。
自分の膝を見ると、すっかり包帯を巻かれており、きちんと処置が成されていた。
「ありがとう、霊夢」
「いいわ別に。この怪我は私にも悪いところがあるからね」
「そうだ霊夢。きちんと謝っておけよ」
「一番悪いのは、颯の間近を通ったあんたよ……」
「悪い悪い……。すまなかったな颯」
「いいよいいよ」
最初は冗談を言ったものの、素直に謝る魔理沙を許せぬ訳が無かった。
「ところで霊夢、ルールブックはあるか」
「スペルカードルールの? 確か中の棚に……」
そういうと霊夢は立ち上がり、社の中に入っていった。
しばらくして、霊夢が紐で紙が結われた冊子を手に戻ってきた。
「一度読んだから棚の奥にしまってたわ」
冊子を魔理沙に渡した。
「そう、これこれ。颯、これが命名決闘法のルールブックだ」
そう言って魔理沙は冊子を手渡してきた。
「これ、くれるのか」
「別にいいよな、霊夢」
「まあ、もう覚えたしいいわよ」
「これだから物覚えのいいのは……。これ読んどけよ。役に立つと思う」
そう言って、魔理沙はおもむろに立ち上がった。
「帰るの? 」
「ああ、日も傾きだしたからな」
気付くと、西の空はほんのりと赤みを帯びていた。
「陽が沈むのも早まりだしたわ」
「そうだな。冬も近付いてきた」
魔理沙はそう呟くと、箒に跨がりふわりと浮き上がった。
「じゃあな。霊夢、颯。明日の朝に迎えに来るぜ」
そう言い残すと、そこには箒の道筋が残光となってあるのみだった。

「さあ、入りましょう」
「えっ、霊夢。俺はどこに」
「どうせ行く宛も無いんでしょう? 明日までは泊めてあげるわよ」
「ありがとう……!」
幻想郷の人間に初めて心から感謝した瞬間であった。

------
「咲夜、来なさい」
紅で塗りたくられた広間に少女のか細い声がこだました。
その瞬間、一人のメイドが現れた。
まるで元からそこに居たかのように。
「お呼びでしょうか」
十六夜咲夜のすうっと耳に抜ける、ひんやりとした声にレミリア・スカーレットは微笑んだ。
「咲夜、暇だわ」
「ひま、とは」
「退屈だってことよ。何かない? 」
「……そうですね。先程館にやってきた者に、追い返そうと思ったのですが、余りにしつこい輩が居まして」
「用件は? 」
「薬売りだそうですが」
「このスカーレットデビルに薬を売りつけにくるとは面白い。通せ」
「かしこまりました」
そう、相も変わらず冷たく言うと、咲夜はその場から掻き消えた。
レミリアを一人残し、広間は静寂に包まれることになった。
だが、すぐに鳴り響く足音で上塗りされてしまった。
足音は三名。おそらく門番の紅美鈴とメイド長の咲夜、それとどこの者かも分からぬ客人が一人。
どのような奴かな、と髪を指で弄びながら待っていると、広間の大きなドアが音も無く開かれた。
かつかつとヒールを鳴り響かせて歩く咲夜、それと縄でぐるぐるに縛られた来客、その縄を持つ美鈴が入ってくる。
来客は全身を黒ずくめのコートのようなものに身を包み、おまけにフードまで被っている。
どうしても正体を明かしたくないらしい。
黒い来客が縄を持った美鈴に突き出される。
「ご苦労。さて」
レミリアが問う前に、来客が口を開いた。
「セールスマンを縄で縛るたあ、荒々しいおもてなしね」
「いやあ。貴女こそ、全身黒ずくめの怪しい身なりでよく来ようと思ったものね」
「外の世界ではセールスマンは皆、黒い装いと聞いたわ」
「フードまで被ってくる馬鹿は居ないわよ。美鈴、フードをとりなさい」
「はっ」
美鈴は短く答えると、フードを客人の頭から引きはがした。
「お前は……誰だ? 」
客人は少女であった。それも妖獣の。
「それは言えないね。それより貴女、レミリア・スカーレットさん」
「何だ」
「貴女、暇してるのでしょう。暇潰しに効く良い薬があるんだよ」
「ほう。この私を試そうというの? 」
「試そうだなんて滅相もない。貴女は既に試された。今は牙の抜けた哺乳類に過ぎないわ」
その言葉に咲夜の手がナイフに伸びるのが見えた。
「言わせておけば。ただ、間違ったことは言ってないわね。確かに私は負けた。そして契約を結ばされた」
「そう。貴女は何も出来ない」
美鈴が拳をぎりぎりと握りしめているのが分かった。
「足掻くことくらい出来るのではなくて? 」
「足掻いたとして、人間に鎮圧されたじゃない。無駄なものよ」
「無駄だったかしら? 」
「私から見ればね」
「ふうん。で、薬とやらは」
ついにナイフに手をかけた咲夜を手で制止する。
それを見て美鈴も拳を緩めた。
「ふふ、乗ってくるのね」
「咲夜、美鈴。席を外しなさい」
しかし、と言いたげな二人をレミリアは目で圧した。
それを見て、しぶしぶと二人は広間を出ていった。
「ふふ」
客人は微笑した。
「さて、薬とやら」
「ふふふ、薬ではないわ」
「分かっている」
「だけれど、この情報は貴女の暇を潰すいい薬になるに違いないわ」
レミリアは含み笑いをして客人を見つめていた。

------

目が覚めた。わけではないようだ。
このリアリティのないふわふわとした感覚は現実じゃない。
目をゆっくりと開く。
真っ白だった。
何もない、空白に突然投げ入れられたかのようだ。
瞬間、視界がブラックアウトし俺の姿が現れた。
客観的に見ているのだろうか。自分の目で見ているという感覚はまったくない。
まるでゲーム画面のようだ。
膝をかかえて、いわゆる体育座りをしている俺は、重力を感じさせずくるくるとその場を回転していた。
俺自身に回っているという感覚はない。ただ、回っている俺が見えているだけだ。
これは俺なのか? それとも俺ではないのか?
体育座りのままくるくると立体的に回転していた俺がぴたりと止まった。
その身体はしっかりと視界に向けられていた。
ぼそぼそと何か聞こえる。
"俺はお前じゃない。お前もお前じゃない"聞こえない振りはできなかった。

---あとがき
5000文字制限に引っ掛かった。


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