Don't来る、いまじねーしょん。

2013,7月現在 証拠隠滅するものが無かった

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――――
 話を終えたレミリアはふうと一息つくと、頬杖をついて友人を見上げた。

「────」

 一方、パチュリーはその栗にも似た口を開けたまま唖然としていた。

「大丈夫かしら、パチェ? まあ、無理もないか」
「ねえ、冗談よね?」
「私が友人に平気で嘘をつくように見える?」
「見える」

 即答であった。

「おいおい。でも、事実なのよ。私も最初は信じていなかったけれど」
「確証たるものが?」

 レミリアは頷いた。

「ええ。血を舐めてみて確信した」
「血ね……。そこら辺は吸血鬼の世界だけれど、信頼していいものなの?」
「私は血を吸うのは苦手だけど、血の中に含まれる本質を探ることは他の吸血鬼と遜色無いわ。信じてよパチェ」

 友人の信じてという言葉にパチュリーは拒否する道理がなかった。

「信じるけど……。大丈夫なの?」
「大丈夫でしょうよ。たぶんね」
「はぁ」

 こういうときこそ運命を操れば良いものを、とパチュリーはつくづく思った。

「では、私はそろそろ寝に戻るわ。今の話は内密にね」
「ええ、そうね。寝ていた筈の主人が起きていたと知ったら、咲夜がうるさいわ」

 レミリアはくすくすと笑って、図書館の闇に消えていった。
 パチュリーもまた、書物の深い深い闇に落ちていった。

――――
 紅魔館の暗い暗い闇の底。
 地下にある大図書館よりも更に奥深く。僅かばかりの燭台が弱々しい光で照らす中に、その扉はあった。
 黒々とした鉄の扉は幾重もの魔法障壁の術式が記されていた。滅多に発動することのないもの悲しい魔法。
 レミリアの妹である、フランドール・スカーレットはその障壁の内に居た。
 扉の内は四隅の燭台と、天井の灯りで比較的明るく保たれていた。
 その明るさとは対照的に部屋のようすは酷く殺風景だった。
 角に置かれた木製の机と椅子。壁の真ん中にぽつんと置かれた、隙間なく本の並べられた本棚。白のシーツを被ったベッド。あまり物の入りそうにない衣装箪笥。カーペットも豪華な装飾のついた家具もない。
 これが館主の妹の部屋かと人々に問えば、十中八九違うと答えるだろう。
 しかし、フランドールに不満はなかった。何故なら他の部屋を見たことがないからだ。
 フランドールは495年間もの間をこの地下の一室で過ごした。
 外界になんてもちろん出させてもらえない。館の中を歩くことは許されていたが、それも同じく地下にある図書館くらいまでのものだった。
 姉が何故、妹の自分を幽閉するのか。フランドールには理解できなかった。
 外に出させてと姉に懇願したこともあった。かんしゃくを起こして、障壁を突き破ったこともあった。
 しかし、外に出ることは叶わなかった。
 常人ならあまりのことに狂ってしまうだろう。否、既に狂っていたのかもしれない。
 だが、自分自身狂っているとは思っていない。
 私は正常だ。フランドールは自身に言い聞かせるように呟いた。
 思考を止めて、今まで寝転んでいた体を起こす。
 七色の宝石を携えた背中の羽根が、深呼吸するかのように上下した。
 ふと、この空間を閉ざす扉に目をやる。自分が少し触っただけでひびの入る、脆弱な結界。『目』をつかんでしまえば、あとは壊れるのを待つのみの存在。
 出ようと思えば出られてしまうこの状況で、自分が今すぐにでも扉を破壊しないのは、諦めているからなのだろう。
 最初の内は壊しては館の中をぶらついて、外に出ようと躍起になっていた。
 しかし、いずれもそれは阻まれた。館に仕える魔女の降雨の術だとか、人工的な日の光を放つ術だとかで。
 だからか、日にちにかんしゃくは少なくなっていき自分は内に引きこもるようになった。
 そう。望んで閉じ込められていたのだ。
 あのお目出度い色をした巫女とモノクロの魔女がやってきたときだって、ただのきまぐれで結界を破った。外に出られるとは微塵も思っていなかったのだ。
 どうせ、パチュリーやらが雨を降らせて外に出させないのだろう。適当に館内をぶらついて、戻ろうとしていた、その時だった。
 人間と名乗るものたちに出会ったのは。
 二人の人間は博麗霊夢と博麗霊夢と名乗った。もちろん、片方は霧雨魔理沙であったが。
 博麗霊夢と霧雨魔理沙は強かった。いくら死なないスペルカードルールの上であったとしても、二人は強かった。
彼女達と遊ぶ中で、フランドールは自分が変わっていくような錯覚に襲われた。
 事実、彼女はこの日生まれて始めて外界を見た。
 穴の開いた壁から射し込むほのかな日の光。外は雨も上がって曇り空だったが、何より彼女にとっては全てが新鮮だった。書物の中でしか雲も空も草木も湖も見たことがなかった。
 もし狂っていたとしても、あの日の人間達が私を変えてくれたのだ。今の私は正常そのものだ。フランドールはベッドに倒れ込んで目を瞑った。
 すると、ざわざわと肌が逆立つような感触があった。
 ぱッと体を起こすと、フランドールは上へ上へと意識を飛ばし始めた。
 フランドールは索敵能力に秀でていた。
 495年もの長きに渡って一室に閉じ込められていたフランドールが外のことを知りたがるのはもっともで、その為に感覚が研ぎ澄まされて行くことは至極当然のことであった。
 今のフランドールは地下に居ながら、姉の居場所や話している内容を窺い知ることができるのだ。
 場所ほど明確に話している内容はつかめないが、それでも凄い能力であろうとフランドールは自負していた。

「あいつ」

 小さくそう呟いたのは姉であるレミリアのこと。
 声にだし念じることで、動向を知ることができるというわけだ。

「──パチェ……──」

 うっすらと聴こえる言葉から察するに、レミリアはパチュリーと話しているのだろう。
 吐息も抑え、耳に聴こえる声だけに集中する。

「──外界……人間が……紅魔館──」

 よく聞き取れなかったが、もしや人間が紅魔館に来ると言うのだろうか。
 いや、もしかしたら既に来ているのかもしれない。
 フランドールは内心わくわくしていた。博麗霊夢と霧雨魔理沙の二人は自分を変えてくれた。なら、この人間も自分を変えてくれる存在となるかもしれない、と根拠の無い期待を抱いて。
 フランドールは索敵をやめて、ベッドに勢いよく倒れた。
 そして、鼻歌を歌いながら、どんな人間だろうと夢想するのであった。

――――

久しぶりにどばーっと。
こちらの更新はおろそかになっていましたね。何分pixivの方で更新していたもので。
これの次の次の次の話くらいまでかけてますので、定期的に更新していきたいと思います。


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