日本神話とひな族の謎を解く

古事記・ホツマツタエが語る古代史

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もう一つの白兎伝承

表題である「もう一つの白兎伝承」の前に、鳥取県八上地方に伝わる三つの伝承を紹介します。
この地方は、古事記の『因幡の素兎』神話の舞台となったところです。

   『下門尾の「荒神」という地名について、「ここに祀られている荒神宮は北西方向、中山、
そして隠岐の島の方角に面している。下門尾の遠祖は隠岐の焼火権現で、村の最高最大の
祈願は、中山山頂でかがり火をたき焼火権現への祈願をすることである。」と記されてい
ます。門尾集落は隠岐の焼火神社祭神を今も祀っているのです』
(八頭町公民館所蔵の郡家町の旧地名を記した記録書)

   『地元の慈雲山と呼ばれる場所に「七人籠」という言い伝えがある。必ず七人づつ交替でそ
こに籠り、火を焚き、隠岐島の方に向かい病気平癒の祈願をしたという。そして、お陰を
受けた病人は隠岐の神社から不思議な炎が燃えるのが感じられたのだという。
(鳥取市桜谷にある慈雲山の伝承)

   『八頭郡智頭町は林業の盛んなところですが、ここにもなんと焼火信仰が今も残っています。
「人の目に付かぬ奥山に入り、焼火権現のほうに向かって火を焚く」そうです』
(八頭郡智頭町の伝承)

この三つの伝承は、それぞれ、火焚きの神事の伝承です。
そして、その神事は、海の向こうの隠岐の島で火焚き神事を祭典としている焼火神社からの勧請、または、信仰であることを伝えています。因幡国の、これらの伝承は、因幡の素兎の神話を連想させます。

以下、その三つの伝承の内、下門尾の伝承を解き明かしていきます。

「下門尾の遠祖は隠岐の焼火権現である」というこの伝承の焼火権現とは既に述べたように、比奈麻治比売命神社のことです。
なぜなら、伝承と云うからには、少なくても4、5世紀以上前のことが述べられているでしょう。その時代において、「我々の遠祖」という言葉を使っているのです。これも、どんなに少なくみても5世紀は遡るでしょう。先に述べたように、その時代には焼火神社は存在していないのです。やはりこれも火焼権現からの変化で、記録者の混同です。

実際の年代は、福岡県日峯山に降臨したとされるよりも前だったと思われます。
仮にそれが、宇佐氏のいうオオクニヌシに助けられた菟狭族であるのならば、神武天皇の御世の紀元前2世紀より古い話となります。
たとえどんなに古くても、ウサ族は優秀な民族だったので、自分達の祖先の名前を、言い伝えることは不可能ではありません。しかも、それが一族のプライドに繋がっているのならばなおさらです。

千代川の上流には、用瀬町があります。その、用瀬町には、「流し雛」という古代から伝わる行事が今もおこなわれています。
もともと物忌みの行事で、紙などで人形(ひとがた)を作り、これで体をなで、災いをその人形(ひとがた)にうつして川や海に流す行事から生まれた風習で、ここが発祥の地といわれています。

前章で、「スクナヒコナの国造りの手伝いは、困り果てていたオオクニヌシに対しての、因幡に住むウサ族の恩返しである」と書きました。そして、「ウサ族は因幡の有力者である八上族に郡家や河原を分けてもらい本土の拠点とした。オオナムチ族やスクナヒコナ族に親しいウサ族は彼らの豊富な知識で豊かな国を造り、その後、中国山脈を越えて、美作国を開拓、さらに、備前、備中に都を造っていった」と続けました。

河原にいた部族が、新しい土地を求めて上流へ上って行き、用瀬の地を開拓しただろうということは想像にかたくありません。また、流し雛のヒナはスクナヒコナからきているといわれています。ホツマツタエ 天の巻2には、雛祭りは、山陰のスクナヒコナの酒作りから始まったとあり、その説を裏付けています。(山陰とあるは『ミカサフミ』による)

時代を遡れば、今日よりはるかに強い「八上の誇り」を持っていたであろうウサ族は、先祖の慰霊と災いを祓う為に、中途日本海を経て隠岐の島に続いている千代川に、思いを託して雛を流したのでしょう。

この神事のイメージが、因幡記の中の因幡の白兎に、隠岐に流された菟のシーンとして挿入されたのではないかと思われます。

さて、次に、平成18年(2006年)に八頭郡八頭町青龍寺の縁起で明らかにされた、「もう一つの白兎伝承」といわれるものを紹介します。
 
『天照大神が八上行幸の際、行宮にふさわしい地を探していたところ、一匹の白兎が現れた。
白兎は天照大神の御装束を銜(くわ)えて、霊石山頂付近の平地、現在の伊勢ヶ平まで案
内し、白兎はそこで姿を消した。天照大神は、行宮地の近くの御冠石(みこいわ)で国見
をされ、そこに冠を置かれた。
その後、天照大神が氷ノ山(現赤倉山)の氷ノ越えを通って因幡を去られるとき、そこで
樹氷の美しさに感動されてその山を日枝の山(ひえのやま)と命名された。氷ノ山麓の舂
米集落には、その際、天照大神が詠まれた御製が伝わる』
 
さらに、平成23年(2011年)の兎年に城光寺縁起の未公開の部分が公表されました。
そこには、

   『昔、天照(あまてらす)大神(おおみかみ)が霊石山に降臨された際に一羽の白兎が現れて道
案内をし、白兎は月読尊のご神体であり、その後これを道祖白兎大明神と言いならわし、
中山の尾続きの四ケ村の氏神として崇めた』

という話が記されています。

ウィキペディアでは、この伝承について次のように解説しています。

   『これらの話の出所は定かではない。よく知られた神武天皇東征のヤタガラスの案内の話と、
なぜかよく似ている。それから、冠を置くというが天照大神が冠をかぶっているというの
はこれまでどこにも出ていなかった非常に斬新な考えである。冠とは他者に対して位と偉
さを視覚的にあらわすためにかぶるものであり、至上の存在である天照大神には必要のな
い品物であり、原始古代精神的な考えではありえない。冠を置くとはすなわち位を置くこ
とつまり退位を意味する。休憩で人前で冠をとりしかもそれをどこかに置いておくなどと
いうことはありえない。
天照大神が国見をしたというが国見とは重大な行事なので時期も場所も決まっている。単
に高い場所から見下ろすという意味ではないため、この場所で国見をしたというのは明ら
かにおかしなことである。』
(ウィキペディア:因幡の白兎 2014年6月)

 
この伝承についての批評は納得できるものではありません。伝承を否定する根拠がとても曖昧です。投稿者は、天照大神の国見について詳しいが、その出典はどこからなのか明示していません。天照大神が、さも実際に冠をつけていたとのように書いていますがその根拠もまた不明です。

記紀に書かれた因幡の素兎の物語は、誰が見たって比喩です。とすると、この伝承もこの地方で起きた何かしらの事件の比喩であったと考えてもいいのではないでしょうか。すれば、古事記編纂に際して、同じ史料として集められたが、稗田阿礼や太安万侶が採用しなかった、もう一つの『因幡の素兎』という書であったという解釈も成り立つはずです。
次のような解釈が適当と考えます。

実際の川原町にある、御冠石からの展望は、それほど広くはありません。
そこから、南から北に走る千代川の両側に平地が寄り添うように広がっているのが見えます。今は建物が密集していますが、当時は一面、田畑であったでしょう。アマテラスの国見の季節が秋だったのならば、黄金色の稲穂と、それを割って流れる水の光がとても美しく映ったに違いありません。
国譲りの後、アマテラス族は各国を巡幸しました。伝承にある「天照大神の国見」です。
中山山頂から、眼下に広がる豊かな土地を臨み見たアマテラスは、驚き、その地を統治する一族に対し素直に脱冠したのです。

脱冠とは、「退位」という意味ではなく、素直に負けを認める時にも使われる「脱帽」という意味です。
つまり、アマテラスは、この国見で、八上国の素晴らしさに感嘆し、その先進さに敬意を表したのです。

これは、「八上の誇り」です。後世に、残っても良い出来事です。
しかし、当然ながら『皇国史』を制作している稗田阿礼は、そこまでのことを口に出すことはできないし、太安万侶も書けません。
これが『記紀』には書いて無く、当地に伝承としてのみ残った理由です。

また、『塵添?嚢鈔』の『因幡記』にも、次のような物語が書かれています。

   『高草郡の竹林の竹の中に年老いた兎が住んでいた。あるとき洪水が出て、竹林がごっそり
    さらわれて流れた。兎は竹の根に乗ったまま流され、隠岐の島に着いた。水が引いた後、も
    との所に帰ろうとしたが、海を渡るすべがない。だがふと見ると海中にワニがいた。そこで
    一計を案じ・・・』

江戸時代半ばの国学者・本居宣長は、『古事記伝』にこの『因幡記』の伝説を取り上げ、伯耆国の「鷺大明神」を兎神かもしれないと記しています。

宣長は、古事記の註釈にあたって、本文に記述された伝承はすべて真実にあったことと信じていました。そして、古事記の『因幡の素兎』はこの「因幡記」から引用したとし、兎が実際に竹の根に乗って隠岐の島まで流されたと考えていました。

これも古事記の史料として集められていたとすると、二つ目の、『もう一つの因幡の素兎』です。このように、因幡の素菟の伝承は出雲国ではなく因幡国の民が残した話だったのです。



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