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カカが掲げるんなら文句は無い
さてさて。
ヨーロッパ最高のチームを決めるチャンピオンズリーグの決勝が先日行われたわけですが。なんだか「見たい!」という気がしない。もう自分の中ではユナイテッドが負けた時点でCLも終わってしまったし、ミランはともかくリバポーというのが見る気を削ぐ。特に決勝は1回きりのノックアウトということで「ベニテスは引いて戦ってきそうだからつまんないだろうなぁ」というイメージがどこか頭の中にあったわけだ。でもひょんなことから見る機会に恵まれたので見てみることに。結果を先に言うと十分に楽しむことが出来た。「ユナイテッドがここにいればなぁ・・・」と気持ちは拭えなかったけれど、ミランは欧州王者に恥じない試合をしてみせてくれたと思う。
両チームを褒め称えたいのが、ほぼ1トップ気味のシステムを用いながらも、ロングボールには頼らずグラウンドを中心にプレーしてくれたこと。もっと厳密に言うとミランはジラルディーノを使わなかったこと、リバポーはクラウチを使わなかったこと。カウンターを基調としたチームの試合とは概してつまらなくなりがちだけれど、両方ともが守備を厚くした1トップカウンターのシステムを採用してきたので、片方が攻めてもう片方がカウンターを仕掛けるという単調な構図にならず、いい具合にせめぎ合いが生まれて趣深い試合になった。
もう一つ特筆すべきはサイドハーフらしいサイドハーフがペナントしかいなかったこと。リバポーの左に位置したゼンデン、ミランの右のガッちゃん、左のセードルフはみんなサイドハーフに位置するものの、役割はセンターハーフ的で、攻めすぎず守りすぎずのバランス重視型。サイド突破はもっぱら個人技ではなくサイドバックの上がりを待ちながらのコンビネーションで。これはペナントを除いた他の3人は個人技でサイド突破をする力が十分にないから、サイドバックと連携して突破するしか方法がなかったからだ。ということはつまりアンチェロッティとベニテスは2人ともサイドハーフにサイドを突破する個人技をあまり求めていないということ。そんなことよりももっと攻守のバランス取れる戦術眼や守備能力等を重視するということ。ユナイテッドやバルサ的な考え方からすればありえないことだけれど、しかしそういうスタンスをとる監督率いるチームがチャンピオンズの決勝までたどり着けたというのは注目に値する事実だろう。そう言えば準決勝に進出したチェルスキーもそうだったし。ガッチガチの1対1を好むバトリスタ的アタッカーが好きな自分としてはなんとも悲しい事実だけれど、これが現実仕方ない。
それでも自分が十分に楽しめたのはピルロのおかげだし、カカのおかげだし、ペナントのおかげだったりする。
今シーズンのピルロはイマイチだと聞いていたけど、なかなかどうして視野の広さとタッチの優しさとコントロールが凄まじすぎる。まず間違いなく世界一。あんまり言いたくないけどあのキャリックでさえ、まだまだ届かない領域だと痛感させられた。タイプが少し違うので、真正面から比較するのはちょっと違うのだけれど、あんなパスを毎試合楽しみに出来るミラニスタが少しうらやましかった。
カカは自分が一番好きなブラジル人フットボーラーで、世界で一番背番号「10」が似合う選手だと思っている(だからドゥンガの気持ちがよく分かる)。よくブラジルからこんな選手が生まれえたなと思えるほど現代的でボール離れもいいし、かといってめちゃくちゃテクニカルだしスマートだしでまさしくパーフェクト。さすがにユナイテッドをボッコボコにしてくれたときだけは頭にきたけど、自分の好きなチームと無関係なところと戦ってくれるとホントにもうホレボレする選手だ。アタッカー型のサイドハーフがいなくて、トップも裏を取ることだけしか考えてないピッポというミランの攻撃がそれでもスケールダウンしないのは、このカカが全てをカバーしうるから。ファンハールはバルサ監督時代に「ロナウドが戦術だ」と言ったそうだけど、アンチェロッティにとっては「カカが戦術」。この試合でもピッチのどの場所にも顔を出して攻撃に絡んでは、試合を決定づける追加点のアシストもしたカカ。カカが一人で何役もしてくれるからミランは後ろにそんなに攻撃に秀でた選手を置かずとも勝てる。すなわち守備重視でも勝てる。カテナチオにはうってつけ。よくよく考えればミランが弱いわけはなかった。
リバポーで一人目立っていたのはペナント。別にドリブルが特段上手いというわけでも、クロスが群を抜いて正確というわけでもなく、ただ他に1対1でも果敢に勝負を仕掛けるアタッカーがいなかったから自分には目立って見えただけなんだけど、まあそれでもカウンターの時ペナントがボールを持つと何かが起こりそうな予感がした。クラウチがいなくてトップはカイトという中クロス上げてもあんまり効果はないんじゃないの?と思いきや、ちゃんとその対策も考えていてマークが薄くなるファーを狙ったり、エリア外でミドルを狙うジェラードやリーセにパスを捌くという作戦を使ってきたのも好感。しっかり功を奏していたけれど、点に結びつかなかったのはボールの受け手が良くなかったから。
主な受け手はジェラード。この試合の明暗を分けたのはこのジェラードの出来にあったといっていいかもしれない。ミランの中心選手であるカカは己を十分に表現できたのに対し、ジェラードは最後まで中途半端だった。その中途半端加減がモロに出たのが、後半パスミスをカットしてジダと1対1になった場面。シュートコースは安全に行き過ぎるあまり、メチャクチャ安易なコースを選び、ジダにあっさり読まれてしまった。が、自分が一番気に喰わなかったのはシュートを外した後の表情。「うわ、やってしまった・・・」という見るからにまずそうな表情をしていた。この時点で自分は「もうリバポーの負けはほぼ決まってたんだろうな」と感じた。キーパーとの1対1を外したときプロがすべき顔は弱気な顔じゃあない。「クソッタレ!次こそは絶対決めたるからな、このアホンダラが!」と無理をしてでも気を吐いて、闘志を見せつけること。これは敵に対してもファンに対しても。でもジェラードからはこの闘志が感じられなかった。負けを予感してしまっているかのような頼りない貧弱な表情。あれは勝者の顔じゃなかった。キャプテンがそんな顔してちゃぁダメ。
ピッポのハンドの場面。ピッポが勝利のためなら何でもするというある意味残忍な性格の持ち主だ、というのが一層ああいう試合後の反発を招いたのだろうけれど、あれはぶっちゃけ仕方なかったでしょ。そりゃピッポはわざとハンドしてゴール決めてもぬけぬけと喜ぶだろうけれど、あれをわざとというのはいささか無理がある。そのピッポは2点目も決めてもうノリノリ。ホントにこの男はいいトコ持ってくなぁ。ある意味ロナウドンよりタチが悪いかもしれない。ピッポの真の姿はカカのスルーに抜け出し、レイナの脇の下を冷静に突く決定力にあらず。その後敵の蹴ったボールが体に当たっておもいっくそわざとらしく倒れたあの姿だ。ああいう選手がヨーロッパの頂点に立てるのがフットボールの良いところでもあり悪いところでもあるのかもしれない。
とまあそんな具合で。八百長疑惑で有罪確定し勝ち点減点されたチームがヨーロッパの頂点に立った・・・とかそういうことを今さら言うのはやめとこう。カカは頂点に立つにふさわしい男だと思う。それだけで十分ということにしとこうか。そういやワールドカップではイタリアが優勝して、チャンピオンズではミランが優勝。どちらの大会も守備的なチームが有利な大会だった。ヤダなぁ、そんなの。来年のチャンピオンズ、そしてユーロ08は攻撃的なフットボールがいい目見る大会になってほしいなぁ。気張れよ、バトリスタ。
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