ミステリ読書録

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似鳥鶏「彼女の色に届くまで」/池井戸潤「アキラとあきら」

どうもこんばんは。すっきりしない天気が続きますね。とはいえ、梅雨入りしたにしては
雨が降ってない気もしますが・・・空梅雨になると野菜が高くなるので、適度に
降ってもらいたいところです(わがまま^^;)。
今日は父の日でしたね。しかし、結局実父にも義父にもまだ何もしていないという・・・。
まぁ、おいおいやるつもりではいますけどもね^^;


今日も二冊をご紹介〜。二冊目は先程読み終えたばかりのほやほや。


似鳥鶏「彼女の色に届くまで」(角川書店)
評判の良さそうだった似鳥作品。何かのテレビ番組で(王様のブランチだったかな?)
ご本人が登場してインタビューに答えていて、面白そうだなーと楽しみにしていました。
ご本人を初めて観ましたが、なんか、予想通りの人って感じでした。あとがきで
女性っぽい書き方したりと謎が多い方でしたが、やっぱりというか、当然というか、
男性でした(笑)。そして、めっちゃ面白い人でした。あとがきの面白さ通りの人
っていうか。今後、バラエティ等に呼ばれる可能性もあるんじゃないかしら、と
思っちゃいました(苦笑)。
で、肝心の本書ですが。
うん、期待通り、とてもおもしろかったです。ミステリ的にも驚かされましたし、
構成も非情に凝っていて良かった。それに、美術がテーマですし、青春小説要素も
入っているし、恋愛要素もちょっぴり入っているし(欲を言えば、これはもう少し
踏み込んでもらいたかったけど)。
四作の短編+最終章からなる構成。四話目までは一話完結形式ですが、最終章で
すべてが繋がっていることがわかり、長編のようにも読める形になっています。
一話ごとに時系列が進んで、一話目では高校一年生だった主人公が、二話目では
高校三年生、三話目では大学生、四話目では就職して社会人になっています。
ということで、登場人物の成長記としても読めるんですねー。
主人公は画家を目指す画廊の息子・緑川礼。冴えない高校生活を送っていた
ある雨の日、昇降口のところで蹲っている千坂桜と出会う。彼女は傘を持って
いなかった。礼はコンビニまで走り、彼女に買った傘を渡した。その出来事が
あって以来、千坂のことが気になるようになっていた。そんな中、礼はある日
体育教師の俵に理事長室に呼び出された。理事長室に飾ってある有名画家の絵画に、
何者かによって落書きがされてあり、美術部員の礼がその犯人ではないかと容疑を
かけられたのだ。問答無用で犯人にされかけた礼だったが、その窮地に現れたのが、
千坂桜だった。千坂は、有名な絵画をヒントに、真犯人を見事に推理して見せた。
桜は、礼を助けたのは、傘のお礼だと言った。その日をきっかけに、礼は天才的な
絵画の才能を持つ千坂桜との長い付き合いが始まったのだった――。
一話ごとの絵画をヒントにした謎解きもなかなか面白かったのですが、圧巻は
やっぱり、最終章で、それぞれのお話の結末がすべてひっくり返された所でしたね。
偶然が過ぎる気がしなくもなかったけれど、きちんと伏線が張られていて整合性は取れて
いるし、なるほど、そんなからくりが隠されていたのかー!と膝をたたきたくなりました。
作中に出て来た有名絵画で知っていたのは、マグリットの『光りの帝国』くらい
でしたが。『ガブリエル・デストレとその妹』も、絵自体は多分どこかで観た記憶が
ありましたけれど(まぁ、印象的な絵なんで・・・)。
でも、知らない絵でも、作中には白黒の、ご丁寧に巻末にはカラーで、実物の写真が
載っているので、桜によるトリックの真相の説明も理解しやすかったです。
トリックとしては、礼と桜が大学生の時に起きた密室火災事件の真相が面白かった
かな。面白いっていうのは不謹慎かもしれませんが。動機は最悪でしたしね。
礼と桜の恋愛がどうなるのかも最後まではらはらさせられました。桜の気持ちが最後まで
わからないのでやきもきしましたが、最後に彼女の想いがわかって良かったです。
あんな風に思っていたとは。いじらしすぎて萌え。
ただ、それがわかった以上、余計に、なんとも煮え切らない終わり方のような気も
しなくはなかったですが・・・。まぁ、この先は結局収まるところに収まりそうな
気がしますね。お互いに絶対離れられない関係なのは間違いないでしょうから。
あとがきと作中の注釈は相変わらず面白過ぎ(笑)。この二つがないと、やっぱり
似鳥作品はちょっと物足りない感じがしちゃいますね。
あと、個人的に筋肉バカの風戸君のキャラが大好きでした。高校卒業した三話目以降は
出て来なくなっちゃうのかな、と心配してたんですが、大学編どころか社会人になっても
ちゃんと登場してくれて、嬉しかったです。三人の付き合いは一生続きそうですね。
作品はこれで完結しているのでもう続編はないでしょうが、主要の三人のキャラが
とっても良かったので、またどこかで彼らに会えたらいいなーと思いました。



池井戸潤「アキラとあきら」(徳間文庫)
池井戸さんの文庫新刊。書きおろしなのかな?と思いましたが、雑誌に連載されて
いたのは2006年から2009年にかけてで、連載終了してからも書籍化されず、
池井戸ファンからは幻の長編と言われていた作品なのだとか。なんと、半沢シリーズ
よりも前に書かれていた作品だそうで。とはいえ、内容的には最近書かれたと言われても
何の違和感もないくらい、池井戸色全開。文庫ですが、700ページ超えですから、
かなりボリュームありました。瑛と彬、ふたりのあきらの物語。ただ、幼少期の生い立ちは
対照的で、父親の営む零細工場が倒産した影響で貧乏暮らしを余技なくされた山崎瑛
に対して、大企業の御曹司として裕福な暮らしをしてきた階堂彬。紆余曲折を経て、
二人は同じ産業中央銀行に就職するが――。
対照的な境遇に生れたので、貧乏暮らしを余技なくされた山崎瑛の方がメインに
話が進んで行くのかな?と思ったのですが、どちらかというと、階堂彬サイドの話の
方がメインだったように思います。もちろん、後半以降、ふたりのあきらがそれぞれに
活躍しては行くのですが。ただ、幼少期は苦労した瑛の出番が多かったですね。父親の
工場が銀行に見捨てられて不渡りを出す辺りのエピソードは、半沢直樹の生い立ちと
被るものがありますね。その後最高学府を経て銀行に入りますし。ただ、半沢と違う
ところは、銀行に就職した理由が、銀行に対する復讐ではないというところです。
なぜなら、生活が苦しく大学進学を諦めていた瑛に進学のきっかけを与えてくれたのが、
父親が再就職した会社を担当していた銀行員だったからです。もちろん、父の興した
会社を倒産においやった銀行には思う所もあった筈ですが、父の再就職先の会社の
危機を救ったのもまた、銀行員でした。そのことから、出来る限り困窮した企業を
救いたいと思った瑛は、銀行員を目指すことになるのです。半沢のような反骨精神は
ないけど、とても芯の通った優しい男で好感が持てました。
裕福な家庭に育った彬の方は、また違った理由で銀行員になりました。幼い頃から
何不自由なく育った御曹司ということで、もっと鼻持ちならない嫌な奴なのかと思った
のですが、これが全然そうじゃない。銀行に就職したのも、親が敷いたレールの上を
通るのが嫌で、純粋に銀行という企業の興味を持ったから。こちらはこちらで、一本
芯が通っていて、とても頭の切れる、好感の持てる青年でした。銀行員としては、
どちらも超一流。だから、同じ銀行に就職したと知った時は、銀行内の二人のライバル
関係が描かれるのかと思っていたのですが・・・全然違ってました^^;
大人になってから、苦労するのは断然彬の方。一族経営を続けて来た階堂グループの
三つの会社が、ある事業の失敗のせいで窮地に立たされる。亡くなった父の跡を
継いで親会社の社長になった弟の龍馬だったが、経験の浅い彼ではどうすることも
出来ず、心も身体も病んでしまった弟の代わりに、結局最終的には彬が銀行を辞めて
社長業を継ぐことに。そこから、彬はどうやってグループ企業の危機を乗り越え、
会社を立て直して行くのか、が読みどころの一つ。そして、そこにどうやって瑛が
関わって行くのか。途中さっぱり瑛の存在が消えていたので、どうしているのかな、と
思っていたのですが、ああいう登場の仕方とはね。新人研修の時のあの出来事から、
二人はてっきり行内でも有名なライバル関係とかになっているのかな、と思ってたんですが、
配属先が違うこともあって、全然接点がなかったみたいなのが意外でした。お互いに
お互いが優秀であることは認め合っていたみたいですが。
最後、瑛が書いた、すべてを解決に導く稟議書の内容には感心させられました。
やっぱり、瑛は一流のバンカーだな、と。同僚のカンナと、もしかしていい雰囲気に
なるのかな?と思ったら(カンナが彼をすごく尊敬してる感じだったので)、
最後の最後、思わぬ伏兵が。っていうか、瑛の幼少期に出て来たこの人物のこと、実はずっと
気になってはいたのですよね。もう出て来ないのかな?とちょっと残念に思っていたので、
この結末にはおお!と思いましたね。ただ、もうちょっと作中にそれに至るエピソードを
入れて欲しかったですけど・・・^^;
瑛にロザリオをくれた人物のその後も嬉しかったな。もちろん、ガシャポンとの再会も
嬉しかったですけどね。あんな地方の町から、優秀な企業人が二人も排出されるとは。
最初の方に出て来た脇役キャラのその後もしっかりフォローされているところが、
池井戸作品の魅力の一つでもありますね。
しかし、彬の叔父二人には、腹しか立ちませんでした。ああいう人間が、企業のトップに
立つと悲劇しか生まれないですよね。振り回される社員たちが気の毒でした。もちろん、
彬の父や弟の龍馬も被害者だと思いますけれど。
いろんな人物の思惑が交錯して、いくつものドラマが描かれています。企業小説としても、
人間ドラマを描いた作品としても、読ませる場面がたくさんありました。
分厚いですが、引き込まれてどんどんページが進みました。やっぱり、池井戸作品は
面白いですね。今回も最後はすっきり、気持ちよく読み終えられました。
ふたりのあきら、銀行員としても人間としても、どちらも甲乙つけがたい魅力がありました。
彬の方が、途中で銀行を辞めてしまったのはとても残念。バンカーとして、彼が出来ることは
もっともとあった筈ですから。まぁ、社長としてこれからはもっと実力を発揮して行くで
しょうけどね。
さすが、池井戸作品にハズレなし。これもすでにWOWOWでドラマ化が決定してるとか
(主演は向井理と斎藤工だそう。イケメン祭りじゃないの!)。民放でやってよね〜って感じ。
観られなくて残念だなぁ。
そういえば、この作品のサイン会を、隣の市の某書店でやったんですよ。
まさか、池井戸さんのような人気作家があんな身近なところに来てくれるとは!
土曜日で仕事があったので敢え無く断念(行けたとしても、整理券ゲットできたかは謎ですが)。
行けたら絶対買ったのにな。ちぇ。

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