ドクターヘリパイロット(元)奮闘記

老いぼれドクターヘリパイロット(元)の繰り言

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 山岳地帯を低空で飛んで、遭難救助飛行を行ったり、鉄塔建設や山小屋への物資輸送などで飛行するヘリコプターは常に低い雲や、稜線に湧いて出るガスなど上手く付き合って飛ぶ技術が必要となります。

 有視界飛行に置いては雲の中を飛ぶ事は禁止されていますので、ガスや雲の中は飛ばなければ良いと言ってしまえばそれまでで、理論上今回のような事故は起こる事はありえません。

 さらに言えば通常の空域では雲から最低150メートルの距離を取ることとなっていますので、今回の事故はありえないということになります。

 ところがヘリコプターの場合、管制圏と管制区、つまり航空法上、計器飛行で雲の中を飛んでいる他の航空機が存在しない空域では、直ちに障害物を避ける速度で、引き続き地上を視認できれば、雲からの距離制限なく近づけて、雲に入りさえしなければ良いことになっています。

 今回の事故機もこの条項の適用を受けて、雲にごく近づいて飛んでいたと思われますが、残念ながらこのような飛び方をするには相当な経験と技量がなければ、突然雲の中へ入ってしまって、いきなりミルクの中へ放り込まれたような状態となってしまいます。

 方向も姿勢も瞬間的にわからなくなりますから、暴れまわって斜面に激突するか、それとも何とか無事にミルクの中から出る事が出来るかは、度胸と運と技量と言うことになります。

 このような状況のフライトの経験が深いと、常にここで入ってしまったらどちらへ逃げるかなどあらかじめ腹案を持ちながら飛びますので、無事に出てくる可能性が高くはなりますが、今入りそうなガスの向こうの先はどうなっているかはわからないので、必ずしも予想が当たるとは限りません。

 私の経験で完全に読みを誤って、あらかじめ決めた方向へ雲の中を上昇して、脱出した経験が、スマトラのジャングルと琵琶湖北部の山中の2回あります。

 奈良県吉野で木材搬出で飛んでいた、他社のあるパイロットはレーダー誘導で上昇し、八尾空港へ着陸した猛者がいたようです。

 誤って雲やガスの中へ入ってしまった場合、生きるか死ぬかは安定した上昇姿勢を確立するまでの5分程度以内に山に激突するかどうかで決まってしまいますので、どちらへどのように逃げるか確実な腹案を持って、ひたすら安定させて上昇するかしかありません。

 このような回避方法は通常のへりパイロットが出来るような方法ではなく、またこれを行うような事がない程度に雲から距離を取って飛ぶ事が絶対に必要で、入ったら死ぬと覚悟する必要があります。

 

閉じる コメント(39)

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計器の実地試験で試験管から合格にしますけれど雲の中は絶対に飛ばないようにと言われたパイロットが何人もいるようです。> 道半ばPさん

2018/8/15(水) 午後 2:43 [ bel**14b*989 ] 返信する

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そのようなことが あったのですか。私が計器飛行証明 試験で立ち会った時の試験官はライセンス取得後も訓練で雲中飛行をやらせなさいと言っていました、それも IFR バージョンでない機体に対して!いずれにしても自分の命は自分で守っていくことですね!> bel**14b*989さん 削除

2018/8/15(水) 午後 3:26 [ 道半ばP ] 返信する

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> 道半ばPさん
CABのヘリの試験官はぼぼヘリの事業運航には一部を除いて素人同然なのが多いようですね。

2018/8/15(水) 午後 3:32 [ bel**14b*989 ] 返信する

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AI緒元セット(姿勢コントロール)について
速度、高度:AIのミニチュアエアクラフトの基準位置からのバーの太さでどのくらい上下するかでセットします。それはバーの太さ1/4とか1/2の世界で1/1は大きすぎです。だだヘリの場合固定翼と異なり燃料消費により同じ速度でもピッチ角は大きく変わります。地上で合わせても飛行中同じではありません。その時々のピッチ角を把握するか、安定した状態で基準位置を校正しながら飛行します。あとはパワーを適切な値に保てば、速度、高度を大きく狂わすことはありません。そして何より大切なのはAIをメインとした速いクロスチェックの習慣を身につけておくことです。自衛隊での訓練ではそのAIを隠しての計器飛行も訓練します。これはAIがアウトに対処するためとバーティゴでAIが信じられなくなったときのためでもあります。経験した民間IFR証明訓練ではこの技量に達しません。相当の飛行時間があるベテランといわれる民間IFRライセンサーが雲中でバンク角すらピタッと一定に保てないのをみて、だめだこりゃと思いました。基本のAIのクロスチェックすら出来ていないためです。

2018/8/15(水) 午後 10:47 [ ham**yuri ] 返信する

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飛行時間数百時間のパイロットが農薬散布のPターンを叩き込まれたら7計器飛行など一生できるようにはならないでしょう。これが現実です。> ham**yuriさん

2018/8/15(水) 午後 10:52 [ bel**14b*989 ] 返信する

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管理人様、いつもは傍観者ですがちょっと意見させていただきます
当日、私はその近所とんでましたが、たしかに良い天気ではありませんでした
福島方面で仕事を終えて山梨へ戻る途中122.6をきいておりました

なんか計器飛行がどうのと言ってる方が多いようですが、そんなことより見えなくなる時に黙ってホバリング出来るの?って話だとおもうのですが 削除

2018/8/16(木) 午前 1:08 [ katsu5125 ] 返信する

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そのような情報を一番待っていました。天気の悪い時に山をどう飛ぶか、基本的なことをパイロットはわかっていたのかです。防災のパイロットだから相当な技量を持っていたはずなのに、なおかつ墜落したと言うかいかぶりが、論点を誤る元かもしれませんね。> katsu5125さん

2018/8/16(木) 午前 1:24 [ bel**14b*989 ] 返信する

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申し訳ないのですが、5000時間程度の人は私的にはベテランではないですね 削除

2018/8/16(木) 午前 1:38 [ katsu5125 ] 返信する

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5000時間操縦教官をしていれば、訓練生にとっては神様ですが、山に入ったらタダの素人でしょう。やってきた仕事によるでしょう。> katsu5125さん

2018/8/16(木) 午前 1:42 [ bel**14b*989 ] 返信する

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ちなみに私は操縦教官の経験は殆どゼロで1万時間以上山の中を飛んできました。> bel**14b*989さん

2018/8/16(木) 午前 1:43 [ bel**14b*989 ] 返信する

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死ななかった人は正しいと思います
正しい飛び方を実践していた人が生き残るのだと思います 削除

2018/8/16(木) 午前 2:03 [ katsu5125 ] 返信する

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私は善良で正直者だったので神様が運を与えてくれたのでしょうね(爆笑)> katsu5125さん

2018/8/16(木) 午前 2:05 [ bel**14b*989 ] 返信する

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ヘリの事故が起きた時、瞬間的に事故原因がわかるパイロットは同じような事故を起こさない可能性が高いでしょう。馬鹿評論家や事故調のような人間がパイロットなら事故の予測が出来なくて、何回でも墜落することでしょう。> katsu5125さん

2018/8/16(木) 午前 2:12 [ bel**14b*989 ] 返信する

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私のような若輩者にお付き合いいただきありがとうございます
明日からの記事も楽しみにしております

では、ご自愛を 削除

2018/8/16(木) 午前 2:12 [ katsu5125 ] 返信する

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もう1万時間超えのPは出てこないんでしょうねぇ・・

2018/8/16(木) 午前 5:51 [ punpun0461 ] 返信する

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炎え上がっていますので 一言 速度処理 高度処理を自由自在にできる乗り物がヘリコプターですから物標に対し 精度の高いホバリング技術で視界不良状態から脱出試みる手段としてはありだと思います。遠い昔 松食い虫の散布で雲に巻かれ 松のこずえをターゲットにし霧が晴れるまでホバリングし生き延びたという猛者の話しを聞いたことがあります。悪天回避 いろいろあると思います。その一つとして不意にIMC状態に陥ったとき回避する手段もあることあげました。この仕事で生き延びる手段は数多く持っていた方がいいと思います。これから各省庁で対策とやら指導とか出てきますが その対策のピントが合うこと願っています。 削除

2018/8/16(木) 午前 8:31 [ 道半ばP ] 返信する

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飛行場上空で高度処理することが一番安全ですね。けど、常に飛行場上空に行けるとは限りません。 初めての場外へりポートに移動中、30分後に雲中飛行になり山岳地帯を7500FtでHSIを使って他力航法で南下中、燃料も乏しくダイバートも断われて結局、LOW FUEL 点灯し10分以内に雲の下に出られなければ、OUTでした。

約2時間はミルクの中で他力航法しながら高い山は通過していたので雲の切れ目を見つけた瞬時に地表が見えたので即、ダイブしながら約500FTで雲の下に出られましたが、視界も悪くて田んぼしか見えずにセットしたH/Dを信じて数分後にドンピシャに到着。

あの時、雲の隙間を逃したらアウトでした。不本意ながら窮地に追い込まれた状況とアクチャルの雲中から運よく出られました。

当時は、夜間でもアクチャルの訓練をして計器飛行特有の修正操作を体得するまで教官に毎回怒鳴られ小突かれる程ひどい訓練生だったので精神的にタフになっていましたので雲中でも心理的負担はなかったです。むしろ鬼教官が隣にいる方が怖かった…笑> 道半ばPさん

2018/8/16(木) 午後 3:55 [ クロネコ ] 返信する

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緒元セット解説ありがとう。 小型機のAIのバーの太さが1/4とか小刻みの線がないので仮想線での修正は難しいかと…。元々VFR用だからAIはオマケの計器でBFI訓練などできるか?と疑ってしまいます。

確かに燃料消費すればCGが変わるので同じ速度でもピッチ角は、理論上は変わりますが大きく変化するとしても2度ぐらい?

安定した飛行状態で基準位置を中央にセットするのが一番楽ですかね。 AIを主とした速いクロスC’Kの習慣ですが、眼精疲労しません? 私も1時間程アクチャルで100Kt姿勢を保ったまま補正せずに必要な時に必要な計器と適度にらめっこしていましたがピッチ変化はあまり見られなかったと思いますが鈍感だったのかな〜。

「ベテランのIFR有資格者が雲中でバンク角すらピタッと一定に保てないのをみて、だめだこりゃと思いました。」なるほどね、数千時間乗っていてもそんなレベルでは計器飛行証明などあっても使いものになりませんね。今まで時間稼ぎにいい加減に乗っていたのでしょう。

基本のAIのクロスC'Kすら出来ていないならIMCなら危なくて飛ばせられないですね。> ham**yu

2018/8/16(木) 午後 4:15 [ クロネコ ] 返信する

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周辺に航法援助施設のある空港ないときは大変ですね。VMCを維持できないときは ある意味で非常事態と思いますので近くのレーダー(自衛隊も含めて)でピックアップを求め飛行場に誘導してもらうのはいかがでしょうか?特に自衛隊はPARがありますから心理的にも楽だ思います。それにしてもミルク状態で2時間の飛行よくこたえましたね、鬼教官との訓練成果があったということでしょうか!小生も土砂降りのミルクそれも夜間(XMTからMI現在ありません)で約2時間 飛行(IFR)で着陸したときには鬼教官に感謝の気持ちが湧いてきました(笑)> クロネコさん 削除

2018/8/16(木) 午後 5:54 [ 道半ばP ] 返信する

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標準旋回(一例に過ぎませんが)での旋回半径は速度(kt)の10倍の長さ(m)(正確には10.28倍)になる。お守り程度の知識ですが、高度一定でそれだけの無障害物エリアがあれば生還への一歩が踏み出せます。ただどうしても地表地物を見出そうとすることに集中し、ロスポジ、バ−ティゴに入るでしょう。私もアクチャルでいつでも冷静に自力計器飛行で理想的な操作ができるかわかりません。仮に冷静に出来たとしても墜落しないわけではありません。同様な事故が繰り返され、自身も同様な経験をし、どうすればと考え最低でも進入針路と反方位に安定した(高度速度をむやみに変えず)旋回をすることが生還への細糸になると考えることにしました。しかし今まで生還できたのは9割運だと思っています。何の達成感もなく、誇れるものではありません。ただの失敗です。

2018/8/16(木) 午後 10:04 [ ham**yuri ] 返信する

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