猫の生き方真似してみたい(=^・^=)自分癒しの旅。。。

中々更新できずにいますm(__)mそのうちにと思いつつ今日まで〜また復活したいです。

☆少女18〜最終回

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イメージ 1


旅行へ出発する日、鈴村は少女と両親を成田まで送った。
海外へ出発する人達でごった返した空港内の喧騒の中少女達親子は鈴村の見送りを
受けながら出国審査ブースへ入ってゆく別れ際に「楽しんで来るんだよ。プチとちゃんと
お留守番してるからね。未成子がいないと寂しいけど・・我慢して待ってるからね
元気で帰っておいで」少女は少し寂しげな顔をしたが「うん!行きたかったところばかり
だし、楽しみ!お土産たくさん買ってくるね。プチにも!向こうから電話する・・」
満面の笑顔で鈴村に軽く抱きついた少女に「行ってらっしゃい」と言いながら手をふり
少女が出国ブースへ入ってゆくのを見送ると駐車場へ戻る出口に向かっていたが
フト振り返ると出国審査ブースに入る手前で手荷物検査を受けている少女が見えた。
気のせいだろうか・・少女から先ほどまでの生気が消え無表情に見える。
遠くから見ているからかなと気を取り直し鈴村は空港を後にした。

3人はエールフランスエアラインで日本の空を飛び立った。
初めての海外旅行に少し緊張気味の由紀子と並んでビジネスクラス席についた少女は
由紀子の気持ちをほぐすように冗談を言いながら父の方を見て「パパがママの手を握って
あげてたらママも落ち着くよ」と自分の席と変わった。
父は嬉しそうに「パリに着いたらお二人さんの買い物に振り回されそうだなぁ」と
後ろの席に移った少女と由紀子をかわるがわる見ては笑っていた。
少女も「そうよ!ママ!パパを破産させちゃおうね!」由紀子も「本当!しっかり過去の
償いをして貰いましょう」そんな他愛もない話をしているうちに飛行機は水平飛行に
移りキャビンアテンダントが飲み物の注文をとりにそれぞれの席を回り始めた。
ラテン系の美しいキャビンアテンダントは先程より自分が担当する仲の良さそうな
親子の下へ笑顔でドリンクオーダーに来た。
英語がまるで苦手な由紀子に代わり父が飲み物を頼んでいる。
サーブし終わったキャビンアテンダントがその娘の前に笑顔で立った時・・・
その顔には先ほどまでの若い娘らしい笑顔はなく無表情に低い声で
コーヒーを頼む娘を見て先ほどまでの娘と同じ人間かしらと首を傾げながらコーヒーを置いた。

少女はあの雨の日・・多くを学んでいた。大人への道として自分を少しだけ偽る。
心に溜まったヘドロのような父への憎しみを吐き出すように泣き続けながら・・
「これが最後・・もう泣かない・・わかるはずもない・・戻るはずもない時間はいらない
何も望まない・・自分の幸せは自分で作る・・もう誰にも教えない・・私の心・・
パパ、由紀子さん・・・私は墓場まで本当の心を持ってゆくわ・・誰も憎んでなんか
いない・・誰も愛さないように・・私は誰も憎んだりした事ない・・これからも
誰も傷つけたりはしない・・誰にも傷つけられたりしない・・優しく・・穏やかに・・
少しづつ私の世界を創る・・・プチと一緒に・・限りなく優しく静かに生きてゆく・・」
少女は既に少女ではなくなっていた・・大人の女として自分を上手に隠す事を覚えていた。
そして自分を生んだ母への感情は依然としてなにもなかった・・好奇心さえも・・
生きる事の難しさの中で・・周りを不幸にしない為の生き方を周りを幸せにする方法を
少しづつ学んで行こうと・・・あの日に心に決めていた・・
少女の人生は今もこれからも続くのだから・・・FIN


長い間‘少女’を読んで下さって有り難う御座いましたm(__)m
稚拙な文で読みづらい所も多々あった事と思います(^^ゞ今日で終了しましたが
此の先少女の人生が続いてゆくのであれば極端なハッピーエンドには出来ず
このような終焉となりました事をご理解下さいm(__)m
これまで読んでくださった方たちへ心よりお礼を申し上げます<(_ _*)> アリガトォデス♪
本当に、本当に有り難う御座いましたm(__)m

少女40 心の嵐


激しい雨の中・・父は墓石の前に座り込み目を閉じてじっとしている。
雨は父が着ているカシミアのカーディガンに沁み込みずっしりと重く見えた。
少女は父に並び座り込むと手に持っていたオレンジを名前が彫られた墓石の前に
置いた。
何を祈ったらよいのか・・どうすればよいのかもわからずただ・・父の姿を
見詰めていた。
体の芯まで沁みこんでゆく雨の冷たさ・・父はまったく気配をけしたように
雨に濡れるのもいとわず母に何か話しかけている・・・・・
父の声は激しい雨音に消され何を言っているのか理解できなかった・・
少女は小さく「寒い・・」と・・抑揚のない声でただ「寒い・・」
父はゆっくりと少女を振り返ると「お母さんに何か言う事があるかい」
小さく首を横に振る少女を見て「そうだな・・お前には他人より遠い人だろうなぁ」
寂しそうな顔をしながら「それでも、お前を生んでくれた人なんだよ。お前が
覚えていなくても・・10ヶ月もの間お前をお腹に抱えて・・その頃は幸せだったなぁ
仕事から帰ると‘腰が痛いのよぉ〜貴方、今日はお腹蹴飛ばされたのよ。きっと
この子、男の子ねぇ’そんな事を言いながらも何処かで楽しみにしていたんだろうな
アイツは男の子が欲しかったようだ。私はずっとアイツに似た女の子を期待して
女の子の名前ばかりを考えてたよ。結果的にアイツから一字とった名前にしたけどな
・・それだけに・・アイツが出て行ってからはお前の名前を呼ぶのが嫌だったよ
・・あの頃は若すぎた・・私もアイツも・・お前の事よりも自分の感情の方を
優先していた。お前を可哀想と思う以上に自分に腹を立て、自分が可哀想で・・
あんなに可愛がっていたお前を・・・可愛くてしょうがなかったお前を側に置いて
置けなかった・・・離れた時間が私のお前への愛情の形を変えていた・・
引き取った時のお前は・・やせ細ってオドオドしていて・・そんなお前を見ていると
自分が責められているようで・・見ていたくなかった・・そのうちお前は段々
アイツに似てきた・・やっぱり親子なんだな。怖いほどに似てきたよ・・
ちょっとした仕草、声の色・・時々錯覚してしまうほどにね。私は幻想を見るように
なっていたお前がアイツに・・玲奈・・そうお前の母親の名前はレイナ・・
玲奈だと思うようになっていた・・・・違うのにな・・由紀子に言われたよ。
‘多感な年頃に貴方のあの子に対する態度は気持ちよいものじゃないわよ’とね・・
その通りだ。私のエゴなんだ・・わかっていた・・2歳のお前を手放すべきじゃなかった
もし・・もし私の手元に置いていたなら・・もっとお前を娘として愛せたのに・・
離れていた時間が私とお前をその時間以上に引き離したんだ・・」と、少女を見ると
真っ青な顔をして小刻みに震えながら激しく降る雨を受け止めるように空を仰ぎ見ている。
30分近くも激しい雨の中、じっと父の話を聞いていた少女は寒さで凍えていた。
「すぐ車に戻ろう!また私は自分の事に気をとられて・・」雨なのか涙なのか
父の顔を雫が伝う・・・少女は黙ったまま父に肩を抱かれながら車へと戻った。

車のヒーターを最強にして父はグローブボックスから白いタオルを出すと少女の
髪を拭い始めた。少女はされるがままにじっと雨に煙る墓石の方を眺めている・・
「こんなに震えて・・すまなかった・・何処か店を探して洋服を買おう」
父はずぶ濡れのまま後ろの座席に置いてあった自分のトレンチコートを取ると
少女の肩からかけ車を発進させた。
雨脚が激しくワイパーも役に立たず道路が煙って見える。黙りこくった少女を
心配そうに時々見ながら父は「ほら、さっき曲がってきた所にブティックがあったなぁ
あそこで何か洋服を買って着替えさせて貰おう・・」少女は全く反応を見せない。
相変わらず小刻みに震え続けているだけで・・目は熱を持ったように潤んでいた。
ブティックの前に車を止めた父は一人店に入って行くと、すぐに傘を持って戻ってきた。
助手席側にまわり少女の体を守るようにブティックへ入ってゆく。
ブティックの女主人らしい女性が「まぁまぁずぶ濡れですわねぇ・・どうぞこちらで
暖まって下さい」と店の奥にあるストーブの前に椅子を置き少女を座らせ
奥にいた若い女に暖かいミルクを持ってこさせた。
意志を持たない人形のように少女はされるがままになっている。
「この子に暖かい洋服を選んでくれないだろうか」女主人は幾つかのワンピースや
ジャケットを持ってくると少女の前にあるオープンハンガーに掛け大きなバスタオルで
少女の顔や髪をせっせと拭きながら「お客さんも着替えた方がいいですよ」と、先ほどの
若い女に「叔父さんのセーターとズボンを持ってきてあげて」と父の体型をみながら
優しく微笑みながら「家の人と体型がそんなに変わらないから乾燥機で乾かす間
それを着てて下さい」一見きつそうに見えた女主人だが面倒見の良い女性だった。
少女がミルクを飲み終わると女主人は少女を抱きかかえるように試着室へ
連れて行き着替えさせている。依然として少女はじっとされるがままになっていた。
「あら、体が熱いわねぇ。熱が出たのかしら」そう言いながら少女のオデコに自分の
オデコを当てて少女の熱を計っていたが驚いたように「どうしたの・・気分が悪いの、まぁ」
少女の目から止め処なく涙が溢れている。女主人は困ったように「大丈夫よ。
泣かなくてもいいのよ。ちゃんとお薬飲んであったかにしていれば気分も良くなるわ」
着替え終わった少女が女主人に肩を抱かれながら出てくる姿を見ていた父は
少女が流し続ける涙を見て唖然とした。
この子は・・あの日自分の元に戻って以来、滅多な事では泣かなかった・・憎らしい程に
感情を表に出さない娘だった・・今・・自分が見ている少女は本当に小さくて頼りなげで・・
思わず立ち上がり「玲!・・どうした、気持ち悪いのか!」父の口から・・引き取られて
初めて少女の名前が口にされた。声を立てずに涙を流し続けていた少女の・・
無感情だった表情が大きく変わる・・・プツンと何かが弾けた様に顔を歪めて
その場に座り込むと嗚咽をあげて泣きじゃくり始めた。
子供のように小さな、小さな子供のように声をあげて泣いている。関を切ったように・・
まるで何年分もの涙を流しつくすかのように・・体全体を震わせながら泣き続けた・・
父は少女の体を壊れ物を抱くようにそっと抱いて背中をさすり続けた・・
父の顔にも涙が・・小さく「すまなかった・・すまなかった・・」と呟きながら
女主人は何かを察したのかそっと奥の部屋へ入っていた。
どれくらいの時間そうしていただろう・・少女の体から震えが消え穏やかな顔を
父に向けると「ママが心配してるよ・・早く帰らなくちゃあ・・パパ・・」
「そうだな・・そうだよな・・帰ろう。もう帰ろうな」少女はコクンと頷き
立ち上がると奥の入り口に立っている女主人に微笑んだ。
女主人は「さあ、お客さんの洋服も乾いたし着替えてお家に帰られた方が宜しいんじゃ
ないですか。帰ったらお嬢さんに風邪薬を飲ませて暖かいお部屋で眠らせなきゃね」

女主人に礼を言うと少し小降りになった外を見ながら「本当にお世話をかけました。
お陰で助かりました。さあ行こう」と支払いを済ませた父が少女の肩を抱きドアを
開けると少女は振り返り女主人に「ありがとうございます」と小さく頭を下げた。
女主人は暖かい笑顔を少女に向け優しく頷いた。
<なにがあったのかしら あの親子に でも もうだいじょうぶよね>
そう呟きながらドアを閉め店の中へ入って行った。

帰りの車の中で少女は熱っぽい潤んだ目で関を切ったように他愛もない事を
喋り続けていた。「パパ・・ママにもう少し優しくしてあげないと・・ママが
一番パパの事大切に思ってる・・ママがいなくなったらパパ・・本当は
悲しいでしょう」父は苦笑いをしながら「そうだなぁ、ママも我慢強いからなぁ。
年を取ったら仕返しされるかもな」と笑った。
先ほどの頼りなげな少女が嘘のように消え今は年相応に生意気な娘の口調で話し続けている。
バックからタバコを出すと「吸ってもいい?」と父にマルボーロの箱を指し示す。
「ああいいよ。パパにも1本くれるかな。さっきの雨でパパのタバコは全滅だよ」
少女は1本取り出すと父の口に咥えさせ下からそっと火をつけた。
自分も大きく煙を吸い込みながら「パパ、今夜はママと二人で夕食とったら?」
「お前、熱があるだろう。帰ったらすぐに医者を呼ぶから今夜は家に泊まるといい
鈴村君には家から電話すればいいだろう」少女は小さく首を振ると「私の面倒は
彼が見てくれるから大丈夫よ。それにさっき貰った熱冷ましが効いたみたいで
寒気も取れたし・・」父は少し考え込むように前を見ていたが「玲、これからは
チョクチョク遊びに来てくれ。私達は長い事回り道をしてきたが少しでも親子らしく
・・私の可愛い娘との時間を取り戻したい・・勝ってだと思うだろうが・・私も
もうそんなに若いわけではないしな・・皆で一緒に食事に行ったり、たまには親子3人で
旅行したりしよう」今までにない穏やかな口調で話す父を見ながら少女は
「そうよね。パパとママと私と3人で旅行なんて楽しいよね」・・少し平坦な言い方だった。
父はそれに気付かず「そうだな!鈴村君に了解を得たら今度3人でヨーロッパにでも行くか」
まるで全ての罪が許されたように父は嬉しそうに「よし!帰ったら由紀子と早速相談
しよう」と満面の笑みを浮かべていた。

お墓参り以来少女は信じられないほど明るくなった。鈴村にじゃれついたり、冗談を言うようにも
なっていた。ただ鈴村がたまに深夜目を覚ますと少女がプチを膝に抱き
リビングで本を読んでいる。「眠れないのかい?」と聞くと少女はニッコリ
笑いながら「読みかけたままだと先が気になっちゃって・・さっき目が覚めたから・・」
決して眠れないとは言わない。ただ以前のように無表情になったり暗い目をする事は
なくなった。食べる事に無関心だった昔と違って食欲もあるようだ。
そんな少女の日々を見ながら深く眠れるようになるのも時間の問題だと、やっと
安心する事が出来た。
実家の両親とも頻繁に会うようになっている。
ある夜、鈴村が仕事を終えて帰ってくると少女はスキップしながら出迎えてくれ
来週から1週間仕事がオフになるので両親とヨーロッパ旅行へ行っても良いかと聞かれ
驚きながらも嬉しく
「いい事だよ。思いっきり楽しんでおいで。二人を独占して好きなだけ甘えてくると
いい。ご両親も君と一緒だと楽しいんだよ。明日にでも旅行用の洋服を買いに行こう」
少女の嬉しそうな顔をみながら心から良かったと・・少女が普通の娘ように
なれた事を喜んだ。

少女39 母のお墓


実家に着くと弟達が久々に姉の顔を見て照れながらも大喜びしながら出迎えてくれた。
由紀子も二人の為にと、自慢の和食を美しい器に盛りセンス良く並べられている。
父はリビングに入ってきた二人を眩しそうに見ると落ち着いた声で「良く来たね」と
機嫌よく出迎えた。
全てが順調に和気藹々と進んでいる。なんの憂いもないごく普通の家庭風景・・
鈴村は少女が弟達と楽しそうにじゃれあっているのを見て自分が少し
神経質になっていたのだろうかと思いなおし始めていた。

夕食も終わり弟達もお手伝いさんに連れられ2階に引き上げると大人4人の為に
濃い目のコーヒーが用意された。
アルコールを好まない父は食後には必ず濃い目のコーヒーを飲む。
由紀子が優しい笑顔で「どうなの。結婚生活は。貴女のお料理も少しは上達したかしら?」
少女は少し困ったように「お料理は思ったほど簡単じゃないのね」そんな少女を
愛しげに見ながら「お義母さん。彼女意外と家庭的で教わったお料理を自分なりに
一生懸命作ってくれるんですよ。・・ただ先週は1週間続けて麻婆豆腐を食べさせられ
ましたけどね。凝り性なのかな」少女は顔を赤らめながら「美味しいって言われたから・・」
由紀子も笑い声を上げながら「まぁ、1週間!それは美味しい麻婆豆腐が作れるように
なったわね」ひとしきり少女の失敗談に花が咲いた後、少女が「私は明日お休みだけど
貴方は明日お仕事だし・・そろそろ帰りましょうか」鈴村も「そうだね。随分
ゆっくりしてしまったし、お暇する時間だね。お義父さんもお疲れになったでしょう」
父は鈴村に軽く笑顔を向けるとおもむろに「実は、この娘の母親の墓を探していたんだが
昨日所在がわかってね・・」そう言うと少女の方を見ながら「お前も実母の墓参りを
した方が良いだろう。明日仕事が入ってないんだったら私も時間が取れるから二人で
墓参りに行こう」鈴村が慌てたように「もし来週まで待って貰えれば僕もご一緒したい
んですが・・如何でしょう?」父は困ったように「いやぁ鈴村君・・申し訳ないんだが
私の方も来週から仕事で10日位ポートランドへ行かなくちゃならないんでね、
出来ればこういう事は早目に済ませた方が良いだろう。この娘の治療にも少しは役立つ
んじゃないかな?」確かに少女の精神状態は今小康状態を保っているが何時かは
向き合わなくてはならない問題だった。そして母親の墓参りをする事が少女にとって
一つの突破口になるのかもしれないと鈴村自身が痛切に感じていた。
出来る事なら生きている母親と会えれば良かったのだがそれも今となっては無理な事だ。
せめて墓参りする事で少女の心に滞っている何かが洗い流されるものなら・・・・
鈴村は少女の方を優しく見詰めながら「どうする・・明日お義父さんと一緒に行ってくるかい」
父の方を見ようともせずに「ええ・・その方がいいんだったら・・」先ほどの笑顔は
片鱗も残っていなかった。少女は「ママも一緒に行く事できないよねぇ」と
蒼ざめた顔を由紀子に向けた。由紀子は夫の厳しい目に射すくめられたように
「私が立ち入るべき問題ではないし・・二人で行ってくれば・・」父は嬉しそうに
「よし。明朝お前のマンションまで迎えに行こう。車で2時間もかからないところだから
夕方までには帰ってこれるだろう。10時には行けるから用意をして待っていなさい」
この話はこれまでと言うように父は残ったコーヒーを飲み干し「鈴村君、今日は有り難う
また何時でも遊びに来てくれ」
玄関まで見送りに来た由紀子に少女は「ママ・・明日帰りに寄るね・・」そして
小さな声で「ゴメンナサイ」と呟いた。由紀子も少女の髪を軽く撫でると「いいのよ。
気をつけてお帰りなさいね」由紀子と少女は他人ゆえにわだかまりが消えるのも
早かった。

帰りの車の中で少女は黙りこくったまま一点を見詰めていた。
鈴村が話しかけても返事はなく蒼ざめた顔で何かブツブツと呟いている。
自律神経がバランスを失いつつある時の症状に鈴村は過去、少女が数回自傷行為を
繰り返していた事を思い出した。
一度は感情的に手首を切ったと治療中に聞いたが少女の手首には一回ではなく
幾度も繰り返し傷つけられた跡が残っていた。何度聞いても本人は認めないが
間違いなく自傷行為が繰り返されている。傷から推測すると鈴村と結婚するほんの少し前まで
繰り返されている。周りが気が付かなかったのは冬場で少女が巧みにそれを
隠していたからだろう。あのヨーコさえも気が付いていない。
しかし・・このまま少女を隔離して見守った所で何の解決にもならない。
鈴村は明日の墓参りが少女の心にどう作用するか不安でもあったが
他に方法を思いつかない以上、明日の父親との墓参りに賭けてみようと思った。
仮に悪い結果がでたとしても自分が一生涯かけても少女を守り通そうと・・・・

翌朝迎えに来た父の車に乗り込んだ少女は昨日に比べると幾分落ち着いていた。
父の問いかけにも普段通りに答え車窓から外を見ながら「晴れてて良かったわね」
春が近い空の色は暖かそうなブルー。東京の空とは思えないほどに優しい色をしていた。
「二人でこうして車に乗るのは20年振り位だなぁ・・」呟きに少女は運転席の父を
見た。今までになく穏やかな顔をしている父。「そうなの?」
「ああ・・お前は小さかったから覚えていないだろうなぁ・・小さな頃から夜の
闇を怖がってなかなか寝付かなくてね・・私の車に乗せて街中をドライブするんだ・・
そうすると・・小さな体を丸めて助手席ですやすや眠っていたよ・・そうだなぁ・・
1週間に3日から4日はドライブだったな・・アイツは夜になるとパーティーだ
ダンスだと言っては出かけてたから・・お前の事はお手伝いさんにまかせっきりでね
時々お手伝いさんが用事で出かけたりすると夕方からずっと家の近所にある電信柱の
下で私の帰りを待ってたよ・・私の車を見つけるとトコトコ駆け寄ってきて・・
パパ、パパって言って走って来るんだよなぁ・・可愛いやら切ないやらでなぁ
どうしてお前の母親はこんなに小さなお前をほって出かけたり出来るんだと・・・
本当に腹が立ったよ・・今更言っても遅いけどな・・惚れた弱みで・・年の差もあったし
私はアイツの言いなりだったんだなぁ・・お前の幸せよりアイツに逃げられる事の方が
怖くて好きにさせていたよ」父の話を少女はボンヤリと聞いていた。
ワタシノキオクニハ ナイコトダモノ ワタシニハカンケイナイ・・・・
高速道路を降りると車は都内とは違ったのどかな空気に満たされた町を走り続けた。

父は遠くに思いを馳せるように「お前は可愛かったよ。小さくて天真爛漫で・・
私達の問題を何処かで感じていたのか決して泣いたりしなかった
ただ・・アイツにあまり懐いていなかったなぁ・・むしろお手伝いさんが子供好きだったから
彼女の方に懐いてしまい何時でも彼女の後を着いてまわってたよ。私も稀にできた休みの
日にはお前を抱いて近所のデパートに行き屋上でコインを入れて乗れる馬に乗せると
キャッキャッいいながら・・私の方ばかり見てたなぁ・・まるで置いてかないでと言うように・・
子供なりに不安だったんだろう・・そんなお前が不憫だったよ・・」空の色が怪しくなっていた
先ほどまでの晴天が嘘のように黒い雲が空を覆い始めている・・・
「ほら、あそこに見えるだろう。墓地と言っても個人墓地らしく街中にあると言ってたが
本当にこんな所にあるんだなぁ」その墓は国道沿いにあった。周りには畑や民家があり
敷地約10坪ほどのところに囲いがしてあり大きな御影石が見える。
側にお寺があるわけでもなく・・おそらく法律改正前からあるのだろう。
車をお墓の入り口近辺に止めると父は後ろの席から袋を取り「由紀子が用意してくれた。
アイツが好きだったオレンジとお前がお腹をすかせたら食べさせてくれと・・これを」
父に渡された紙袋を開けると、そこには綺麗な色のオレンジとタッパーに入った
小さなお結びが5個入っていた。少女はそれを持ち車の外へ出た。
二人でお墓の門を入った途端だった。凄い勢いで雨が降り始めた。
まるで南国のスコールのように叩きつける大粒の雨・・・少女は濡れるのも構わず
空を見上げ・・・ナイテイルノ ウレシイノ カナシイノ?・・・・
目に雨が入る・・父も濡れながらお墓の前へ歩いてゆく。
袋から出したオレンジを手に少女も後に続く・・・雨は勢いを増し少し先も見えなくなる
少女と父を雨が叩きつける・・雨で煙るお墓の中で父の姿が霞んでいた・・

少女38 結婚



父は低い声で話し続けた「本当にアイツが出て行くとは思わなかった・・お前もいたし・・
いくら子供が嫌いとは・・いや・・嫌いならまだいい・・そこに感情があるよ・・
アイツは感心がなかったんだ自分の子供にも・・私にも・・一言もお前を連れて
出て行くとは言わなかったよ・・私は止めなかった。きっと一人では食べても行けない
だろうと・・贅沢にドップリつかったアイツが貧乏生活に耐えられるはずがないと・・
だが、アイツは・・アイツはなぁ・・私の元を去ってすぐに
若くて金も無い下らんギター弾きと同棲していた・・許せなかった・・
あんな男なんかの為に私の元を去ったなど・・・」父の目はもはや少女を見ては
いなかった。遠い昔自分を捨てた女への未練と恨み・・自分の自尊心を粉々に
してしまった女がすでに手の届かない所へ行ってしまった事への悔しさを
吐き出していた。暫くガックリ肩を落としていた父が少女の方を見ると急に老け込んだ顔で
「お前は・・お前はあの女の娘だ・・お前にもアイツと同じ血が流れている・・
そして・・私の血も・・お前を本当に可愛いと思う時もある・・でもなぁ・・
年々アイツに似てくるお前を見ていると・・お前が悪いわけでもないのに・・
わかっているのに・・・すまなかった・・可哀想な事をしたと思ってる・・
アイツは・・・もうこの世にいないんだなぁ・・そうなんだよなぁ・・・
アイツはもういないんだよな・・」そう言うと父は強い力で少女の体を抱きしめた。
少女の体に悪寒が走る・・形容しがたい感情に襲われ父の腕を跳ね除けた。
父の体から力が抜けていった・・・
その目には薄っすらと涙さえ浮かんでいる。
少女は黙って父を見ていた。表情一つ変えずじっと見詰めていた。
顔を上げた父は「幸せになれ・・お前の母親のようにはなるなよ・・お前が
鈴村君と結婚して普通の生活を送れるならそれが一番だ・・」そう言うと
もう話は終ったというように少女に部屋を出てゆくよう頷いた。

リビングに戻ってきた少女を見て由紀子が「貴女大丈夫なの・・」
少女はニッコリ笑うと「ええ。パパはお疲れのようだけど・・私は大丈夫」
由紀子は穏やかに「パパから何を聞いたのか知らないけど・・亡くなった人は
何も弁解できないのよ。鵜呑みにしないでね。貴女のお母様にも言い分は
あったはず・・今何も言えないお母様を恨んだりしないでね」
ウラム? シラナイヒトノコトヲ ウランダリデキナイヨ・・・
少女は由紀子のそばに行くと「ママ・・私に母親は2人もいらないよ・・
ママ一人でいい・・愛してくれなくても・・私のママは一人でいいよ。
会った記憶もない人より・・私にご飯作ってくれた人がママでいいよ・・」
決して由紀子の機嫌をとろうと思って口にした言葉ではなかった。
母というイメージが少女には今ひとつわからなかっただけで・・
記憶にない女性の事を幾ら母親だった人と言われてもピンとこないだけだった。
少なくとも由紀子とは生活した事もある・・・少女にとっては由紀子は今も
「ママ」だった。
少女の言葉に由紀子は「パパが・・パパがいけないのよ・・パパがあんなだから」と
小さく呟いた。気の強い由紀子だから決して涙こそ流さないが少女への屈折が
なくなった事が感じられた。

結婚式は形式どおりに進み先ほどとは打って変わって落ち着いた父が少女の腕をとり
教会のバージンロードを歩いた。その腕はほんの少し震えていたが・・
全ての儀式も終わり華やかな披露宴では父の仕事関係者と鈴村の親族、友人達、
ヨーコ、少女の仕事仲間や高橋社長も出席し賑やかに行われた。
一部の週刊誌から取材申し込みがあったが父の意向でその筋のものは全て
シャットアウトされた。鈴村は少女を気遣い常に側にいてくれる。
優しい夫になるだろう・・穏やかな結婚生活が約束されていた。
少女は自分の結婚式や披露宴を他人事のように・・まるでドラマを見ているような
感覚で眺めていた。
全てが終わり二人は皆に祝福されながらラスベガスへと旅立っていった。

新しい生活が始まった。鈴村の用意した新しいマンションにはプチの為に
広々としたバルコニーも着いている。プチは鈴村を気に入ったようだ。
住まいと姓意外特に少女の生活に変化はなかった。
時々会う近所の人に「鈴村さんの奥さん」と呼ばれると自分が結婚した事を
多少自覚するが仕事先では今まで通り「未成子」なので自分が二人いるように
錯覚する事さえある。鈴村は理想的な夫だった。決して激しい感情を持って
結婚したわけではないが兄といるような安心感を与えてくれる。
少女の仕事にも理解を示し決して口出しはしない。家に帰れば程よい距離を
保っている。ただ・・あれ以来・・結婚式の前の、父親との話を決して鈴村に
語ろうとはしなかった。まるで一人で抱え込むようにその件に関しては口を
閉ざしていた。
ある晩、食事を終えプチを膝に抱きながら鈴村がさりげなく「今度のお休みにでも
二人で未成子ちゃんの実家に行こうか」と聞くと鈴村の顔をジッと見詰め
「貴方がそうしたいなら・・いいわよ・・でも、私を父と
二人きりにはしないで・・ずっと側にいて・・」怯えたように鈴村に訴える
不振を覚えながらも父親を怖がっているのだろうか・・少女の性格からして
父親に無関心ではあっても怖がる事は考えられない・・
それでも鈴村は優しく「勿論だよ。君は僕の大切な奥様だからね。いつも側いにいるよ」
少女は安心したように鈴村の膝で眠るプチの体を優しく撫でていた。
そんな時の少女は信じられないほど優しい眼差しをしている。
‘この子は未だに猫以外には心を与えようとしないな・・’一抹の寂しさを
覚えながらも気長に少女を見守って行こうと思う鈴村。
鈴村の気持ちを知ってか知らずか少女はいつまでもプチに小さな声で
何事か呟きながら撫でていた・・・・

実家へ行く日、少女は朝から少し蒼ざめた顔をしていた。
由紀子との仲も今では電話で料理の作り方などを教わったり上手くいっているようだが・・
少女の緊張は父親が原因のようだった。少女は自分の本音を決して父親に吐き出しては
いない。ラスベガスで少しでも話を聞きだそうとしたが父親の話になると口を閉ざす。
何が少女をこんなに頑なにするのか・・他の事では随分と情緒も安定してきているのに。
やはり一緒に生活した年数が少ない為、一般的な父娘とは感覚が違ってきているのだろうか・・

少女37・父の話



お前の母親は純粋な日本人じゃなかった。父親がアメリカの軍人で母親は台湾に住む
日本人だった。二人は結婚していたからお前の母親は私生児ってわけではないが
子供はお前の母親一人だけだったから異常な位に甘やかされて育っていた。
それに父親が悪い意味でのアメリカ的教育を施してもいた。
そのせいか自分の欲しいものはどんな事をしても手に入れたがり結婚後もその性癖は
治らなかったよ・・当時まだ日本人は滅多に着ていないような毛皮に身を包み
派手なドレスを着て米軍のパーティーには良く行っていたなぁ・・・
お前が生まれても子守にお前をまかせっきりで派手な外車を乗りまわし出歩いてたよ。
私はアイツが欲しがるものは何でも与えた・・・その為に必死で働いてた・・
当然家を空けることも多かったしアイツは若かったから退屈だったんだろう・・
その内に外泊さえするようになってたよ。私が仕事から帰ると屋敷のそばにある
電柱の下でまだ2歳だったお前がションボリ立っててなぁ・・・・
私の車を見つけると駆けてくるんだよ・・まだ今ほど車の多い時代じゃなかったが
たった2歳の子供をほおって遊びに行ってしまえる神経にはホトホト呆れていた・・
それでも私はアイツとは別れたくなかった・・全てを許して受け入れていた・・
というより私はアイツに惚れきっていたんだろうなぁ・・
それなのに・・クリスマスイブの朝私が‘今日は早く帰ってくるから親子3人で
何処かへでかけような’と言ったらアイツ・・・‘あら、私今夜は横浜でクリスマス
パーティーに呼ばれてるのよ。前から約束してたから断れないわ’
アイツは・・家族よりも自分の楽しみを優先していた・・
流石に私が声を荒げるとアイツも‘わかったわ。早目に切り上げて帰ってくる。
それから3人で出かけましょう。パーティーは6時から始まるし、1時間位
いて帰ってくるわ’そう言ったんだよ・・・
それなのに8時になっても9時になっても・・そして12時を回っても帰って来なかった。
私はお前を助手席に乗せて横浜のパーティー会場まで走らせたよ。
今思えばかなり興奮していたのか当時気に入っていた腕時計を何処かに落とした事さえ
気が付かなかった。
パーティー会場になっていたクラブに付いてすぐにマネージャーに尋ねたが
言いにくそうに言われたよ。とっくにお帰りになられましたよ。とね・・・
含みのある言い方だった。おそらく誰か男と一緒だったんだろう。
その時の惨めさ・・マネージャーの同情するような目を見た時・・
私はいったい何をしているんだと・・お前を腕に抱いて惨めで惨めで
堪らなかったよ。
アイツが帰って来たら・・今度こそキッパリと言おうと・・・
色んな事を考えながら家へ戻った・・・」そこで父は苦しげに息を継ぎ
少女の顔を見詰めた・・その先に少女の母親をさがしているように・・・
父の話が続く・・・少女は母と自分を重ねながら聞いていた・・
「翌日の明け方アイツは帰って来た。‘アァ疲れちゃったぁ。パーティのハシゴって
疲れちゃうわよねぇ’まったく悪気のない顔をして・・・・
私は前日のままの格好だったよ。ネクタイも外さずコートも脱がずに
ずっとアイツを待って居間のソファに座っていた。それなのにアイツは充分に睡眠が
足りた顔つきで頬も薔薇色をしていたよ・・・
もう限界だった・・何時の間に手にしていたのか私は革手袋でアイツの頬を
思いっきり張った。アイツは何があったのかわからないと言う顔をして私をじっと
見ていた・・・その表情がまるで少女のようだったよ・・・
‘もういい!お前が今後もこうして出歩く事をやめないつもりなら今すぐ出て行け!’
アイツはポカーンとした顔をしていたが‘わかったわ。貴方がそうしたいんだったら
離婚もしかたないものねぇ’・・・・
信じられなかった・・・アイツはいとも簡単に私との別れ口にしたんだよ・・

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