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医療事故の実名公表にいち早く踏み切ったミネソタ子ども病院。外来の受付には、医療安全への患者参加を求める4か国語のパンフレットが置かれている

(読売新聞)

 「病院名が公表されれば、病院の責任意識は向上する。病院同士が互いにミスから学ぶこともできる」

 ミネソタ州保健局のダイアン・レイドリッチが説明を始めた。病院名を明記した医療事故の公表と情報の共有――。2003年7月に制定された「ミネソタ医療事故報告制度」は、全米でも先進的なものだ。

 同州医療事故報告法によると、病院は州保健局に対し、医療事故の存在を認識してから15営業日以内に報告し、60営業日以内に原因と対策を報告しなければならない。報告が求められるのは、患者や手術部位の取り違え、手術中や手術直後の死亡、医療機器の欠陥・故障など、6分野27の基準に基づく事故だ。

 報告内容は、州当局の専門チームが分析し、改善策を病院に助言。病院は、助言から30営業日以内に、実施期限を定めた具体的な改善策を報告する。報告は年ごとにまとめられ、公表される。



 事故の報告を怠っても、州当局は苦情、告発に基づいて立ち入り調査し、病院の認証取り消しなどを働きかけることができる。だが、これまでこうした強制調査が行われたことはないという。

 なぜ、自らを不利な状況に置きかねない実名の報告制度を病院側が受け入れ、順調に機能しているのか。

 きっかけを作ったのはミネソタ子ども病院(321床)だった。

 「1999年、少年のがんを見落として不幸な結果を招いたのを機に、病院長が再発防止のために実名公表を決断したのです。自分が少年の親の立場ならという問いかけに、抵抗していた関係者も納得した」と、同病院安全管理責任者ジュリー・モラスが振り返る。

 ミネソタは、医療関係者間の風通しがよい。大病院や保険会社、病院協会、州政府などが垣根を越えて話し合う複数のネットワークがある。こうしたつながりを通じて実名公表の理念は広がり、法による義務化の時点で、重要性の共通認識はすでにでき上がっていた。

 法の制定と実施を後押ししたミネソタ病院協会のジュリー・アポルドは、「報告内容を裁判に使わず、純粋に再発防止を目的としたことも、報告の徹底を担保しているはず」と自信をのぞかせた。

 初の報告書は、昨年1月に完成。患者数、医師数などのデータ、原因や背景、有効な対策などを事故の種類別に列挙し、ネット上でも公開された。今年2月には第2弾も完成した。



 日本では、医療事故は第三者機関の日本医療機能評価機構が2004年から収集している。対象となるのは、全国の主な約270病院で、報告件数は年間約1100件。病院名は非公開なうえ、認識から2週間以内の“第一報”の報告のため詳細が分かりにくく、「分析が表面的。統計に過ぎない」との声も強い。

 「州内のネットワークによるつながりがなければ、報告制度はできなかった。でも、そうしたつながりは一日では築けません」。レイドリッチやアポルドの言葉が、日本が抱える課題の一つを図らずも示していた。(敬称略、おわり)

(この連載は、社会保障部・鈴木敦秋が担当しました)

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