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池平徹兵 TeppeiIkehila
朝の始まりの予感。透明な色彩と青い光。翼が海底と呼応する。

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シマウマの再会

きっと警察から電話がかかってくる。
「go君のお父さんですか?」
落とし主が5才だと思い込んでいる警察は必ず言う。
「違います。僕がgoです。」音楽家が言う。

僕は音楽家の誕生日、このセリフをあやつることに全てをかけた。
音楽家ではなく警察が知らず知らずのうちに比喩を言うことに。
もはや歳をとったのか歳が減ったのかわけが分からない状態になる。

その後はおかしなことになるだろうけど音楽家が完璧にやり遂げる自信だけはあった。
僕は音楽家をとても信頼している。



花火大会の音が聞こえる。
僕はビルの壁を登っている。
たぶん梯子の八分目あたり、僕は下を見てしまう。
沢山人がいる。
僕が見つかっているか見つかっていないかは把握しきれない。
一気に残りを登る。
二つ目のプレゼントをセッティングする。
「僕たちは屋上のさらに屋上に上る必要がある。」
その比喩を伝えるため危険な域まで登らせたかった。



僕たちによく植物をくれる女性がいる。
「リリースパーティの時にこちらを音楽家に こちらを僕にプレゼントしてください。」
僕は二つの植木鉢をわたす。
もちろん三つ目のプレゼントが埋まっている。
とにかく土を掘らせたかった。
僕は僕で大きな松ぼっくりをフェイントとしてわたす。
「CDリリースおめでとう。」


準備は整った。
後はスイッチを押すだけ。


誕生日当日。警察署の前、心臓の音が脳を揺らす。
僕は眼鏡をかけて優しい色の服を着て、一目で誰もがいい人だと思い込む姿でさわやかに警察に声をかける。
「子どもがこれを落としたみたいですね。」
星のカバンをわたしながら僕は嘘をつく。

幼稚園の名札の着いたカバンには、シマウマとお財布の中にドローイングのお札47万円と小学二年生の友達に書いてもらった絵手紙。

「かわいい落とし物ですね。5才くらいかな。本当に親切にどうもありがとう。」
警察が言う。
「きっととても素直な子ですね。早くシマウマと再会させてあげてください。」
僕は言う。
微笑ましいあたたかい空気が警察署に流れる。
僕は一礼して外に出る。

やり遂げた。

後は僕の知らないとこで音楽家の冒険が突如始まる。
夏が来た。
僕の日本もやっと始まった。
僕はスキップしたいくらい嬉しくなった。


僕たちは屋上のさらに屋上に上る必要がある。
それは同時に海底の土の下の根の下まで掘り進むことでもある。
シマウマがはるか上空から海底の深くまでいっきに貫く。


お誕生日おめでとう。

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