基本的に、プーチン大統領は現代のナポレオンであり、ウクライナ危機はプーチン外交にとってアウステルリッツ(注:1805年、ナポレオンがオーストリア・ロシア軍を破った場所)だ。
プーチン大統領はクリミアを保持し、ウクライナ東部地域に住むロシア系少数派がキエフに対抗する力を大いに強化するだろう。
一方のオバマ大統領の評価は、聞くまでもない。
今朝は「Obama + wimp(オバマ 弱腰)」の組み合わせのグーグル検索が100万回以上に達した。
オバマ大統領や彼の側近がウェールズでどんな成果を出したところで、大統領のイメージ向上にはつながりそうにない。
ただ、オバマ大統領への批判の声が彼の個人的な能力の無さに向いているのは、そもそも間違っている。
問題はオバマ大統領個人にあるのではない。米国にある。
米国にはかつて、世界規模の外交政策を策定するだけの強大な影響力があったが、過去60年間、とくに直近の30年間でその影響力をほとんど失ってしまった。
影響力が薄れていく過程では「グローバリズム」という理想主義的な意義付けがなされたが、結局のところ理想主義はお題目で終わった。
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米国と表面的には親しい関係にある同盟国も多かれ少なかれ、米国の目指すところを軽視しているふしがある。
以前に指摘した通り、表面的には敬意を表している韓国のような同盟国も、オバマ大統領の制裁には支持を表明していない。
一方、日本は良くいっても煮え切らない態度だが、わからないでもない。
(ウクライナの)危機が勃発する前、日本はロシアとの間で70年間にわたり抱えてきた領土問題の解決に一歩、近づいたからだ。
中国の動きも重要だ。
中国は堂々と、危機を好機ととらえており、日本や韓国メーカー製の必需品をひそかにロシアへ輸出している可能性がある。
欧州でも、オバマ政権のために重い腰を上げようという同盟国はほとんどない。
アイルランドのブルートン元首相が指摘するように、イタリアやスペイン、キプロス、ギリシャ、さらにブルガリアまでもがどちらかというとロシアに同情的だ。
ポーランドとリトアニア、エストニア、ラトビアだけが、プーチン政権の脅威を深刻に感じている。
その他のほとんどの欧州各国は中間的な立場で、オバマ政権のイニシアチブに全面的な支持を控える理由をそれぞれ抱えている。
米外交の影響力がなぜ以前はあのように強大で、現在はほとんど失われてしまったのか。
この大転換には特に3つの理由が挙げられる。
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1、生産技術の空洞化
米国は、かつては生産技術で世界をけん引していた。
工業分野の救世主のような存在となり、数えきれないほど多くの国々が米国の効率的な工業ノウハウを導入して生産性を上げたいと考えて、米国に近づいて来ていた。
現在、状況は一変している。
問題は製造業が盛んでなくなれば、生産技術は十分でなくなるということだ。
現在、最も発達した生産技術の導入を望む国は他の国へ行かねばならない。その筆頭が日本とドイツだ。
2、「困り者」の債務大国
第2次世界大戦後の時代の当初、間違いなく世界最大の資本供給国だった米国には、あらゆる国々が海外からの資金を求めてやってきた。
本当に多くの国がそうだった。
残念ながら、米国が資本の輸出側から輸入側に変わってしまってから、もうずいぶん経つ。
もう何十年も、米国は外貨導入を常に求める、現代の外交の「困り者」になっている。
米国の対外純債務は実質的に、オスマントルコ後期以降のどんな大国よりも大きく膨らんでいる。
3、失われた市場特権
米国が市場の番人だったころ、米国の同盟国もその他の諸外国も競ってこうした市場へアクセスする特権を求めたものだったが、今は違う。
米国は、かつては貿易関係で大いに発揮していた強大な影響力もすべて手放している。
By Eamonn Fingleton, Contributor