君に見せたいものがある

8月19日(土)11:30・日本時間19時30分にロカ岬に到着! 新たなチャレンジを目指して準備中!

スイス編

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スイスに戻りたい スイス編19

手の痛みを我慢しながらアルプスを越えた長男。
痛みが強くなっていくというので病院へ行って検査をしてもらった。

レントゲンを撮影して、いろんなチェックをして、結局は手首の捻挫だけで骨には異常がないと言われた。
まずは安心した。

スイスの病院へ行って驚いたことがある。
それはレントゲン撮影した写真やカルテ、ドクターのコメントをCDに入れて渡してくれたことだった。
「旅の途中でもう一度病院へ行ったり、日本へ帰ってから治療を受けることがあったらこの情報を担当のドクターへ渡しなさい」

日本ではこんなサービスを受けたことはない。
プロフェッショナルな印象を与えるドクター。
すべての情報を患者に開示してくれる。

それに対して出された薬はたった1錠の痛み止めの薬。
「痛みがひかないようであれば薬を買いなさい」
そう言って薬の処方箋を渡してくれる。

たった1錠?
驚いた顔をしていると「あまり薬は飲まないほうがいい」とドクター。
薬漬けにする医者が多い日本から来たので、ちょっととまどってしまう。

スイスはいろんな発見のある国だった。
スイスでの旅を振り返って妻と子どもと話す。
イメージしていたものを遥かに越えていたスイス。
苦しい道が多かったのに、なぜかもう一度走りたくなるようなスイス。

「もう一度スイスにこないとね」
妻が思い出したように言う。

「チーズフォンデュを食べていないじゃない!」
そうだ!
それを忘れていた。

いつの日か、もう一度スイスに戻る理由が見つかった。












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スイスの職人技 スイス編18

サンゴッタルド峠を越えて、一息ついた。
子どもたちも長い髪を切りたいと言い出した。
考えてみれば5月16日に出発してから一度も髪を切っていない。

暑くなってきたのでかなり煩わしくなってきた。
しかし、言葉が通じないのに散髪ができるだろうか。

いろいろと髪を切る店を探したが、美容室のようなところが多く、男性もそこで髪を切っている。
美容室へ行ったことがない私たちはちょっとためらう。
美容室ではなく「とこや」じゃないとだめだ。

町でいろいろと尋ねてやっと「とこや」を見つけた。
イメージどおりの「バーバー」だった。

しかし、言葉には問題がある。
イタリア語しか話せないようだった。

しかたなく店になった週刊誌のページを開き、そこに載っている写真を指差して髪型を決める。
すごく小さな写真・・・。
「了解!了解!」という雰囲気でマスターはうなずく。
大丈夫だろうか・・・。

しかし、このマスター。
見るからに手先が器用そうな職人技で髪を切っていく。
見ていて惚れ惚れした。

ステップを踏むように軽やかな足元。
ダンスを踊るように、流れるように髪を切っていく。
器用なスイス人の職人技だった。

しかし、一つだけ問題が。
それは、襟足を整えるときにまったく何もつけないで剃刀を使う。
日本ならばクリームぐらい使ってくれるが。
まるで首筋の皮を削がれているような激痛が走る。

三人とも涙目になりながら、終わったときには首筋を手でさわって確認してしまった。
血が流れていないのが不思議なほどの痛さだった。

激痛だが、出血していない。
その紙一重の剃刀さばきが、スイスの職人技だったのかもしれない。












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アルプスの峠越え(後編) スイス編17

子どもたちは苦しみながら峠を越えようとしていた。
対照的に、私は今まで一番体調がよく、まったく疲れを感じなかった。
子どもたちに調子を尋ねながら、二人の子どもの間を往復してもまったく苦にならなかった。
そのままもっともっと高く上りつづけても大丈夫な気分になっていた。

子どもたちに伴走しながら「大丈夫か?」と何回も尋ねた。
子どもたちはただうなずくだけ。

「何時になっても構わないから自分のペースで走っていいよ」
歩くような速度でゆっくりゆっくり走りつづける子どもたち。

「自転車を押しながら歩いて登ってもいいよ」
しかし、サドルにまたがって走り出す二人。

長男が地面に座り込んで寝ている姿を今回の旅で初めて見た。
次男がハンドルに頭をつけてハーハー深呼吸している姿も初めて見た。
絶好調の私にはその辛さは伝わってこなかったので、叱咤激励するようなことはまったくしなかった。

サンゴッタルド峠に到着したときには午後9時になっていた。
のぼってきた道を振り返って大きく深呼吸。
特に感動を語り合うわけでもない。

それぞれ無言で振り返って夕日を眺める。
ただそれだけ。

今回の旅で4つのものを子どもと妻に見せたいと思っていた。
そのうちの一つが終わったのでとりあえずはほっとした。

残りの三つについて話しながら、暗闇の道を下って麓へついた頃には真夜中になっていた。












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アルプスの峠越え(前編) スイス編16

アルプスの麓は美しかった。
キャンプ場の水も冷たく、湖の水も豊かだった。

フィンランドから始まって9カ国を走ってきたが、アルプスの峠を越えるための練習のつもりで体調を整えてきた。
小高い山を越えるときには「アルプスのつもりでじっくりのぼってみよう」と声をかけた。
まずは体重を落とさないと。
子どもたちも私も自然と減量されてきていた。
出発前に86キロあった私も76キロになっていた。

妻はキャンピングカーでサポートしてくれたが、なかなか大きな車を駐車できる場所もなく、多少苦労したようだった。

「悪魔の橋」と呼ばれるポイントまでは交通量も多く、イタリアへ抜ける道なので、バーケーションのために車が猛スピードで走ってくる。
高速で走る自動車さえなければ、そんなに緊張感のある道ではないと思う。

すぐ近くにあるほかの峠を越えることも検討したが、サンゴッタルド峠は歴史的にも有名な場所なので、この峠を越えてイタリアへ入ることを考えていた。

すべてが順調に準備できていると出発した時には思った。
簡単に越えられるような快調なスピードだったが、途中でいくつかアクシデントがあった。
長男の優治はバランスを崩して転倒し、手首を痛めてしまった。
走っているときに痛みが消えず、片手でハンドルを握って、痛めた手はハンドルにそっと添えるだけで走らなければならなかった。
かなり辛かったと思う。

次男の航治は呼吸が苦しくなり、中盤からたった100メートルを走るごとに止まって休憩するようになってしまった。

手を痛めた長男と呼吸が苦しい次男を見て、何度も迷った。
やめさせるべきか何度も悩んだ。

日本を発つ前に高校の恩師から「自分の都合で子どもたちに危険なことをさせてはいけないよ」と言われた言葉を思い出した。
全員の口数が少なくなりながらも、高度は徐々に高くなっていった。

峠を越えるよりも、判断することが一番のチャレンジだと思った。












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汚水で社長のランチ スイス編15

キャンピングカーで使っている浄水器「ケリーナ」は非常に役立っている。
キャンピングカーのタンクに貯めた水を驚くほどきれいに浄化してくれる。
そのケリーナを製造している会社がスイスにある。
ルート上にあったので、メーカーのカタディン社を訪問することにした。

出迎えてくれたのはカジュアルな感じの女性。
受け付けの人かと思ったが、なんと社長自身だった。

到着するなり「おなかは減っていませんか?」の質問。
社長から「おなかが減っていないか」と尋ねられればランチを一緒にするのだろうと誰でも思うだろう。

「そうですね、そろそろ12時ですから」
「じゃあ、近くの森に池がありますので、そこでランチにしましょう」

森の中の池。
ずいぶんとしゃれたレストランだなぁと思った。

しかし、なにやら浄水器やキャンプ道具のようなものを運び始める。
なんでガスコンロを持っていくんだろう?

「さあ、ここで食べましょう!」
案内された池はあまりきれいではない。
アヒルが泳いでいる、鳥の羽も浮いている、ペットボトルも浮いている・・・。
茶色い澱んだ池だった。

そこに登場したのがカタディン社の携帯浄水器。
池の水を浄化し、それで料理を開始。
その展開にはちょっと驚かされた。

そして、ランチ。
これにも驚いた。
東京の水よりも確実においしい。
ミネラルウォーターのようになっている。
世界最高の浄水器と社長が自負するように、スイス軍でも使用されている。

感動して首を縦に振ってうなずきながら食事をする私たち。
しかし、森の中を散歩している人たちは、私たちが池の水を使って料理する姿を見て呆れたように首を横に振っていた。












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