土曜の夜はフィーバーだ!

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詩集から

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隣のベッドで寝息をたてているのは誰?
よく知ってる人なのに
まるで見たこともない人のようだ
 
夢のみぎわで出会ったのはべつの人
かすかな不安とともにその人の手をとった
でも眠りの中に鎧戸ごしの朝陽が射してきて
 
朝は夜の土の上に咲く束の間の花
朝は夜の秘密の小函を開くきらめく鍵
それとも朝は夜を隠すもうひとりの私?
 
始まろうとする一日を
異国の街の地図のように思い描き
波立つ敷布の海から私はよみがえる
 
いれたてのコーヒーの香りが
どんな聖賢の言葉にもまして
私たちをはげましてくれる朝
 
ヴィヴァルディは中空に調和の幻想を画き
遠い朝露に始まる水は蛇口からほとばしり
新しいタオルは幼い日の母の肌ざわり
 
インクの匂う新聞の見出しに
変らぬ人間のむごさを読みとるとしても
朝はいま一行の詩
 
谷川俊太郎詩集「日々の地図」より

あべこべ

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肖像画に
まちがって髭を描いてしまったので
仕方なく髭を生やすことにした
 
門番を雇ってしまったので
門を作ることにした
 
一生はすべてあべこべで
わたしのための墓穴を掘り終わったら
すこし位早くても
死ぬつもりである
 
情婦ができたから情事にふけり
海水パンツを買ったから
夏が突然やってくる
子供の頃から
いつでもこうだった
 
だが
ときどき悲しんでいるのに悲しいことが起こらなかったり
半鐘をたたいているのに
火事が起こらなかったりすることがあると、わたしはどうしたらいいか
わからなくなってしまうのだ
 
だから
革命について考えるときも
ズボン吊りをあげたりさげたりしてばかりいる
のである
 
寺山修司初期詩篇「わたしのイソップ」より

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誰(だあれ)が風を見たでしょう?
僕もあなたも見やしない、
けれど木の葉を顫(ふる)わせて
風は通りぬけてゆく。
 
誰(だあれ)が風を見たでしょう?
あなたも僕も見やしない、
けれど樹立が頭をさげて
風は通りすぎてゆく。
 
クリスティーナ・ロセッティ 訳:西条八十

夏花の歌 その二

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あの日たち 羊飼いと娘のように
たのしくばっかり過ぎつつあった
何のかわった出来事もなしに
何のあたらしい悔いもなしに
 
あの日たち とけない謎のような
ほほゑみが かわらぬ愛を誓っていた
薊の花やゆうすげにいりまじり
稚い いい夢がいた――いつのことか!
 
どうぞ もう一度 帰っておくれ
青い雲のながれていた日
あの日の星のちらついていた日……
 
あの日たち あの日たち 帰っておくれ
僕は 大きくなった 溢れるまでに
僕は かなしみ顫へている
 
立原道造詩集「萱草(わすれぐさ)に寄す」より

夏花の歌 その一

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空と牧場のあいだから ひとつの雲が湧きおこり
小川の水面(みなも)に かげをおとす
水の底には ひとつの魚が
身をくねらせて 日に光る
 
それはあの日の夏のこと!
いつの日にか もう返らない夢のひととtき
黙った僕らは 足に藻草をからませて
ふたつの影を ずるそうにながれにまかせ揺らせていた
 
…小川のせせらぎは
きょうもあの日とかわらずに
風にさやさや ささやいている
 
あの日のおとめのほほえみは
なぜだか 僕は知らないけれど
しかし かたくつめたく 横顔ばかり
 
立原道造詩集「萱草(わすれぐさ)に寄す」より

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