中国の債権回収における時効制度
中国の企業に対して未回収の債権がある場合、これを時効により消滅させないよう、中国の時効制度に留意しておく必要があります。
1. 時効期間
債権の種類により、時効期間が異なります。
時効は権利が侵害されたと知った日、または知り得るべき日から起算します。なお、売買契約の場合、貨物代金の支払日の翌日が「権利が侵害されたと知った日、または知り得るべき日」とされ、時効を起算します。
2. 時効期間満了の結果
時効が満了した場合、債権者は勝訴の権利を失います。つまり、債務者に対して債務履行を求めても、裁判所または仲裁機関がこの請求を認めません。もっとも、時効期間満了以降であっても、債務者が自発的に債務を履行することは可能です。
3. 時効を中断させるテクニック
法により、以下のいずれかの状況に該当したとき、時効が中断します。中断日から、時効を改めて計算することになります。
具体的に、以下の方法により、時効を中断させることが可能です
(1) 債務者に履行に同意する書面を要求
債務者が債務の履行に同意すれば、同意の承諾を受けた日から時効が中断します。実際にこの方法を利用して、債務者との間に債務履行に関する覚書を締結したり、債務者に債務履行計画書を提出させるなど、時候の中断を実現した実例は数多くあります。このとき、債権金額と承諾日などの記載を明確にしておくことが必要です。
上記要求は、債務者の負担を加重しない、いわば合理的な要求といえるため、債務者がこの要求を拒否した場合には、債務不履行になる可能性が極めて高くなることを覚悟すべきでしょう。このような場合には、債務履行通知(以下の記述参照)を発行したり、訴訟を提起するなどして、別の対策を講じなければなりません。
(2) 債務履行の要求通知を発送
債務者に債務を履行するよう、要求するだけで時効を中断させることができます。しかしながら、この方法は自分の要求した事実を如何に証明するかが比較的難しく、注意が必要です。
中国では、日本のような内容証明郵便制度がありません。したがって、郵便局を通じて債務者に履行通知を送付し、郵便局から履行通知が届いたとの受領済み証明(中国語は「回執」)を受けても、これだけでは債務者に要求したとの証拠にできないリスクが伴います。このリスクを回避するために、公証人により公正証書の発行を受ける方法が考えられます。現在、北京においてこのような公正証書を利用する場合、1部につき1000人民元の料金が発生します。その上、債務者がこのような公正を受けた郵便物を受領しないケースが実際には多く、やはりこの場合にも、債権者は郵便局から郵便物の受領済み証明を受領することができません。この点について、北京市では時効の中断に該当すると解釈されていますが、地方により異なる見解も見受けられます。
(3) 訴訟を提起する
時効期間の満了が目前に迫っても、債務者がなかなか返済しようとしない場合、訴訟を提起することも時効を中断させるための方法の一つです。また仮に、債権者が提起した訴訟を撤回しても時効の中断に影響はありません。実務において、裁判所に支払命令の発行を申請する方法も見受けられます。
4. 時効満了後の救済
時効満了を迎えてしまうと、通常債権回収をあきらめることになってしまうわけですが、以下のことが実現できれば、債権が復活し、時効を改めて計算することができます。
債務者に請求通知書を発行し、債務者がこれにサインをすれば、債務に対する確認とみなされ、時効が債務者のサインした日から起算することができます。
債務者と債務返済に関する覚書などの書類を締結します。これは当事者間の債務債権に対する修正であり、新たな債権が形成されとみなされ、時効を改めて計算することができます。
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