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「1Q84」を読み終えた。
最後の一行を読み、本を閉じたボクはカーテンを開け空を見上げた。
月を確認したのだ。
正確に言うと、確認せざるを得ない気持ちになったのである。
月は一つだった。
それが幸なのか不幸なのかは分からないけれど・・・。
春樹ワールドにはメタファが溢れている。
リトルピープルとは。
空気さなぎとは。
天吾とは、青豆とは。
そして、月は何故二つなのか・・・。
謎解きはオモシロい。
面白いが、それは勝手な屁理屈でしかない。
結局のところ、本当に謎を解けるのは謎を仕掛けた本人でしかないからだ。
高速道路の渋滞に巻き込まれ、非常階段を下りることになった青豆(これが主人公の女性の名前である)。
タクシーの運転手は、有り得ない行動に移ろうとする彼女にこう告げる。
「その後の日常の風景がいつもとは違って見えてくるかも知れない。でも見かけに騙されないように。現実というのは常にひとつきりです・・・」
こうしてボクたちは村上春樹の作り出した森(迷宮)に入り込んでいく。
彼が作り出した「もう一つの世界」に。
何かをきっかけに世界が違って見える。
こういうことは良くある。
きっかけは一冊の本であったり、一つの非日常な体験であったりする。
そこから、人は新しい世界に入っていくことになる。
ポイントが切り替わり、列車が行き先を変えるように。
そして、そこからは二度と後戻りはできない。
物語は青豆のワールドと天吾の二つの世界で別々に展開していく。
このスタイルは正に春樹ワールド。
二つの世界は繋がっているが、初めから明示されているわけではない。
それは徐々に明かされていく。
まるでロールプレイングゲームで主人公がアイテムを手に入れる度に次の扉が開くように、読者は一つ一つ鍵を与えられる度に「やっぱりね」と納得しながら秘密の扉の奥へと進んでいくことになる。
村上春樹の小説は「喪失と再生」の物語だ。
これも、そう読むと謎が解けてゆく(ような気がする)。
もちろん、それが正しいかどうかは知らないしどうでも良い。
謎解きは専門家に任て、ボクたちは心地良く森を彷徨えば良い(心地良いかどうかは人それぞれだけど)のである。
今夜、もう一度、空を確かめてみよう。
月は一つか、二つか・・・。
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