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「で、タッちゃんどうする?」
「あん?」
「あれだけ鬼監督に難くせつけられて…」
割れ物を掃き出しながら訊いてみた。野球部のことであり、男同士の問題だから慎重にだったけど。南がいくらやりたいと思っても、タッちゃん自身がその気にならないと動けない。やってはダメなことだった。
「ああ、俺たちも調べるか」
「分かったタッちゃん!」
たぶん意気揚々としてた南、今になって考えるといやな女の子と思う。
でも善は急げとばかり、途中の食事をせかした南は二十分後には、野球部の資料室にタッちゃんとともにいた。年に一回整理のために開けるだけでほとんど開かずの間の空間、作り付けの棚は詰まってるけど床床面積は三畳ていどあるので息苦くはない。だから一冊を引っぱり出そうと十冊ぐらい散らばった時、簡単に一冊ずつ見つけることができた。
「大丈夫タッちゃん?」
「ああ、何年くらい前かな?」
「老けて見えるけど、意外と若いんじゃない?」
「十年くらいかな?」
それなら今年で二十七か二十八.いい線かも知れない。
「昭和五十年、四十九年…あれ?」
「どうしたの?」
「四十六年から四十八年まで抜けてるぞ?」
「え? 去年、南が整理したときはちゃんと揃ってたわよ」
それは確かなことだった。マネージャーは南嵩の一人体制だったから、作業量が膨大だったことを覚えてる。だから学業のほうが疎かになり、少し順位を落としてた。新体操部も気楽にやれてた時期だった7から、顧問の先生も部長も大目に見てくれてた。南にとって野球部のマネージャー業を本気でやってた幸せな時間。
「ということは」
タッちゃんの問いかけに、南は答える。
「たぶん」
「見ろやっぱりだ!」
この時点の推測としては合理的といまでも思う。
「絶対なにかあると思ったんだ。あの監督代行には!」
そうそう。
「記録をみりゃだいだいどんな選手だったか想像できる」
そういうこと。
「あんなもうろくした監督の記憶なんかあてにならねえからな」
西尾監督のことです。そこで突っ込む南。
「ところがその記録がない」
「そうあいつが隠したんだ。俺たちに知られては困る秘密があるから」
「どんな秘密?」
「さあな」
正直に言う。南はこの掛け合いに喜んでた。久しぶりの夫婦漫才だし、鬼監督をこらしめるきっかけになったと思ったから。しかし事実は鬼監督より早く、柏葉英二郎の情報を隠匿した学校関係者がいたのです。私もあえて匿名を通しますその人を、権力者とだけ明言しとく。 [4006touch.txt]
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