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「スピードも球の伸びもヒケはとらないのに、和也なら打たれなくておれだと打たれるのか?」
タッちゃんの疑問はもっともではある。
「コントロールが悪いってのか?」
「いや、いいコースだったよ」
孝太郎くんの見識、少なくとも論理的ではない。
「んじゃいったい何だよ!」
「さあ…」
自分でもわかってないんだ。
「…けどやっぱり。和也だと打たれないような気がする」
「バカやろ、それじゃただのひいきじゃねえか」
「それじゃあタッちゃんは、カッちゃんが新田くんに打たれると思うの?」
タッちゃんへの突っ込みのつもりだったけど、南自身が驚くカッちゃんの実力と思えた。でも納得する
タッちゃんとの差をまだ見つけられずにいたのです。
「監督…このままいくと、もう一度新田までまわりますよ」
吉田くん? 実はタッちゃんと孝太郎くんと顔を見合わせ、聞き耳を立ててた。
「さっきでハッキリしたでしょ、上杉には新田を抑えられないことが」
タッちゃんだから打たれたのにと、南も吉田くんの驕りを残念に思った。
「今のおまえには実績も本当の自信もない。だからあせる気持ちもわかる」
「自信はあります!」
「ガラスのな。おまえにはいい素質がある。この試合でつぶしてしまうのは惜しいんだよ」
相手に背を向けて喋る監督。しかも大人の悲哀を十分感じさせる淡々とした物言いに、私は尊敬しだしてた。
「ほかのやつならそういう挫折をくり返させながら大きくするという手もあるが、おまえはそういうタイプではない」
これ以降は聞く必要なかった。ただ直後にバッターボックスに立った吉田くんは、独り言をつぶやきながら三振を喫した事実だけ記しとく。
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2017年10月05日
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