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続く八回の表。データでは須見工が一番高い得点率を誇る回。しかしそれは好投をとげた先発ピッチャーの場合。私もマネージャーの端くれとして分析したけど、ファールなどでねばったり球を見極めて球数を多くさせた結果、八回の疲労がたまった球を集中打した結果らしかった。だから六回から登板したタッちゃんの剛速球に須見工打線さえ(もちろん新田くんを除いて)対応できるわけはなかった。
バァン!
そんな何回もの孝太郎くんのミットに収まるタッちゃんの渾身のボールに監督自身驚いてた。
「あいやァ」
「6連続三振」
南も内心感心してスコアブックをつける。
とはいえ二年生の佃という名前のピッチャー、さすが須見工だけのことはある。タッちゃんのタイムリーなど忘れたかのように、9番ショートの中嶋くんにはど真ん中を空振りさせる。これはバッターにはきつい。自分のバッティングを見失わせる切っ掛けになること、南もさんざん見てきた。南は展開が予想できると思ってつまらなく感じ、隣のタッちゃんを見る。
「なにさっきからボケっとしてるのよ」
まさか心を無にしてたわけでもないでしょうに。
「すみませんねえ。考えごとしてる顔にみえなくて…」
――あら?
「何考えてたの?」
「和也はいつもなにを思って投げていたのかな?」
南は少し、失望した。
「きまってるでしょ、マウンドにたったら無心。打者をうちとることだけよ」
「そんなに割りきれる男かよあいつが。人にやたら気をつかって、やさしくてお人好しで」
「ふだんわね。でもマウンドにたったカッちゃんはちがったわよ」
南は単純に、カッちゃんはそういう男の子だったと理解してた。
「たしかに…みていてあいつが打たれる場面は想像できなかったな」
そうそう、南もタッちゃんも改めてカッちゃんの底の知れなさを想像してた。しかしタッちゃんの次の言葉は聞き捨てならない。
「和也なら新田も抑えられるよ、きっと」
弱音を吐くんじゃない。南は気合を入れさせるため、スコアブックでタッちゃんの頭を叩いたのです。
「とにかく一生懸命投げて、南を甲子園につれていくこと。わかったわね」
南自身、悦に入った台詞だった。でも結果的に、タッちゃんに突っ込まれるボケになる。
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2017年10月06日
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