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「なんだって?」
 怪訝な表情でのタッちゃんの問いかけに、一瞬とまどう。すぐにカッちゃんが目指した南の夢に同意してくれると思ってたから。
「えっ?」
「それだよ!」
「どれだよ?」
「それしかねえじゃねえか、和也がマウンドで考えていたことは――」
 つまり一生懸命投げて――
「おまえを甲子園につれていくためには、どんなすごい打者でも打たれるわけにはいかなかったんだ。南の夢をかなえることしか頭になかった。あいつは南のためならなんでもできる男なんだ」
 そしてタッちゃんは自分で新田くんを打ちとれなかった原因を突きとめる。
「おまえの一言が和也のボールにわけのわからない力を与えていたんだ」
 理屈はとおる。南としても嬉しい気持ちはあった。しかし真面目に答えると涙が出そうでおどけてしまった。
「ほんとかなァ」
「そうさ、それしかない! どうしてもっと早くおれにそれを言わないんだ!?」
「あれ、いったことなかったっけ」
「ねえよ」
 そんなタッちゃんの横顔は、結構不満顔だったっけ。
「そういういいかげんな期待のされ方だから、新田にホームランなんか打たれちまうんだよォ」
「たってタッちゃん、期待されるの好きじゃなかったでしょ」
 ここまでは多少話題が重いけど、南がわざと軽くしたこともあってボケとツッコミの応酬になってたと思う。
「相手によるんだよ」

 南はすぐ、タッちゃんの本音がでたと思った。ならば南も、本気でタッちゃんと向き合う必要がある。試合中のベンチという半分公共の場であっても。
「だからといって、和也と同じ成果が現れるとは限らんけどな」
 だからそんな逃げ口上のタッちゃんを、南は追い込んだのです。
「つまり……タッちゃんがカッちゃんと同じように南のこと思っていてくれたなら、新田くんには打たれない」
「だから、そうとは…」
「甲子園つれてって」
「そんなこといってもしまた打たれたら、おれは南のことを」
 タッちゃんの狼狽えぶりは楽しかったけど、勇気づけたかった。
「自信ない?」
「上杉いくぞ、最終回だ」
 孝太郎くんの声。しまった、タッちゃんとのおしゃべりでスコアブックつけ忘れた。8回裏の明青の攻撃の分、誰か記録とってくれていたらいいんだけど。タッちゃんはというとベンチから立ち上がり、南をいつになく真剣に見つめてる。南の方は信頼と激励の表情だったらしい。その表情で再び言ったのです。
「甲子園つれてって」



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大塩高志
大塩高志
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