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【小林節さん】自民の知恵袋から政権批判の急先鋒に
(03/08北海道新聞)
「改憲派」の旗手として自民党のブレーン的存在だった憲法学者が、政権批判の急先鋒(せんぽう)に立っている。慶応大名誉教授の小林節さん(66)。昨年の衆院憲法審査会 で 安全保障関連法 を「違憲」と断じ、強行成立させた安倍晋三首相を「憲法無視の暴走宰相」と非難してはばからない。かつて水と油だった護憲派とも連携し、この夏の参院選 での野党共闘に向けて奔走する。その信念を聞いた。 憲法の根本は「個人の尊厳」の保障。守るのは権力者の義務
――小林さんと言えば、自民党寄りの論客のイメージでした。
「体制側に長居したなと思います。30代半ばの1985年ごろから、自民党の勉強会に講師として呼ばれ始めました。米ハーバード大帰りで慶応大の教員。当時、改憲を訴える憲法学者は少数派で、護憲派の東大出身者が牛耳る憲法学会では敬遠される風潮がありました。それなりの経歴のある若手学者が、歯に衣(きぬ)着せぬ主張をするということで、重宝がられたのでしょう。明文規定のないプライバシー権や環境権を追加する『憲法のリフォーム』が必要だと訴えていました。国民の理解が得やすそうなテーマから改正する『お試し改憲』を提言したのも私です」
―― 自民党の憲法改正草案 にも影響を与えました。
「2012年に発表された自民党改憲草案づくりの会合にも出席したことがあります。彼らは自分に都合のいい話を『つまみ食い』する傾向がありました。『天皇は元首だ』と私が言えば、お墨付きをもらったと受け入れる。一方で『権力者を憲法で縛るのが立憲主義 。好き勝手はできない』と話し始めると、言葉を遮られた。そのうち呼ばれなくなりました」 ――その間も、ご自身の姿勢は変わらなかったのですか。
「立憲主義の否定にはくみしない。それは一貫しています。自民党には当初から『あなた方の考える改憲はご無理ですよ』と諭し続けてきたのです。自民党の改憲案は、国家が国民を統制し、権力者が使いやすくしようとするものです。天皇主権のもとで『臣民の権利』として、限定的に国民の権利が認められていた戦前の大日本帝国憲法に戻そうとしている。いまの憲法が保障する国民の権利・自由は、人間ならば当然に享受できるものです。しかも、こうした憲法の理念を守る義務は国会議員ら権力者側にある。自民党からは5年ほど前、『論調を少し変えてもらえれば仕事を融通できる』と誘いを受けたこともあります。『バカ野郎』と言って断りました」
――こわもての硬骨漢として知られています。
「私は生まれつき左手に障害があり、幼いころはいじめも受けました。近所の子の母親から『あの子と遊んでは駄目。障害がうつる』なんて言われて。落ち度はないのに、おとしめられた。自分は、見た目から差別を受ける童話の『みにくいアヒルの子』のようだと悩みました。高校では不登校 にもなりました。やくざ者のように、気に入らないやつをたたきのめす暴力に憧れた時期もありました」 ――なぜ憲法学者に。
「大学で法律の勉強を始めて、憲法の根本は『個人の尊厳』の保障にあると学びました。人間はそれぞれ個性が違い、1億人いれば1億人分の価値がある尊い存在だと。障害を理由に卑しめられる経験をしてきた私には、すごく響いた。憲法っていいなと思いました。人間は文明を持つ動物です。暴力でなく言葉で抗わなければと気づかされました。憲法を武器に差別と闘えると勇気づけられたのです。だからでしょうか、まるで『貴族』のような世襲議員の首相が、上から目線で改憲論を語るのを聞くと血がたぎる。人は等価値なのに、気にいらねえなと。反発するのは、自分の尊厳をかけた闘いだと感じるからです」
上から目線の改憲論を聞くと血がたぎる。気にいらねえな
――弁護士資格をお持ちなので、安全保障法制に対する違憲訴訟を目指すとの話もありましたが。
「訴訟を起こせば、最高裁判決が出るまでに4年はかかり、その間に国政選挙は複数回行われます。同じ時間と労力を傾注するなら、現実の政治を変えることを優先したい。安倍政権は憲法を破壊する『暴走政権』です。政治の借りは、政治で返すしかありません」
――具体的な取り組みが、1月半ばにつくった「立憲政治を取り戻す国民運動委員会」ですね。
「代表世話人で東大名誉教授の樋口陽一さんら憲法学者に加え、俳優の宝田明さん、音楽家の三枝成彰さんら賛同者は200人に上ります。中心メンバーが毎月1回集まって、1カ月間の首相発言や政府・与党の動きを分析し、私たちの見解を発表します。安保関連法に対して、大学生や高校生、子育て中の母親など、政治行動に慎重だった人々が立ち上がりました。ただ、彼らは専門家集団ではありません。やみくもに反対の声を上げるだけでは、政治には響かない。専門的見地から追及すべき論点を明確にし、それぞれの市民運動をつなげる理論的司令塔の役割を果たします」
――野党との接触は。
「ある夕刊紙の企画で昨年12月から1月までに民主、共産、維新、社民、生活の野党5党のトップと個別に対談しました。この夏の参院選では『1強』自民党に対抗するため、各党とも改選数1の『1人区』で候補者の一本化が必要との考えでは一致していました。野党共闘の実現の芽は、十分ある。それを市民運動側から後押しする風を吹かせたい」
――講演などで全国を飛び回る毎日です。
「1カ月で20回ほどになりますね。かつては考えられなかったのですが、護憲団体や、自民党による改憲に疑問を持つ人々からの依頼が中心です。道内では4月に室蘭と苫小牧、札幌で、6月に旭川での講演がすでに決まっています。妻が十勝管内清水町出身ということもあり、北海道には特に親近感を持っています」
――首相は参院選で、改憲の発議に必要な3分の2以上の議席確保を目指すと表明し、前のめりになっています。
「安保関連法の審議でも、野党の反論にろくに耳を貸さず、それをいさめる側近もいない。民主主義、立憲主義、法治主義…あらゆるルールを無視して暴走している。王様が思ったことを周りが担いで実行する恐ろしい政治になっています。王政時代のような勝手を許してはいけません」
<略歴> こばやし・せつ 東京都生まれ。弁護士。慶応大大学院法学研究科博士課程修了。米ハーバード大法科大学院 客員研究員などを経て、1989年から2014年まで慶応大教授。同年4月から現職。専門は憲法学。著書に「白熱講義! 集団的自衛権 」「憲法改正の覚悟はあるか」など。「立憲政治を取り戻す国民運動委員会」では、取りまとめ役の事務局幹事を務める。 <後記> 本質を突いた直言で注目を集めるが、気配りの人だ。2月上旬、取材のため札幌でご一緒した2日間、さりげない一言に人柄を感じた。「足元にご注意を」。道案内をしながら外を歩いた際、先に声をかけてくれたのは雪道に不慣れなはずの小林さんだった。食事を共にした後の別れ際にも「会話は楽しめましたか」と、にこやかに話しかけてこられた。憲法界の一言居士が、全国で引っ張りだこの人気の理由を垣間見た気がした。
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