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ゆうたくんは、3歳になる男の子で電車がとっても大好きです。

ゆうた君は、お母さんといつも家の近くにある商店街へ買物に行くのを楽しみにしていました。
ゆうた君のお気に入りは、商店街にある小さなパン屋さんです、そこには三毛猫が飼われていて、いつも店の前でお昼寝をしているのです。そのお店で焼きたてのパンを買って貰っていたのです。

ある日、お母さんは、ゆうた君にお使いをさせてみようと思いました。そこで、わざとパンを買わずに、家に帰ってから。
ゆうた君に話かけました。

「ゆうた、お買物に行ってくれないかしら、お母さん、パン買うの忘れちゃって・・・。」     

「じゃァ、どうすればいいの?」

ゆうた君がお母さんに聞いています。

「ゆうた、一人で買物に行ってくれる、お母さん食事の準備しないといけないので。ゆうたの好きなパンを買ったらいいからね」

そう言って、パン代を手渡しました。

ゆうた君は、お母さんのお手伝いができることが嬉しくて、「はい」と一言言うと早速玄関に駆け出していきます。

「車に気をつけて行くのよ。」

お母さんの声を背中に聞きながら、ゆうた君は、今にも外に出かけようとしていました。

「行ってきます。」

ゆうた君の声が聞こえてきました、ゆうた君の小さな手には、しっかりと100円玉3枚をしっかりと握りしめていました。

いつもお母さんと歩く見慣れた道は、一人だととても新鮮に感じるものでした。
季節は冬、16時過ぎといえども日は西に傾き、街全体を赤い夕日が染め上げています。

「きれいだなー・・・ 」

夕暮れを見とれていると 、後から声がしました。

「もしもし、ゆうた君だね。いつもおじいちゃん・おばあちゃんに手紙を送ってくれてありがとう」
「おじいちゃんもおばあちゃんも、喜んでいたよ。」

誰が話しているのかとふと振り返ると、赤い丸型のポストがゆうた君に話かけているではないですか。

ゆうた君は、恐る恐るポストに聞いてみました。

「なぜ動けるのですか?、なぜ喋れるのですか。」

でも、ポストは何も答えてくれませんでした。
あれは幻だったのでしょうか。

ゆうた君は、首をかしげながらも、少し小走りにパン屋さん目指して歩いていきました。
あの角を曲がれば、猫の居るパン屋さんが見える。


ゆうた君のいつもパンを買うお店はなくて、その代わりに小さな駅が建っていました。

駅からは、最初は小さく、やがてはっきりと聞こえる声で

「ふるさと行き、最終列車まもなく発車します。ご乗車の方はお急ぎください。」
「最終列車です、ご乗車の方はお早くお願いいたします。」

やさしい、やさしい声の駅長が、誘いかけるように話かけます。
ゆうた君も、その言葉に惹かれるように、そっと駅の中へ入って行きました。

駅に入ると、ゆうた君が見たこともない、蒸気機関車と、客車が止まっていました。
客車は、何両かつながっているようでしたが、薄暗くてよく見えません。

客車の入口には、小さな電球が天井から吊るされており、淡い光を木の床に照らし出していました。

ゆうた君は、車内に入ると小さな手で、ドアのノブを開けました、既にそこにはたくさんの人が居るようでしたが、天井にぽつぽつと並んだ小さな電球に照らし出された車内は薄暗くて、ゆうた君は泣きそうになってしまいました。

今にも泣き出しそうになった時、

 「坊や、泣かないで」
優しい女の人の声がします、その声にゆうた君は聞き覚えがありました。
そうです、いつもパンを買いに行くお店のおばちゃんの声だったのです。

「おばちゃん?、パン屋のおばちゃん?」

ゆうた君が恐る恐る話かけると、おばちゃんも。

 「いつもお母さんとパンを買いに来る坊やかい?」

「うん、そうだよ。おばちゃんの家にパンを買いに来たらこの汽車が停まっていて・・・」
ゆうた君は、おばちゃんに話かけました。

「坊や、何も心配することはないのよ、坊やのふるさとに連れて行ってくれるから。」

おばちゃんが、そう言った話をしていると、外から少しはっきりと聞こえる声で、
「ふるさと行き、ただいま出発いたします。」

ふと窓の外を見ると、赤い帽子をかぶった駅長さんらしき人が立っていました。
顔は良く見えませんでしたが、猫のように丸い背中と、尻尾?が見えました。

汽車は、少し物悲しい汽笛を鳴らした後、カタンという小さなショックとともに動き出しました。

とても静かな動き方です、外の景色も夕暮れの景色から一変、薄暗い闇が広がっていました。
ゆうた君は少し不安になってきます、でもいつも行くお店のおばちゃんが一緒に居るので少し安心したのか、うとうとと居眠りを始めてしまいました。

どれくらいの時間が経ったのでしょうか、もしかしたらほんの5分ほどかもしれないし1時間かもしれませんが、おばちゃんに起こされたのです。

 「坊や、ご覧外が綺麗ですよ。」

ふと外を見ると、そこにはミルクの川が広がっているようなそんな綺麗な星空が広がっていました。

  「ここは、天の川。天使たちはここで水遊びをするのよ。」

おばちゃんは、少し懐かしそうに話すのでした、そういえばゆうた君もここで遊んだような気がするのですが、とても昔のことのようにも思えました。

しばらくすると、汽車は「銀河ステーション」に到着しました。

銀河ステーションでは思わぬ人と再会したのです。

それは、田舎に住むおじいちゃんとおばあちゃんでした。

 「ゆうた、よく来てくれたね。」

おじいちゃんとおばあちゃんが、微笑みながら迎えてくれました。

 「ゆうた、大きくなったね。」
おばあちゃんが、話かけてくれました。

 おじいちゃんは、ニコニコとうなずくばかりでした。
でも、おじいちゃんとおばあちゃんがここに居るの?ゆうた君にはさっぱりわかりません。
おばあちゃんが、そのわけを教えてくれました。

 「実は、ポストさんが私たちをここに連れてきてくれたのよ」

そう、ゆうた君が見たポストなのです。
楽しい時間は、あっという間に過ぎてゆきます。
そろそろ汽車の出発の時間も近づいてきました。

 「ゆうた、そろそろお別れの時間だ、今日はありがとう。」

そういうと、おじいちゃんとおばあちゃんは、銀河ステーションのホームから消えていきました。

 「ゆうた君は、再び汽車にもどると、おばちゃんの隣には見知らぬ猫が寝ていました。

「おばちゃん、この猫は?」

 「ほほ、私のお連れさんですよ。」
そのうちに、汽車は静かに動き出しました、今までよりも少しスピードも出ているようです。
カタン、カタン、カタタン・・・レールから聞こえる音も少し早くなったようでした。そのリズミカルな音を聞いていると再びゆうた君は夢の世界に旅立って行くのでした。

ゆうた君は、夢の中で自分が生まれた時の様子を見ることが出来ました。

そう、ゆうた君が生まれた3年前のあの日、公園の鳥たちが賛美歌を歌ってくれたあの日を、直接ゆうた君は、空の上から病院の中を覗いていたのです。そこには、おと子の子が生まれてとても嬉しそうなお父さんの顔が見えました。そして疲れてはいるけれども、無事ゆうた君を産んだことで安心したお母さんの顔、二人ともとても幸せそうな顔をしていました。

ゆうた君は、そのときはっきりと思い出したのです。

天の川で遊んでいた天使だった頃のこと、そしてグレートマザーに呼ばれて、何日の汽車で旅発つように言われたことなど・・・・。
     
 「坊や、坊や」
ゆうた君に話かける声で目が覚めました。
「あれ、夢だったのか。でも不思議な夢だったなぁ。お父さんとお母さんの夢を見たんだ。」

ゆうた君は、おばちゃんに話かけます。
おばちゃんは、にっこり微笑みながら、もうすぐ終点ですよ。

列車は、今度は天の川を潜るように進んでいきます、途中では星屑の中に自分が流されているような錯覚に陥りながら、進んでいきました。

やがて、汽車は漆黒の闇の中を走り、駅に到着しました。
どうも、先ほど出発した駅と同じ駅のようにも見えます。
汽車は、とうとう終着駅に到着しました。

駅長が、駅名を何度も叫んでいます。
「空蝉(うつせみ)、うつせみ、ご乗車お疲れ様でした、空蝉、うつせみ終点でございます。皆様お忘れ物なきようおねがいたします。」

赤い帽子をかぶった駅長さんの姿が見えました。

ゆうた君は、赤い帽子の駅長さんの姿が気になって、そっと前に回ってみました。

「あ、・・・」

ゆうた君は思わず、びっくりして声をあげてしまいました。
だって、赤い帽子をかぶった駅長さんは、パン屋さんの店先でいつも寝ている三毛猫だったからです。

もう、何がなんだか・・・・

そう思ったとき、

「ゆうた。起きなさい、朝ですよ。」
「ゆうた。起きなさいってば。」

お母さんの声が聞こえてきます。

え?どうなってるの。って、そう、実は全て夢だったのです。
でも、一つだけ本当のことがあるんです、それは、ゆうた君が昔、天の川で遊んだこと、そして、ゆうた君が乗った汽車は必ずみんな一度は乗っているんだということなんだ。

天の国から、お母さんのお腹の中にやってくるのに必ずみんな天の川鉄道〈銀河鉄道)に乗って来るんだよ。

ほら、小さな汽笛が聞こえてきませんか?

2007/12/4

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