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北風がひゅっと男の首筋をかすめていった。彼は、身をすくめ、同じ風が街路樹の葉を数枚落としていったことを確認した。
(日に日に寒くなっていくな。)
彼は黒い革のコートの襟を立てた。あいつの言う通りマフラーを持ってくればよかったと、
小さな後悔をした。明日はもっと寒くなるだろうと、暗くなりつつある空を見上げた。
そんな空とは対照的に通りに並ぶ商店からはクリスマスソングが聞こえてくる。
一年はあっという間だ。彼女にためにクリスマスプレゼントを選んだのはついこの間のことのように思えた。去年は、マフラーを贈った。珍しいものでもないがカシミアの肌触りがいいものだった。
彼女もなんども撫でたり頬ずりをして肌触りを楽しんでいた。
今年は何を贈ろうか…通りに並ぶショーウィンドウをのぞきながら歩いた。
去年は楽だった。あのマフラーは、彼が一目で気に入ったものだったから。
見るなりすぐに店に入り、買ったのだ。
今年はまだそういうものに出会っていない。何がいいだろう。
アクセサリー、手袋、バッグ…
ここのところ忙しくて二人で出かけていなかった。出かけていればなんらかのリサーチができただろう。
テレビを観ながら何がいいと言っていたような気もするがそれも思い出せない。
まだ日がある。今日決まらなくても焦ることはない。
と、ショーウィンドウから目を離そうとしたときだった。
菓子屋に大きな箱状のカレンダーが飾られていた。
アドベントカレンダーか…。
クリスマスまで一つずつ窓を開けていく。窓を開けると小さな菓子がでてくる。
チョコレートが入っている日もあれば、ガムの日もある。
毎日ちょっとしたプレゼントがもらえて、心が浮き立った。
我慢できずに翌日分の窓も開けてしまって母親に怒られた。
懐かしさで胸がいっぱいになる。
いつから彼のクリスマスにアドベントカレンダーがなくなっただろうか。
毎日、窓を開けながら彼女とクリスマスのことを話すのもいいかもしれない。
同じ屋根の下で暮らしているのにほとんど話をしていない。
毎日、窓を開け、彼女はなんというだろうか。
そうだ、ツリーの飾りがまだだった。
帰ったら二人で飾りをつけよう。
彼の心が久しぶりに浮き立ってくる。
彼はゆっくりと菓子屋のドアを開けた。
通りに釣り下がっているMerryXmasの文字に灯りがついた。
彼のクリスマスが始まる。
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