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2011年5月12日(木)、今朝急にブログ化学を始めました!Kidsらの勧めで。

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ツユクサの青色の秘密

ツユクサの美しい青には誰でも不思議に思うでしょう。一つの分子が醸し出す色ではなくて有機分子と金属イオンが集合した超分子構造体なのである。
 
ツユクサにも種類があるらしい。
 
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超分子は微弱な力で結合しているので取り出すと不安定である。染色は大変だと思う。
 
下の研究者らは、その単結晶作りに挑んだという。安定な分子の単結晶作りでも3ヶ月毎日作って構造解析に適した結晶が一つも得られないこともある。
 
花の色・形の美しさの原因解明も化学的には大変なのである。
 
ツユクサの美しい青色花と分子的な秘密
 
  kenkobunka.jp/kenbun/kb24/kondo24
 
近藤忠雄(名古屋大学化学測定機器センター)
吉田久美(椙山女学園大学生活科学部)

柴田の弟子の林孝三らは青色の花の研究を続け、1950年代には、ツユクサの青色花弁色素コンメリニンがマグネシウムイオンを含む金属錯体であることがわかった。
 
この青色色素は、無色のフラボンも含んだ弱い分子間力による分子集合体であろうと推定され、メタロアントシアニンと命名された。
 
 
 
その頃になると、重金属やアルミニウムイオンがアントシアニンと錯体を作り青色になることが知られ、花色と金属錯体との関わりが無視できないことは認識されていた。
 
しかし、マグネシウムイオンとアントシアニンだけでは青色錯体はできないとして、再びドイツの化学者から反撃された。
 
この問題は最終的に1990年代にまで持ち越され、後藤俊夫を中心とした筆者らの研究で解決をみた。
 
もし、ツユクサの青色色素が極めて弱い会合により成る集合分子であるなら、花びらからの色素精製途中でどんどん分解が進むため、純化は非常に困難である。
 
そこで我々は発想を逆転させ、構成成分をまず単離して、それらを混合することにより青色色素を再合成できれば、色素の組成も同時に明らかにすることができるのではと考えた。
 
1980年から10年以上にわたり、合計数百kgにおよぶツユクサ(実際には、倍数体の栽培品種オオボウシバナ)の青色花弁を琵琶湖湖畔の草津で入手し、そこからアントシアニンを純粋に取りだした。
 
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無色のフラボンも精製し、これらをさまざまな金属イオンと混合することにより、ツユクサの青色再現を検討した。結果、錯体中心の金属はやはりマグネシウムであることが決定でき、アントシアニンとフラボンが6分子ずつ、マグネシウムイオンが2原子含まれることが明らかになった。
 
しかし、それぞれの構成分子やイオンがどのように会合し、配位しているのかという、集合分子全体の形、構造は不明である。そこで次に、単結晶を作ることに力を注いだ。
 
結晶が得られれば、X線結晶構造解析により分子全体の形を知ることができる。
 
幸い、X線解析には当時日本最強の巨大分子用の装置、つくばの高エネルギー物理学研究所の素粒子研究用加速器に併設された、フォトンファクトリーの放射光回折装置を使うことができた。この強力な白色X線を用いることにより、初めて、精密解析可能な回折像が得られ、コンメリニン分子の精密構造がわかった(図1)。花
 
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ツユクサの青色色素の構造    (bioportal.jp)
図の中心がツユクサ青色の結晶構造です。二分子のデルフィニジン系アントシアニンと、二分子のフラボンがマグネシウムを中心に、合計それぞれ6分子で構成されています。
 
 
びらの中に、整然とした美しい花のような色素超分子が存在し、どのように青色となるのかも化学的に明らかになった。
 
柴田らの金属錯体説の80年後の実証である。日本の科学には模倣、欧米の後追いは多いが、創造的な研究がないという批判が多い。しかし、花色の研究は、日本で創造され花開いた研究で、どこの借り物でもない。
 

 ヤグルマギクの青色色素の構造
 
 
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ヤグルマギクの色素はさらに複雑な金属錯体を構成しています。シアニジン系アントシアニンとフラボンが6分子づつ、中心には、鉄、マグネシウムの他に、カルシウムが必要だったのです。黄色はフラボン、青がアントシアニンです。
 
日本原産で、欧米で育種が進み再び帰ってきた花にアジサイがある(実は装飾花は萼で、真の花は中心の小さな丸い部分)。
 
青色のアジサイを作るには酸性土壌がよく、園芸農家は硫酸アルミを加えて育てる。アジサイは七変化することが特徴で、買った鉢を庭に下ろしても翌年はきれいな青色にならないことも多い。この花色変異の謎も未だ解かれていない。
 
酸性土壌がよい理由は、アルミニウムがイオンとして溶けやすいからである(pH5〜8でアルミニウムイオンはほとんど不溶化する)。従って、青色発色にアルミニウムイオンが関与することは確実である。しかし、どのような錯体を作っているのかは全く不明であった。

我々は、赤色と青色のアジサイの萼の成分をそれぞれ分析した。すると、赤も青も全く同じアントシアニン色素しか含まれていなかった。青色でアルミニウムイオン含量が高い傾向はあったものの、はっきりしなかった。
 
顕微鏡でアジサイの萼の細胞を見ると着色した細胞は極く僅かで、大半が無色である。青色のあるいは、赤色の細胞だけの成分を比較しなければ、正確なデータは得られず、色の違う理由も明らかにできない。
 
そこで、萼の細胞を酵素処理によりばらばらにして、顕微鏡下マイクロマニュピュレータを使って、一つずつ細胞を選り分けた。
 
青色、赤色別に数百個の着色細胞を取り出し、有機成分、無機成分を調べたところ、3種の無色ポリフェノール成分含量に差が認められた。それぞれの成分割合で混合すると、萼の青色、赤色を再現できることも明らかになった。しかし、この発色はpHにして0.5程度の微妙な違いにも大きく影響されることから、生きた細胞の直接pH測定を行なった上での発色機構の精密解明が今後必要であろう。

ヤグルマギクの青色も、Willstätterが提案したpHのアルカリ化によるものではなく、鉄とマグネシウムイオンを含む金属錯体色素であることを、最近明らかにした。
 
その一方で、空色の西洋アサガオ花弁は、開花にともない液胞pHが上昇して花色が赤から青色へと変化することが、微小ガラス電極による直接pH測定により解明された。
 
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最近では、遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーを活用した分子育種により、青いカーネーションのような従来法では決して生まれないであろう花も出現した。
 
花色研究の延長線上には、青いバラも決して見果てぬ夢ではない時代が来ることであろう。それでもなお花色は、「謎」というにふさわしい様々な未解明の現象を含んでおり、巧みな生命機能にその都度驚かされる。
 

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