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古賀誠遺族会会長・元幹事長が、小泉首相の靖国神社参拝に慎重な対応を求めたことが、あたかも日本遺族会の見解であるかのように受け取られて、海外のメディアは間違った報道をしている。
遺族会は古賀氏の個人的な見解だとしているが、人権擁護法案を成立させようと躍起になっている古賀氏の事だ、意図的だったかもしれない。
今日取り上げた記事は、中国の狙いとそれに乗せられた日本の愚かな政治家、日本のとるべき道が示されている。
湯浅博の「世界読解」
(産経新聞2005年6月15日付朝刊)より
中国が投げた小石の正体
日本代表は「ニッポン・コール」のない無人のスタジアムでよく戦った。
日本の三大会連続W杯出場を決めたバンコクでのサッカーアジア最終予選のことである。
このゲームをテレビで観戦しながら、なぜか中国で起きた反日デモのことが頭に浮かんで消えなかった。
ひよっとして中国は、無観客試合のつもりで日本たたきを考えていたのではなかろうか。観客がいない試合なら、審判の目を盗ん禁じ手を使っても、外部世界には分かりくい。
北京などで反日デモを誘発させ、彼らに「日本の常任理事国入り反対」を言わせるのはたやすい。せっせと愛国教育で「反日」を刷り込んであるから、マッチを投げ込めばたちまち発火する。
中国は、アジアの政治大国として日本が常任理事国(P5)に割り込んでくることが許せない。
P5は戦勝国にして核保有国クラブであり、世界の指導的な地位にある。日本とだけの試合なら、反日デモで揺さぶり、歴史認識カードでトドメを刺せばいい。
しかし、悪いことはできない。デモの狙いが常任理事国入り阻止であることを米欧のメディアに見破られてしまった。無観客試合とばかり思っていたら、どこかに監視人が潜んでいたようなものだ。透明戦こそ悪事の敵である。
監視人による摘発で反日デモが腰砕けになっては、別の方法で日本の理事国入りを阻止しなくてはならなくなった。
小泉純一郎首相の「靖国参拝」に焦点を当て、日本の有力な政治化を招いて暗に影響力行使を期待する。中国が小石を投げ込んでやりさえすれば、あとは日本が勝手に波紋を広げていく。
河野洋平衆院議長が歴代の首相を呼んで、「靖国阻止」に動いたのは上々だろう。日本遺族会会長の古賀誠元自民党幹事長が「近隣諸国に配慮を」と発言すると、遺族会全部が反対しているようかのような印象がひとり歩きする。
いま中国は、日中対立のスタジアムを飛び出して、決議案つぶしを公然と実行している。
日本、ドイツなど四カ国グループ(G4)は今月中に枠組み決議案を国連総会で採択し、常任、非常任理事会の拡大を確定することを狙っている。採択には加盟国191カ国の三分の二以上の支持が必要である。
広く世界で展開されているのは、日中の歴史認識などではない。それらを利用した国益激突の外交ゲームの方である。
日本のターゲットは二つ。これまでのゼロをプラスに持ち込む常任理事国入りと、マイナスをゼロに押し上げる国連憲章の「敵国条項」の削除である。
日本が常任理事国になれば、北朝鮮の経済制裁に国連を巻き込む手立てが可能になる。イランの核開発の阻止も安保理で拒否権をちらつかせる中国への圧力となる。常任理事国はそれほど強力なパワーなのだ。
一方、日本が標的の「敵国条項」の削除は、決して譲れない一線である。戦勝国が作った国連とはいえ、60年を経ていまだ「敵国」のレッテルのままでよく我慢してきたものだ。
まして、米国以外の四つの常任理事国の総額を上回る分担金を負担しても、いまだ「敵国」とは笑止だ。
いま国連改革のチャンスを逃がせば、10年後の70周年まで来ない。
わが政治家よ、観客のいないスタジアムを飛び出して外のゲームに挑んだらどうか。(東京特派員)
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