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北京からいつも最新情報を伝えてくる産経新聞の福島香織特派員が、今回は、中国の反日偏狭ナショナリストの若者たちが、メディアや一般市民から見放されるようになったとレポートしている。
「胡錦涛政権が対日重視にシフトしはじめた」というのはにわかには信じられないが、4月の反日デモ騒動以降、中国政府が極端な反日活動にブレーキをかけているのは間違いない。
福島レポーターの最後の一行が効いている。
産経新聞(2005年11月19日付朝刊)より
さまよえる中国「憤青」
反日・・・一般市民からも批判
四月の反日デモで中核的役割を果たした「憤青(怒れる若者)」と呼ばれる憂国民族主義青年のアイデンティが揺らいでいる。
胡錦涛政権が対日重視にシフトしはじめたため、中国メディアは過激な憤青を批判、一般市民からも過激で狭量な社会不適合者として非難の対象になっているからだ。
反日を声高に叫びー国の英雄であったはずの彼らはすっかり肩身がせまくなり、"改宗"する例も少なくないようだ。
「病なのか、疲れたのか、それとも愚かだったのか」
「おれは今小声で自分にいいきかせる。もう終わりだ、この穴の中で十分に考えた、岸にあがってもう一度話そう」
「おれはもう憤青ではない」・・・。
中国のネット上では「茫然たる憤青」「憤青の独り言」などと、自分のかつての言動を自嘲するかのようなブログが秋ごろから目につくようになった。
憤青とは、1960年代の米国のヒッピーに代表される既存権力や社会に反逆する若者の概念だが、中国では90年代に台頭してきた反米反日の民族主義青年のことを指す。特に日中関係が冷え込んだここ数年は、インターネットで活動する反日青年が憤青を代表していた。
しかし民族の誇りを体現していた彼らも4月の反日デモ以降、中国の対外イメージを傷つけたとして市民から批判されるようになってきた。ネット上では"憤青是非論"が展開され「愛国ではなく単なる亡国の徒」「国際問題の複雑性への理解が乏しく表面的な問題しか見ない低レベルの愛国主義によって憤青の名がおとしめられた」といった批判の方が優勢だ。
さらに最近は中国メディアが相次いで憤青批判姿勢を示している。新華社系時事週刊誌「瞭望東方週刊」(3日発行)は特集で憤青が「糞青」と呼ばれるなど侮辱の対象に陥っている状況を解説、今年上半期に不買運動を呼びかけていた青年が、その後日本への理解を深め、今は中国が学ぶべき価値が多くある国としてブログで日本を紹介している例など挙げつつ、憤青の"改宗"を促す内容となっている。
南方都市報(13日付)は憤青を「中国脅威論に根拠を与える行動をした」「国家の公益、社会発展を考えず、怒りをぶちまけるだけ。自らバランスのとれた精神と自信が欠如していることを露呈している」とする厳しいコラムを掲載。またハリウッド映画「SAYURI」で芸者を演じた中国人女優チャン・ツィーを国辱と騒ぎ始めた憤青に対しては、中国新聞週刊などが「日本文化への無知」と批判した。旭日旗ファッションで女優・趙薇が大バッシングされた2001年のころとメディアの立ち位置は大きく変わった。
もともと反日デモにソニーのビデオを携帯するような矛盾をかかえる憤青は、世論の支持を失った時点で存在意義を見失ってしまう。中国のメディア統制問題などに詳しい焦国標・元北京大学助教授は「彼らは中国の偏った教育と情報統制の結果、深い思想もないまま反日に走らされ見限られるかわいそうな存在」と同情を寄せる。さまよえる憤青はこのまま消滅するのか。
その前に、本当の怒りを向けるべき対象は何なのか気づいでほしいところだが。
(北京 福島香織)
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