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リベラル報道に騙されるな
日米を問わずメディアはリベラル一色に染まっている。
米国では比較的保守系のウオールストリート・ジャーナル、ワシントン・タイムズ、FOXテレビなどがある。
それに対して、リベラル系メディアはニューヨーク・タイムズを筆頭にワシントンポスト、ロサンゼルス・タイムズ、CBSテレビ、CNNテレビなどがある。
リベラル系メディアは当然のことながら、共和党のブッシュ政権に対して批判的だ。
古森義久氏は保守党のブッシュ政権を軸とした日米同盟の強化が互いの国の利益にとって重要だと結んでいる。
迷えるブッシュ外交?
アメリカは大丈夫か
リベラル傾斜、反保守の偏った情報が流入し奇妙な反米認識が日本に定着するのは危険だ。
(古森義久 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員)
リベラルの悲観的思い込み
民主党寄りのリベラル紙、ニューヨーク・タイムズの常連コラムニストのポプ・ハーバート、ポール・クルーグマン、モーリン・ダウドというベテラン筆者たちの猛烈なブッシュ叩きは実に徹底している。
「ブッシュ大統領やチェイニー副大統領の金持ち優先の残酷で愚かな政策」とかブッシュ大統領の黒人蔑視、キリスト教の独善的信仰」というふうな切捨ての記述がこれら民主党支持のコラムニストたちの記事にはどれにも満ち満ちている。
マスコミ全体としてはなお民主党、リベラル寄りの傾向がまだ圧倒的に強い。しかもりベラル寄りマスコミの保守叩きは保守寄りマスコミのリベラル叩きにくらべれば、何段階も上の激しさでだ。そのうえにアメリカの学界や映画界は大手マスコミに輪をかけて、民主党支持が多い。
法曹界も同様だといえる。
一方、日本のマスコミでも、学者でも、アメリカの報道や研究では伝統的に
ニューヨーク・タイムズ的なマスコミとエズラ・ポーゲル、ジョン・ダワー的な学者らに頼る傾向が強い。
ポーゲル、ダワー両氏はいうまでもなく日本でよく知られたアメリカ側の学者であり、米側の基準でも明確なリベラル派だ。だからその結果、日本側でのアメリカの報道や考察はどうしてもリベラル傾斜、反保守のプリズムが強くなる。評論でも自然と反ブッシュのカーブがつきがち、というわけだ。
イラク情勢にしてもこューヨ−ク・タイムズの報道だけを読んでいれば、普通の人間ならばまず国民議会選挙や憲法草案国民投票が円滑に実施されるはずがないと信じこむだろう。
ところがイラクでは現実に選挙も投票も円滑に実施されたのだ。
悲観的な先入観を抱かされた側にとっては、イラクの民主主義プロセスの前進はとてつもないおどろき、ということになってしまうわけである。
メディアが作る「反ブッシュ」
ただしアメリカの一般国民はこのへんの真実は意外にきちんと認識しているようだ。
(ここで『カトリーナ』対応に関するブッシュ大統領の支持率が高い世論調査結果を紹介)
アメリ国民一般はこの種の自然災害への対応では連邦政府よりも地方政府機関に依存し、期待する傾向が強いことを裏づけたのだった。
こういう実例は、アメリカをみる際に、ニューヨーク・タイムズに象徴される民主党リベラルのマスコミにあまり影響されと、現実を歪んで受け取ってしまうという危険を明示している。
アメリカからの情報の特殊な屈折の危険でもあり、リベラルの大手マスコミを無条件に信じることにともなう危険だともいえる。
日米同盟強化路線は不変
しかし重要なのはそこから先をどう読むかである。プッシュ政権の一時的な苦境を「アメリカ全休の凋落」とか「超大国の転落」などと断ずるのは、明らかに過剰反応である。
今の苦境のほとんどは 左党、リベラル派の攻勢、攻撃にたじたじという部分と、保守派内部の混乱という部分、そして天災の偶然のタイミングによる災禍という部分なのだといえよう。
またたとえブッシュ政権全体の機能が低下したとしても、アメリカの国家機能は健在である。経済はまだまだ好調だし、世界無敵の軍事カも強固に抑止の役割を果たしている。
一方、イラク政策へのアメリカ国内の批判が高まっていることも事実である。
この夏は自分の息子をイラク戦争で失ったという女性シンディ・シーハンさんがブッシュ大統領のテキサスの休暇先近くに座りこみ、「イラクでの米軍の戦闘行動に反対!」と叫んで、内外の注視を集めた。
だがこの種の「反戦運動の母」に対抗して、息子4人がすべてイラク軍務に志願した米軍将兵だというアイダホ州のタミー・ブルーイットさんらが「イラク作戦支援の母」として全米的にブッシュ政権支持の運動を展開したことは、あまり大きくは報じられない。
シーハンさんが次期の民主党大統領候補と目されるヒラリー・クリントン上院議員に面会して「イラクからの米軍全面即時撤退」をアピールしたところ、「それはあまりに危険で無責任な措置だ」と反対されたことも、ほとんど伝えられなかった。
このへんは冒頭で触れた「アメリカの読み方」にまたつながっていく。アメリカのどの部分を重点にみて、全体像を語るのか。半分だけ水が入ったコップの空の部分をみるのか、水の部分をみるのか。いまのイラク政策にいろいろ欠陥はあるにせよ、イラクの民主化が本格的な軌道に乗るまでは治安の維持は米軍の責務だとする選択肢へのアメリカ国内の支持はまだまだ強固である。しかしこの実態もシーハンさんの反戦抗議だけを拡大してみていれば、視野には入ってこないこととなる。
だがそれでもイラクの民主化という大課題への取り組みのために、いまのアメリカが北朝鮮の核兵器開発や中国の軍事力大増強という他の国際課題に熱意を注げないという傾向も、かなりの程度、事実ではあろう。当面の最大課題はなんといってもイラクなのだ。ただし日本にとって注視すべきなのは、ブッシュ政権の対外戦略でのこの偏りが逆に日本との同盟関係への依存を高めるという効果である。
最近のワシントンではイラク情勢への注目と同時に、中国のアジアや中南米、アフリカなどでの勢力拡大が活発な議論のテーマとなってきた。「中国のグローバルな台頭」「中国の中南米への進出」が論じられ、アメリカの対抗措置が語られるのだ。そんなプロセスではプッシュ政権の従来からの対日安保関係の重視の姿勢が繰り返し強調される。
いまの日米関係では沖縄の米軍基地移転の問題やアメリカ産牛肉の日本への輸入禁止の問題が新聞の見出しをにぎわす。合意よりも対立や摩擦が大きく取り上げられる。しかしブッシュ政権の対外戦略の基本部分では日本との同盟の強化という柱がまったく揺らいでおらず、その柱の比重はむしろ高くなっている事実は、日本側としても、あるがままに認めておくべきだろう。
もちろんプッシュ政権の側ではその対日関係重視の政策が自国の利益に資するからという単純な理由からだけであっても、いまの日本にとってはその政策への協調がこれまた自国の利益になる。
そうした実利に基づく冷徹な計算が同盟堅持策を支えるのだと考えればよいのである。
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