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《知らなんだシリーズ 11》
サミットで存在感示した安倍首相
マスコミはほとんど報道しなかったが、安倍首相がハイリゲンダム・サミットでこんなに活躍していたとは知らなんだ。
チャイナリスクが叫ばれてから久しいが、ここ2−3年にやってきそうだ。
そのインパクトは中国自身は勿論のこと、日本や近隣アジア諸国、世界へと広がっていくに違いない。
しかし、何しろ一党独裁の国のことだ、なんとか国際ルールに従わせて中国の暴走を食い止めなければならない。
安倍首相は環境保全、知的財産権の遵守に向けてサミットで中国はもとより、米国、インドにも積極的に働きかけ、枠組みを作ることに寄与したという。
野党、マスコミは安倍首相のサミット報告を「自画自賛だ」と一笑に附したが、過去の国際会議でこれほど日本の存在感を示した首相はいただろうか?
いささか古い記事だがご紹介する。
産経新聞(2007年6月10日)
円、ドル、人民元 通貨で読む世界
中国の暴走抑制に道筋
頻発する海外での中国製食品の有害物質混入の露見は、歯止めがかからない環境破壊と同じように、共産党官僚による13億人の統治システムが限界にきていることを暗示している。
水や空気に加え食の安全確保は政治の基本なのだが、それを実現できないなら、体制が独裁的であろうと民主的であろうと政治支配者の正当性が問われる。
北京指導部はそんな危機感を持っているのだろうが打つ手は相変わらず、中国の古いことわざにある通り「殺鶏嚇喉」(鶏を殺して、猿を脅かす)。だが、責任者だった国家食品薬品監督管理局の前局長を収賄罪で死刑にしようと、事態が改善するかどうか党中央のスーパーエリートですら不安にさいなまれている。
知り合いの北京の教育官僚は一切外食しない。
昼食も30分以上かけて自宅にもどってとる。奥さんが厳選した安全な食材を料理する。家族をごっそり東京に移住させ、本人には逆単身赴任の北京エリートもいる。
チャイナ・リスクとは予測がつかないことにある。
古代中国の思想家、荘子の格言「成即毀(成れば壊れる)」は中国史そのものである。今の2けた成長の裏側をみれば、明らかに分裂、崩壊の危機の芽が多岐にわたって膨らんでいる。
その危機がいっどこでどんな形に展開するのか、判断材料すらない。
市場も環境もグローバル化した今、このリスクは中国に暮らす人々のみならず、日本など近隣アジアさらに全世界を襲う。少なくても民主政治で、司法、立法、行政が分立し、幅広く多様な有権者の意見が政治に反映するなら、政治の先行きは予測できる可能性が高いが、北京では政治改革の動きすら封じられている。
チャイナ・リスクをどう管理するか、という観点で考えると、今回の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)で果たした日本の役割には意義がある。
安安倍晋三首相は渋るブッシュ大統領を説得し、米国に日本、欧州、カナダの合意を尊重し、長期的な目標を設定することを受け入れさせた。
この合意をもとに米国と並んで中国、インドなど京都議定書に参加していない世界の二酸化炭素(C02)排出量の4割以上を占める主要排出国が参加できる枠組みをつくる道筋を付けた。
さらにサミットでは安倍首相の呼びかけで、知的財産保護の分野で模倣品や海賊版対策に関する多国間の枠組みを定めた新条約締結に向け、議論を加速させることでも一致した。
中国関連合意は環境、知的財産権と分野が限定されているが、国際的なルールの枠組みの中に中国を引き込み、いわば多国的な「外圧」により、中国の暴走を抑えてゆく。日本、欧州、ロシアとも同意できたこと自身が、中国に対する強力なメッセージになる。特定国による外圧はナショナリズムからくる反発を呼ぶが、多国間の枠組みによる強制力は、「国際社会との調和」をめざす中国の指導部にとっても受け入れやすいはずだ。
1990年代末、当時の朱鎔基首相は界貿易機関(WTO)加に際し、国際的なルールいう大義を使って国有企改革を断行した。
安倍首の活躍を演出した日本外務省が中国を国際的な枠組に追い込む意図を露骨に示すことは対中外交上まずいだろうが、サミットはこから日本がとるべき対中戦略の先駆けになった。 (編集委員 田村秀男)
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