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中国で河川の汚染や炭鉱事故が相次いでいることを巡って、一部の新聞が「当局の情報隠し」などと告発する報道を展開している。これに対し、共産党中央“言論統制”を強化するケースが目立っている。ある中央紙は「(当局と地方紙の)どっちが本当か」の見出しまで使ってカドミウム汚染事故を報道した。これは報道機関が当局糾弾に立ち上がった姿といえる。
「政府批判」“政府批判”とも取れる新聞報道は、これまでの中国では考えられない現象だ。調査報道を敢行している姿を「広がる独自報道」(朝日12月31日付)「独自色強めるメディア」(毎日、同日付)と書いている。それなら、一党独裁の報道統制下にある中国の報道機関が「報道の本来の姿」を目指し始めた兆候と見てよいのか、注目される。 これに対して胡錦濤政権側は「情報公開は党中央の方針」としているものの、「報道機関は党、国家の政策に奉仕すべき存在」の姿勢を堅持、各種の管理規則を新設して規制を強化している。 昨年、大きく扱われた例としては11月13日に発生した「松花江の汚染事故」。全国紙の新京報や中国青年報などが当局の「公表遅れ」「情報隠し」を追及、朝日新聞は「中国メディア、異例の政府批判」(12月1日付)と報じた。その後、共産党宣伝部が取材中止を指示、国営新華社通信の原稿のみを使うように求め、各メディアが従った経緯がある。 「政府批判記事」を後押しする形で積極的に展開しているのは香港紙。12月中旬、広東省北江で発生したカドミウム汚染の際は香港紙「太陽報」が「当局、また、情報隠し」と。 「編集幹部の更迭」中央紙、地方紙の編集局長ら幹部が更迭されるケースも相次いでいる。12月28日には独自報道で人気の大衆紙「新京報」の編集局長、局次長2人の幹部3人が更迭された。6月の河北省定州市での土地収用に抗議した住民6人が暴徒に殺害された事件のスクープ、“無許可”の追跡報道など独自の報道姿勢が更迭の理由とされている。これに不満な記者らが29日、職場放棄し、抗議した。 また、30日には香港紙「明報」が広東省の大衆紙「南方都市報」の編集局次長が“炭鉱事故を大きく扱った”などの理由で更迭されたと報じた。 (その後、新京報の編集局次長の一人は復帰し、同紙は発行を続けているという) 「一連の動きは何を意味するか」これら“メディアの反乱”が何を意味するのか。中国のマスコミ人が社会主義下で「報道の自由」に立ち上がったのか。民主化要求の一環なのか。一部では市場経済で、各紙の販売競争激化の中での差別化を目指す一端との見方もあるが、それだけでは説得力がない。 貧富の格差が広がっている中で、水質汚染などの公害、炭鉱事故、不評の土地収用などが多発、特に農村で不満が充満しているという。そんな時、市民側に立とうとするメディアの当局批判は“火に油を注ぐ”行為と政権側には映っているのだ。 国内の安定、混乱を避けることが最大課題の党中央にとっては「限度を超えている」として強行姿勢に出ているとも言える。全国紙の北京特派員経験者によると「土俵(共産党の方針)を越えたら規制するということ」と解説した。 そんな鬩(せめぎ)合いが、このままで推移するのか、双方が一線を越える時が危ぶまれる。 危機回避のための舵取りは難しい。 (園木 宏志) |
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