メディア・レボリューション

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 06年、年明けの韓国は平和と繁栄を謳歌している。今年の実質経済成長率は5%超と予想されている。昨年、 51.2%も急騰した株価は、更なる上昇が期待されている。休日のソウルの繁華街はブランド物で着飾った若い女性や、2〜3人の子どもを伴った家族連れで賑わっている。東京都心から、たった2時間のフライトでソウルの街にやってきて、最初に気付くのは、群衆の平均年齢が若いことと、子供の数が多いこと。「日本も、30年前には、こんな勢いがあったのだ」という感慨が筆者の胸をよぎった。
 政治家、企業家、知識人、一般市民、誰の話を聞いてもはっきり読み取れるのは、大部分の韓国人が、そう遠くない将来、朝鮮半島の統一は実現すると信じていることである。すでに、ビジネスマンが投資案件を含めて商談に北朝鮮を訪問するのは日常茶飯事になっているし、ソウルの高速バスターミナルからは、毎日、北朝鮮の多くの観光地行きのバスが出発している。もちろん、今日でも、北緯38度線近い「休戦ライン」によって、朝鮮半島は南北に分断されているのだが、韓国各地を歩いても、「北朝鮮と軍事的に対峙している」という緊張感はまったく感じられない。きな臭さが少しでも鼻をつくのは、「うちの息子は、いま、徴兵で学業を中断し、中部の陸軍基地で訓練に励んでいます」という親たちの話を聞かされる時くらいだ。金大中・前大統領以来の「太陽政策」は完全に定着している。
 この平和の象徴的存在が、休戦ラインの南北に設けられている非武装地帯から僅か南へ10キロ弱の都市、パジュ(坡州)である。地理的にはソウルの郊外といってもいい位置にあるのだから首都の拡大とともに発展してもおかしくなかった。ところが、朝鮮戦争の休戦協定が締結された1953年以来、もし、北朝鮮軍がソウルに向かって侵攻したら、最初に破壊される都市として、官民とも大規模投資をしようとしなかった。そのパジュが03年から大変貌し始めたのである。それまでは人口の大部分は軍人とその家族が中心だったが、03年からは文民人口が15万人から30万人に倍増したのである。
 変貌の原動力は工場の進出と、それに伴う住宅の建設ラッシュである。たとえば、ヨーロッパ連合(EU)の主力工レクトロニクス・メーカー、フィリップス社は韓国の大手電器メーカーLG社と合弁で50億ドルを投資し、液晶ディスプレイ工場を建設した。フィリップス社は、投資をさらに拡大する計画を持っており、その理由について、同社の関係者は「朝鮮半島の情勢を勘案すると、パジュは、もう危険な地域ではない。また、ソウル市の南側の郊外に比べて地価が安く、コスト的にも有利だ」と説明している。
 パジュ市当局は、人口の更なる増加と将来の地域発展に備えて、ソウルからの道路の8車線への拡張を開始した。08年までにはソウル市地下鉄が延長されることも決定した。市当局はKTX(新幹線)のソウルからの延伸も視野に入れ、幹部はそのためのロビー活動に入っている。
 北朝鮮との緊張緩和に伴う地域発展は、パジュ市に限らず、ソウル市をドーナッツ状に取り囲む京畿道の北部一帯に及んでいる。現在、非武装地帯の南端から25キロ以内の地域に3つの大工業団地と1つの新都市(人口規模は15万人)の建設計画が進み、いくつかのテーマパークや芸術村も今後数年間のうちに着工する。

 このように休戦ライン付近の地域の様相が一変する一方で、冷戦時そのままなのが「板門店ツアー」である。大方がソウル都心からの日帰りツアーだが、規則、規則で縛り上げられていて、自由がまったくない。
 まず、服装は「国連軍の威厳を保持するのに適切な私服」でなくてはならない。具体的には良くわからないが、夏季、Tシャツ、ショートパンツ、サンダル履きなどは「ご法度」のようだ。次に、極端な団体行動が要求される。乗っている国連軍バスごとにつくられるグループの列から3メートル後れると、監視の兵士かバスガイドから叱責の声が飛ぶ。極端なのは行動制限だ。北朝鮮兵士と話したり、親しくしてはならないだけでなく、遠くから呼びかける、手を振る、笑いかける、指さすことも禁止である。さらに、「上着の内懐に手を入れてはいけない」「北朝鮮側に背を向けて帰る際、振り返ってはいけない」に至っては理解不能の領域に入る。
 これらの禁止事項がソウルからのバスの中や国連軍施設での説明会で繰り返され、指示を厳守することを約束する誓約書にサインさせられる。「禁止集」の目的は「北朝鮮側に対して宣伝に利用する材料を与えないため」のようだが、緊張緩和が現実になった今日、この目的そのものが冷戦思考で、時代錯誤に思える。「板門店ツアー」は退職軍人団体の関連会社によって運行されているものが多いようである。したがって、国連軍(実質は韓国軍)の意向を忠実に反映しているのだろうが、ツアーに参加した韓国の若者たちも違和感を覚えるのではないだろうか。
 もう一つ、興味深かったのは、中年女性のバスガイドが板門店について説明する際、板門店そのものや朝鮮戦争について語るだけでなく、日本による植民地支配、第2次大戦と連合国による戦後処理にまで言及したことである。たぶん、彼女の説明の狙いは、朝鮮半島と朝鮮民族は大国による領土争奪戦の犠牲者であることをツアー参加者に認識させる点にあったのだろう。それにしても、彼女は、大半が若者だった日本客を前にして、韓国流解釈による世界現代史を30分近く語り続けた。彼女の行動は、今日の韓国に広がっているナショナリズムと、どこかで繫がっているのかもしれない。
(早房 長治)

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柳美里「8月の果て」をたまたま読んでいたので、韓国が南北統一されるなら、喜ばしいことだと思います。このバスガイドが「朝鮮半島と朝鮮民族は大国による領土争奪戦の犠牲者であることをツアー参加者に認識させる」のも、日本の原爆被害者がその悲惨な体験を語るのと同じ行為だと思います。大国に振り回されるのは、悲劇です。国民があるべき国の将来を考え、実現出来る国力と人的資材を充実させることが、民主主義、資本主義の「自立した大人」の国になる条件なのではないでしょうか。

2006/1/29(日) 午後 1:43 [ - ]

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韓国人にはまだ、政治権力が創造した神話としてのヒストリーを批判意識を持って自己検証できるほど市民の自立度が成熟していません。教科書問題や“歴史認識”に言動を見れば明らかでしょう。権力の提供する神話に対して疑問を持つことが許されない社会に民主主義は成り立ちませんよ。

2006/1/29(日) 午後 6:05 [ han*e*noio*i ]

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不思議で仕方ないのですが、あの金正日率いる北朝鮮と統一なんてあるのですかね?あの国は相当なしたたかな国ですし、どうも安直に不戦平和に酔いすぎているような気がします。まあ、そのまま統一することはそれで良いことだと思いますが、どうなのでしょう?

2006/2/4(土) 午後 4:07 kabunta2003


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