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戦後最大の疑獄といわれたロッキード事件とは、何だったのか。元首相逮捕が、その後の政治に与えた影響、特捜検察の存在意義、事件に関わった人物たちの人間模様、30年の歳月を経て、いま問われるべきものは何か、などの視点から、取材を担当した記者が、個人的感想も含めて「ロッキード体験」を伝える。連日、掲載する全10回のシリーズです。 第2回 「負の国策捜査」 個人的な話だが、90年代後半の数年間、住専の不良債権回収を担当した弁護士、中坊公平さんに密着して取材した時期があった。預金保険機構は、中坊さんが社長を務めた整理回収機構(RCC)の上部機関であり、国民的課題解決のため、いわば二人三脚の関係だった。当時、この取材に関連して、松田さんにロッキード捜査当時の話を再確認した。 7月27日朝。検察合同庁舎に向かう車の中で、横に座った元首相が煙草に火を着けようとしてマッチを擦った際、火が大型のマッチ箱に燃え移り、危うくやけどをするところだった。庁舎に入って調べが一段落しトイレで一緒になった時、ハンカチを持っていなかった元首相に、用意していたハンカチを貸した。8月17日に釈放された後、元首相はハンカチ2枚を返してきたが、松田さんは洗濯された1枚だけを受け取った――。 よく知られたエピソードだが、実際に体験した松田さんから聞いた話の記憶は生々しい。だが、松田さんが「ミスター検察」と呼ばれた背景には、初期の重要な捜査過程がある。それは、米上院多国籍企業小委員会で事件の構図が明るみに出た時、疑惑の人物として最初に名前があがった右翼の大物、児玉誉士夫氏(故人)の取調べを任されたからだった。 事件は、日本時間で1976年2月5日に始まった。米議会の証言で明らかにされた事実を受けて、第一報は「児玉がロッキード社から708万5千ドル(約21億円)を受け取った」という衝撃的な内容だった。メディアの取材はこの「秘密代理人」を追うことから始まり、脳血栓の後遺症で自宅にいた焦点の人物を、松田検事が本格的に取り調べたのは、3月4日が最初だった。 そのころ、最も重大な疑惑として指摘されていたのは、全日空が購入したトライスターをめぐる贈収賄容疑ではなく、防衛庁の次期対潜哨戒機(PXL)などの選定経過だった。「秘密代理人」の過去には、FXなど戦闘機売込み商戦で暗躍した疑惑が色濃くつきまとっていた。松田さんが臨床取調べを進めていた児玉邸に、主任検事の吉永祐介さんもひそかに訪れたという。 しかし、「児玉ルート」捜査は、本人の病気などが壁になり、脱税などによる起訴にとどまった。結局、国家政策の中枢には切り込まず、民間機売込みを主な対象として切り取られた事件の構図。元首相逮捕の成果は高く評価されるが、最近流行の「国策捜査」の用語を借りれば、「児玉ルート」解明の不完全燃焼は、ある意味で「負の国策捜査」だったかもしれない。30年が経って、この謎はいまも拭えない。(高尾義彦=寄稿) 【司法ジャーナリスト・高尾義彦】1945年徳島県生まれ。東大文学部卒。毎日新聞司法キャップ、編集局次長、紙面審査委員長など歴任。著書に「陽気なピエロたち 田中角栄幻想の現場検証」(社会思想社)「巨悪に挑戦 東京地検特捜部」(エール出版)「中坊公平の 追いつめる」(毎日新聞社)など。 |
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報道関係者の中にも「ロッキード事件」を知らない若い人たちが増えている、という話を聞きました。ロッキード事件は戦後日本の腐敗構造を象徴する贈収賄事件であり、忘れてはならない歴史的事実である、と考えています。30年を機スタートしたこの企画の意義は大変大きいものがあります。今後の展開を楽しみにしています。
2006/2/2(木) 午前 11:58 [ 幽韻 ]
FAXいただき、早速読ましていただいております。ぶんちゃん
2006/2/2(木) 午後 0:33 [ 田口文男 ]
第1回の写真、角栄さんにハンサムで若かりし頃の松田さんが付き添っていますね。最近も時たまお会いしますが、いつも毅然とされて。最近「毅然たる」政治家や官僚になかなかお目にかかれません。
2006/2/2(木) 午後 1:06 [ tam*00*123 ]
ロッキード事件を30年間、風化させずに取り組んでいる「情熱のひと・高尾さん」敬意を表します。楽しみが一つ増えました。
2006/2/2(木) 午後 2:21 [ 苦労人 ]
「30年が経って、この謎はいまも拭えない」。続編を楽しみにしております。
2006/2/2(木) 午後 2:35 [ zenn ]
衰えを知らない、凄まじいまでの記者魂に感服します。真実はなんであったのか? 最後まで楽しみです。
2006/2/2(木) 午後 5:42 [ みずけい ]
PXLですよね。闇の解明にまで踏み込めず、本当に残念だった。さらなる展開をよろしく。
2006/2/2(木) 午後 7:41 [ 犬吠埼 ]
私もロッキード事件を知らない世代です。これを機に、しっかり勉強しますので、第三回を期待して待っています。
2006/2/2(木) 午後 8:12 [ aki*wa ]
人は過去からしか学ぶことはできない。でもジャーナリズム界にもそう思っている人がおられたとは。とてもうれしいです。
2006/2/2(木) 午後 8:45 [ TK ]
こんにちは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
トライスター導入時の「昔の広告」をとりあげています。
よかったら、寄ってみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611
2007/10/19(金) 午後 4:28 [ kemukemu ]