――民営化論議では、関西、中部国際と一緒になる一体化論もありました。反対された理由は何ですか。
黒野: 離れたところにある三つの空港を一つにしてもいいことはありません。
三空港一体化論には成田の上がりを他に向けて救済するねらいもありました。
この構想は旧道路公団と同じように、空港運営と施設を分ける上下分離論でしたが、何よりも安全が大切な空港には向かないと主張したのは正しかったと思っています。
――成田国際空港会社はどれぐらいの営業規模を持つ会社ですか。また、成田空港はいま国際的に見てどの位置にありますか。
黒野: 売り上げでいうとグループ全体の04年度実績が1,715億円。大きすぎる規模ではありません。
収益の内訳は、着陸料621億(38%)旅客施設利用料259億(16%)給油施設料216億(13%)事務所・カウンター賃料213(13%)構内営業料126億(8%)施設・空調料116億(7%)など。航空関係が60%以上、設備その他が30%台となります。
初年度から子会社20社を連結して決算、減損会計を取り入れたので特損も出ましたが、税引き後で64億円の当期利益を出したのは上出来だと思います。
05年度収益は、去年10月から念願の着陸料引き下げをしたので前年を下回るでしょう。それでも他部門が頑張っており、減価償却も減るので当期利益は逆に倍増し150億円程度になる見込みです。
現在の成田空港は、36ヶ国2地域の69社が乗り入れて一日平均515便、年間では18万8千回の発着があります。昨年の旅客数は3,155万人、扱い貨物は230万トンでした。
旅客数ではロンドン、パリには及ばないものの世界八位、貨物は香港に次いで世界二位です。特に貨物は付加価値の高い製品が多いので輸出10兆6千億、輸入10兆9千億円もあります。これは二位の名古屋港を引き離して日本一の貿易港です。
―― 民営化の成果は出始めているのでしょうか。
黒野: 勿論です。世界一高かった着陸料を引き下げたのも民営化のおかげで出来たことです。騒音レベル制を採用して平均で21%、機体によっては一回20万円も下げましたが、公団のままなら、国の財政問題があって絶対に無理だったでしょう。経理的にはやせ我慢ですが、世界の空港と張り合って行くには避けられないことです。
社員がコスト意識に目覚めたことも成果です。昨年電機工事で官製談合が摘発されたのを教訓に指名競争入札をすべてやめました。競争入札で上位三社の価格交渉方式にしたところ、15〜20%も安く契約できました。
新規事業の提案も盛んになり、子会社による両替店やペットホテルが実現した。
空港利用者の満足度を上げるため、CSアワード(報賞)も設けました。
旅行者がホテルに忘れたパスポートを取りに行ったり、なくした鞄を見つけ出した空港スタッフをCS協議会が定期的に表彰します。
空港全体にお客様本位の意識が徹底するようになったと自負しています。
―― これからの課題は何ですか。どう取り組みますか。
黒野: 六月にオープンする第一ターミナルの免税ブランドモールに社運をかけます。南ウィングの三階出国エリアに3,500平方メートル、国内最大の免税店街を誕生させ、エルメス、フェラガモ、コーチなど有名ブランド九店と時計、化粧品・香水、電機製品の専門店が並びます。街全体を和風で統一して「ナリタ・ナカミセ」と名付けました。テナント方式ではなく、JAL、ANAなどと当社が個別につくった関連会社が経営に当たります。
非航空部門の収益アップを図るために、これは成功させなければなりません。
「遠、狭、高」の三悪で最後に残った「遠い」を解決するために日暮里−空港間の成田新高速鉄道を早く開通しなければならない。いま途中まで来ている北総線を空港まで延伸するもので2010年には36分で結ばれます。当社はこのために328億円を負担します。
平行滑走路の完全整備も課題です。今年秋には北側に伸ばす工事を始めますが、利便性の解決にはなりません。航空会社が使いやすい空港を提供する義務があります。南側に住んでいる反対農家にご理解いただく努力を続けるため、当初07年と考えた株式上場の時期を遅らせることもあるでしょう。
――今日はお忙しいところをありがとうございます。
(桑折 勇一=寄稿)