メディア・レボリューション

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 戦後最大の疑獄といわれたロッキード事件とは、何だったのか。元首相逮捕が、その後の政治に与えた影響、特捜検察の存在意義、事件に関わった人物たちの人間模様、30年の歳月を経て、いま問われるべきものは何か、などの視点から、取材を担当した記者が、個人的感想も含めて「ロッキード体験」を伝える。連日、掲載する全10回のシリーズです。


第5回 「元日の田中邸」

イメージ 1 日本でロッキード事件が表面化してからちょうど30年目の2月5日朝、目白の田中邸を見に行った。田中金脈事件が1974年に厳しく批判されて以来、高い塀をめぐらした広壮な邸宅は、「田中的なもの」の象徴となってきた。

 筆者にとっては、元日にここを訪れる政財官界の人脈観察が、政治倫理確立などの「理想」と、権力闘争に明け暮れる「現実」との、埋めがたい落差を測る格好の手法の一つとなっていた時期がある。

 元日に初めて門前に立って取材したのは、81年だった。田中角栄元首相逮捕から5年目のことで、社会部記者としての持ち場は、その前年に「司法」から「遊軍」に変わっていた。大平正芳首相の急死で、鈴木善幸首相に政権は交代していた。元首相はその背後にあって、「闇将軍」「キングメーカー」と呼ばれていた時代だった。

 それから14年間、元首相死去直後の94年まで、元日には必ず早朝からここに立って、出入りする年始客たちの取材を重ねた(詳しくは拙著「陽気なピエロたち 田中角栄幻想の現場検証」)。
 
 逮捕翌年の正月、田中邸を訪れる客は少なく、元首相は将棋を指したりしながら時を過ごしていたという。しかし、次の年から次第に年始の客は増え、「刑事被告人」であることなどお構いなしに、ご機嫌をうかがう客たちが増えていった。

 近所の区会議員グループや就職、進学、結婚などで世話になった人たちはともかく、政財官のリーダーたちが、壮大な疑獄への反省もなく、元首相の「無罪」主張に寄りかかって、現実的な利益を優先させようとしている。こんな思いが胸にわだかまって、一人一人の名前を確認し、公人であれば理由を聞き、門前の風景を読者に伝えることがメディアの責務、と毎年、自分に言い聞かせてきた。
 
 訪問客は、元首相が病気で倒れて以降、次第に減ってゆくのだが、かなり長い期間にわたって、日本の政治は「刑事被告人」とそれをかつぐ人脈によって左右されてきた。こうした政治が、現実的な利益を第一に考える風潮を生み出した責任は軽くない。元首相の魅力的な人間性を否定するものではないが、ことあるたびにささやかれる「角さん待望論」には組みしたくない。
 
 鯉が泳ぐ池などで知られた豪邸は、一部が国税当局に物納されるなど昔日の面影はない。もうここに立つことはないだろうと思ってからでも10数年が過ぎた。その間にも、さまざまな事件が手を変え品を変えて社会を騒がせている現実は、見るに忍びない。(高尾 義彦=寄稿)


【司法ジャーナリスト・高尾 義彦】1945年徳島県生まれ。東大文学部卒。毎日新聞司法キャップ、編集局次長、紙面審査委員長など歴任。著書に「陽気なピエロたち 田中角栄幻想の現場検証」(社会思想社)「巨悪に挑戦 東京地検特捜部」(エール出版)「中坊公平の 追いつめる」(毎日新聞社)など。


「ロッキード30年報告」書庫の記事一覧

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田中角栄に何かしら共通するライブドアのホリエモン、2人とも栄光と挫折が表裏の紙芝居の主役です。性善説のフィルターにかけて見た彼らには幼児のようなあどけなさが......人を罰する空しさが残ります。嗚呼

2006/2/5(日) 午後 8:03 [ みちこ ]

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追伸: 吹雪の北国、直江津より晴れの国、岡山に帰り着いてまもなくの投稿でした。駅から我が家へは、靴底のこすれる音を立てながらの行軍、靴底の引っかかるアスファルト路面がこんなにありがたいとは。だからでしょうか、毒されていない善良な新潟の人たちには負い目を感じます。

2006/2/5(日) 午後 8:43 [ みちこ ]

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初めてコメントします。20代会社員です。自分の生まれる前の、自分にとっては歴史の1ページで何があったのか、毎日わくわくしながら読んでます。事件についてを知られるだけでなく、記者が何を考え伝えているのかが感じられることで、新聞に対する見方も少し変わりました。色とりどりなブログの中にあるモノトーンな色調の記事。重みがあります。今日、30年目のこの日も高尾さんは田中邸に行かれたのでしょうか?そして何を思われたのでしょうか?

2006/2/5(日) 午後 8:49 [ ロッキード未体験世代 ]

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高尾さん、これほど事件の本質を捉え真実を伝えてもらったのに、この30年私達日本人は何をしてきたのでしょうね。報道を見聞きするだけでなく個々の考えを確立していかなくてはいけないのに・・期待しております

2006/2/5(日) 午後 8:56 [ じゅんじゅん ]

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14年間元旦に目白に通ったという話はまさに記者魂と正義感ですね。感激しました。小泉さんはいろいろ言われますが、この田中的なものを排したというだけでも大きく評価すべきと思います。

2006/2/6(月) 午前 11:06 [ tam*00*123 ]

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ホリエモンと角栄をいっしょにしたらいかんよ。次元が全然ちがう。角栄は日本の政治の歴史を変えようとした功労者だ。大和朝廷以来の官僚政治から、本当の民主主義政治を行おうとした。金権?何が悪いの?自由社会の民主主義の政治は経済、即ち「金」で動くのは当然でしょ。それとも旧ソビエトのように冷たい官僚社会にでもなりたいの?その証拠に角栄亡き後、官僚たちは悪いことし放題。それでいて、たっぷり給料ボーナスをもらい、老後は遊んで暮らす退職金もたっぷりもらう。天下り先も用意されている。…私は角栄亡き後から急に政治が悪くなったようにと思う。―角栄の再来を待望す!

2008/1/29(火) 午後 0:34 [ - ]


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