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戦後最大の疑獄といわれたロッキード事件とは、何だったのか。元首相逮捕が、その後の政治に与えた影響、特捜検察の存在意義、事件に関わった人物たちの人間模様、30年の歳月を経て、いま問われるべきものは何か、などの視点から、取材を担当した記者が、個人的感想も含めて「ロッキード体験」を伝える。連日、掲載する全10回のシリーズです。 第7回 「車椅子の田中元首相」 元首相は前年2月に脳梗塞で倒れ、自宅でリハビリ中だった。広大な田中邸にガードされて、その姿を外部に見せることはなく、かつてのキングメーカーがどのような病状にあるのか、政界でも正確には知られていなかった。「田中曽根内閣」といわれた中曽根政権の時代だった。 倒れてもなお、自民党内に影響力を持つ元首相だが、回復の度合いによって、影響力に陰りが出てくる可能性も否定できない。その意味で、長女の真紀子さんとみられる女性が押す車椅子に座った元首相の写真が政界に与えた衝撃は大きかった。 写真からは、予想以上に重い病状を読み取ることが出来た。車椅子からはみ出したような右足の写真などを見た ヘリコプターから撮影したこの写真をめぐって、私邸での撮影でありプライバシーの侵害に当たるのではないか、との批判もあった。しかし、「公人」として、その存在が日本の政治に影響力を持ち、現に「田中曽根内閣」などと言われている政治状況下での取材であり、掲載の社会的意義は大きい、と判断した。 実は、この取材のきっかけは、筆者も含めロッキード取材を担当した社会部記者3人が、本社地下の飲食店で、ロッキード10周年企画を話し合っている時に、思いついたものだった。「すぐ写真部に頼もう」と店を出たところで、当の写真部のデスクとばったり顔を合わせた。「よしっ、やろう」と双方の息がぴったり合って、翌日には取材班を立ち上げ、決定的なシーンの撮影まで約1週間のスピードだった。 その経過は、山本祐司元社会部長の著書「毎日新聞社会部」(河出書房新社、近刊)に詳しい。山本部長の持論は「いい企画は、しかつめらしい会議ではなく、酒の席で柔らかくなった頭脳から生まれる」というものだった。 元首相の病状はその後回復することはなく、89年10月に引退を表明した。車椅子の写真は日本新聞協会賞を受け、「田中時代」にピリオドを打つ重要な契機となったと、改めて思う。(高尾 義彦=寄稿) 【司法ジャーナリスト・高尾 義彦】1945年徳島県生まれ。東大文学部卒。毎日新聞司法キャップ、編集局次長、紙面審査委員長など歴任。著書に「陽気なピエロたち 田中角栄幻想の現場検証」(社会思想社)「巨悪に挑戦 東京地検特捜部」(エール出版)「中坊公平の 追いつめる」(毎日新聞社)など。 |
ロッキード30年報告
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あの写真は衝撃的でした。「スクープ写真」の裏話、おもしろく読みました。老化現象が進んでいる小生も「頭を柔らかく」し世の中を見つめていきます。
2006/2/7(火) 午後 0:04 [ デジタル人間 ]
今職業倫理を問われる様々な事件を前に、この一枚の写真は、例えトップとしてどのような功績を積み重ねたとしても、一度道を誤れば罰を受けなければならないという現実を見たような気がします。姿勢を正して生きたいと我が身を振り返っています。
2006/2/7(火) 午後 3:13 [ 真実一路 ]