メディア・レボリューション

マスコミ各紙各局のOBや、現役の解説者などからなるニュースブログです。TVや新聞には出てこない「新しい」情報を発信します。

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 戦後最大の疑獄といわれたロッキード事件とは、何だったのか。元首相逮捕が、その後の政治に与えた影響、特捜検察の存在意義、事件に関わった人物たちの人間模様、30年の歳月を経て、いま問われるべきものは何か、などの視点から、取材を担当した記者が、個人的感想も含めて「ロッキード体験」を伝える。連日、掲載する全10回のシリーズです。

第8回 「小佐野賢治社主の暑い部屋」

イメージ 1 ロッキード社の児玉誉士夫・秘密代理人と並び、米側資料で小佐野賢治・国際興業社主の名前が出た時、特捜検事ならずとも、田中元首相との深い関係を思い浮かべた。「刎頚の友」と呼ばれ、直前に表面化した田中金脈事件でも親密な関係が指摘された間柄である。

 しかし、小佐野ルート捜査の結末は、「記憶にございません」と繰り返した国会答弁がすべてを物語っていた。20万ドル受領を否定した議院証言法違反による訴追にとどまり、その向こう側にあったはずの闇の政界工作は、明らかにされなかった。

 小佐野元社主の取材で印象的だったことがいくつかある。公判開始後に、八重洲の国際興業本社に通っていたころの話である。心臓に持病を抱えた元社主は、部屋の暖房を異常なほど強くしていた。「いつ、どこで発作が起きるかもしれないので、ポケットにニトログリセリンと100万円をいつも用意している」と語る言葉が、精力的な風貌にそぐわない。

 社内の一部屋を公判対策の資料室にして、ロッカーには裁判関係の資料がびっしり揃えてあった。ロサンゼルス空港で20万ドルを受領、という起訴事実を否認するため、弁護士を米国に送り込み、徹底して争った。

 その公判対策室で何度か日本語に訳した嘱託尋問調書を見た。当事者には開示されているものの、法廷での証拠調べ前で、未公開の段階だった。その場で、田中元首相などに関するロッキード社元副会長らの証言をメモしたいのだが、小佐野元社主は目の前に座ったまま席を立たず、「メモは認めない」と譲らない。

 調書の重要個所を頭の中にたたき込み、「もう、いいだろう」と促されるまで、自分の記憶力との戦いが続いた。調書の閲覧と引き換えに、元社主は裁判の見通しや検察の方針などに関する情報を求めてきた。

 ある年の暮れ、国際興業の名前で筆者の自宅に歳暮が届いた。開けてみると、仕立券付きの背広の生地だった。儀礼の範囲を大きく超えるため、慌てて元社主の暑い部屋に返しに行ったが、受け取らない。大きな身体でこちらの肩を抱きかかえるようにして、親密さを強調する仕草に、今後の取材のことも頭をかすめ、やむなく引き下がった。

 日を置いて、誕生日に黄色いランの花を届けて、せめてもの辻褄を合わせたが、その後は次第に足が遠のくことになった。「政商」と呼ばれた人物の懐柔策の中では、ちっぽけなものかもしれないが、この人物の怖さの一端を垣間見た気がした。

 児玉・小佐野ルートでは、中曽根康弘元首相との接点なども取りざたされたが、具体的な事実は法廷に出なかった。暑い部屋があった旧本社あたりにはホテルが建設され、小佐野元社主は、最高裁上告中の86年に亡くなるまで実業界で勢力を誇示した。(高尾 義彦=寄稿)


【司法ジャーナリスト・高尾 義彦】1945年徳島県生まれ。東大文学部卒。毎日新聞司法キャップ、編集局次長、紙面審査委員長など歴任。著書に「陽気なピエロたち 田中角栄幻想の現場検証」(社会思想社)「巨悪に挑戦 東京地検特捜部」(エール出版)「中坊公平の 追いつめる」(毎日新聞社)など。


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閉じる コメント(8)

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まだ若かった義彦氏が肩を抱きかかえられる場面を想像しわが身が硬くなり動悸がしました。そうして多くはからめとられていくんですね。良くぞ保たれた!

2006/2/8(水) 午前 10:36 [ ばあば ]

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この企画の存在を知らず遅れて読みましたが、一気に読み終えました。当時の状況を思い出すとともに、高尾さんの記者魂に改めて感心しました。リポートにあるとおり、まだまだ謎が山積しています。今後も真実に迫る努力を続けなければいけないなと肝に銘じた次第です。

2006/2/8(水) 午後 5:16 [ kaz*i*15 ]

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当時田中角栄の検挙で、「我国の三権分立がようやく機能し始めた」との思いを強く持った。

2006/2/8(水) 午後 8:24 [ 江東 無形 ]

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本日の毎日新聞夕刊「憂楽帳」でこの連載を知り、一気に読んだ。高尾記者の「執念の取材」に感服した。全10回といわず、続編もお願いしたい。

2006/2/8(水) 午後 10:05 [ ピーナッツ ]

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臨場感溢れる回顧録です。迫力ある文章、30年昔の当時が昨日のことのようによみがえってきました。天道はますます厳正であってほしいものです。

2006/2/9(木) 午前 0:35 [ minnycat2003jp ]

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田中氏も小佐野氏も贈り物で忠誠を買うという手法が共通してますね。 なるほど刎頚の友と称している背景が分かりました。

2006/2/9(木) 午前 5:57 [ 犬吠埼 ]

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「悪いやつほどよく眠る奴」を決して許してはいけません。「金本位主義の日本」を「心やさしい日本」にするにはどうしたらいいでしょうか?

2006/2/9(木) 午後 0:17 [ 風にそよぐ葦 ]

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小佐野氏がアメリカ・アトランタのお宅に出入りしていたという情報が私のヤフー掲示板のトピックスに書き込みがありました。どういったことかよくわかりません。何故、小佐野氏はアトランタに? 因みに私のトピックスは芸術と人文→文学→ノンフィクション→全般→「それぞれの細道」です。もし、ご教示いただけるようでしたら、ここのブログでお願いできませんでしょうか?

2006/4/2(日) 午後 4:47 [ hannreinakinisimo ]


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