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戦後最大の疑獄といわれたロッキード事件とは、何だったのか。元首相逮捕が、その後の政治に与えた影響、特捜検察の存在意義、事件に関わった人物たちの人間模様、30年の歳月を経て、いま問われるべきものは何か、などの視点から、取材を担当した記者が、個人的感想も含めて「ロッキード体験」を伝える。連日、掲載する全10回のシリーズです。 第9回 「問われた運輸行政」 この事件では、元首相はじめ16人が起訴された。全日空関係は元社長、元副社長ら幹部6人が被告となり、1企業としては最も多い。加えて、橋本登美三郎元運輸相、佐藤孝行元運輸政務次官も、受託収賄罪で被告の座に据えられ、運輸行政のあり方が問われた。 東京地検特捜部が最初に全日空関係者を逮捕したのは、76年6月22日だった。捜査は夏にかけて急展開し、政界関係ではまずトップの田中元首相らを逮捕(7月27日)、橋本元運輸相は8月21日、佐藤元次官はその前日に逮捕された。 当時の全日空は国際線進出を悲願とし、日航に追いつけ追い越せと拡大路線に向かっていた時代だった。元運輸相は、日航が先行していた大型ジェット機導入の時期を遅らせるよう若狭社長から依頼され500万円を受領し、元政務次官は航空行政に関して大臣通達原案を作る際に同様の依頼を受けて200万円を受領した、と判決は認定した。 若狭社長は最高裁まで争ったが、副社長以下5人は一審で有罪が確定した。橋本元運輸相も上告中に死亡し、最も特異な軌跡をたどったのが、佐藤元政務次官だった。 起訴後も政界での活動を続けた元次官は、86年7月、突然、最高裁への上告を取り下げた。一、二審とも有罪だったが、3年の執行猶予期間を早く終えて政治活動に支障がないよう環境を整えるためだったのか。「真実とかけ離れた判決を維持しようとする裁判所に、これ以上期待するのは無駄」と司法を批判し、取り下げの理由を明らかにした。 その元次官を97年9月に総務庁長官に任命したのが、橋本龍太郎首相だった。裁判進行中も「田中元首相は恋人」と言ってはばからなかった田中派の一人である。しかし、元次官は世論やメディアの批判を受け、在任12日間で辞任することになる。 確かに、執行猶予期間が過ぎれば、その罪を問うことは出来ないが、倫理的責任をどのように考えるか、政治家の良識が問われる。「田中支配」が続いたころも、法務大臣に就任しながら、「青天白日の身に」と元首相擁護の発言をして追及され、国会で陳謝した倉石忠雄氏のような政治家がいた。 目を現在の政治に転じても、自分の責任を棚にあげて開き直り発言を重ねる閣僚の姿が目につく。こうした言動が国民に与える影響を、「選良」たちはどのように考えているのだろうか。(高尾 義彦=寄稿) 【司法ジャーナリスト・高尾 義彦】1945年徳島県生まれ。東大文学部卒。毎日新聞司法キャップ、編集局次長、紙面審査委員長など歴任。著書に「陽気なピエロたち 田中角栄幻想の現場検証」(社会思想社)「巨悪に挑戦 東京地検特捜部」(エール出版)「中坊公平の 追いつめる」(毎日新聞社)など。 |
ロッキード30年報告
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一挙に読みました。今の新聞記者にはエリート意識とサラリーマン根性が混在したタチの悪さを感じてなりませんが、筆者こそジャーナリストという言葉がふさわしいと思いました。続編を期待しています。
2006/2/9(木) 午後 2:38 [ ぷーさん ]
最近の安易な右に倣え式なメディアの報道に失望を感じていましたが、高尾さんの記事を読んで、昔の記者さんは、風評に惑わされず、自分の眼で見、自分の足で稼いで記事を書いたと聞いたことを思い出しました。IT時代といわれていますが、本当に大事なもの・大切な事は、やはりフェイス to フェイス で得られると思います。
2006/2/10(金) 午前 9:34 [ 波の子 ]
毎日楽しく、若干の緊張感を持って読んでいます。日本の国の将来を見誤らないためにも、高尾記者の記事を当分続けてほしいものです。
2006/2/10(金) 午前 9:45 [ 凡人 ]
もう10回、残念!番外あるようでやや望み、ヨッシャ!過去の事件から学ぶことがいかに大事か改めて考えさせられた。大事な事件は、毎年、当事者動向など特集し風化させないでほしい。高尾さんの顔出して!
2006/2/10(金) 午後 3:04 [ 赤ちょうちん ]
赤ちょうちんさんの顔出して、新聞はなにかあると、いつも顔写真を探して載せてますね。続編では、その方向で、賛成!10回連載、ごくろうさまでした。いろいろ教わりました。
2006/2/11(土) 午後 0:12 [ 犬吠埼 ]