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そこで「メディア・レボリューション」では、編集会議メンバー、早房長治(朝日OB) 牧野義司(毎日OB) 町田徹(日経OB)の3氏による座談会を、2月17日に行い、最近話題になっている日銀の量的緩和と、その後の金融政策について三人で話し合った。 その内容を3回シリーズで紹介する。 量的緩和解除、機は熟したか?牧野さんはこの条件が満たされたと感じますか。 3月8日、9日に日銀金融政策決定会合がありますが、遅行指標の消費者物価の数字が、少し前のものなので、もう少し見極めが必要であり、この時期はまだ少し早いのではないかと。ただ、4月ごろは、大きな環境変化がない限り、1つのポイントの時期かなという気がします。 基本的には、5年の長期にわたった量的緩和の副作用が経済の現場に出てきていること、その一方で、景気は回復過程に入ってきて、デフレスパイラルリスクということへの懸念材料がなくなっていることなどから、日銀は、金利機能を活用した本来の金融政策にギアチェンジすることに問題はない、と思います。 ただ、自民党や政府の一部にある、デフレ脱却が確認されるまで量的緩和を続けるべきだ、という議論に関しては、日銀の金融政策判断のポイントは物価安定の目途が立つかどうかであり、デフレ脱却時点まで引き延ばす必要はない、むしろミニバブルの予兆など副作用が出始めた時には、金融政策面で機動性をもって対応すべきです。いずれにしても、自然体でいけばいいのです。 早房: 町田さんはどうですか? 町田: 私も何人かのエコノミストに話を聞いてみたのですが、牧野さんのおっしゃったところがエコノミストの平均的な意見で、「4月には解除ができる環境が整っているのではないか」と言うんですね。もう少し積極的な人たちは、「3月にでもやるべきだ」と。 私見はどうかと言うと、3条件にこだわりすぎるといけないと思っています。むしろ、それらに加えて、マーケットの状況を見るべきでしょう。東証が何度もシステムダウンを起こしたり、バブル期を上回る出来高を記録したり、株価が乱高下したりと、こちらは明らかに加熱を心配すべき状態にある。こっちも睨んで金融政策をする必要があると思っています。4月でも良いけど、3月ならばもっと良い状態にあると思います。 早房: 牧野さんから副作用の話がありました。これは具体的にどういうことでしょうか? 牧野: 大都市の商業地のマンション・不動産価格等を見ているとミニバブルの予兆を感じます。また行き場のなくなったお金が株の世界や高金利通貨へと流れ始めている状況を見ると、これはジャブジャブとマネーを供給する量的緩和政策の副作用が出ている感じがします。 こういった状況では、金融政策面で、何処かで歯止めをかけた方がいいと思います。 早房: 株式市場の株価の高騰について基本的には海外からが中心ですが、これは実はゼロ金利のために逃げた日本のお金が外国人の手を経て、日本に来ているんだという話がありますが、町田さん、その点はどう思いますか。 町田: 外人買いの全部が日本からの資金の還流ということではないと思います。けれども一部には、日本国内で運用できなくて、外国で外国人のファンドマネージャーにまかせて運用しているお金もあるはずです。外国のファンドマネージャーは、グローバルで運用していく際、多くのマーケットに分散してリスク回避していくわけですから、そういった形で日本に還流してくることも自然でしょう。 そこで、牧野さんがおっしゃった「副作用」は重要です。「副作用」を放置したままで、量的緩和解除を遅らせていくようですと、外国人投資家が日本の金融政策は機能していないのではないかと不安を持ってしまう可能性が高くなってしまいます。こうした面からも、量的緩和を終了すべき時期が近づいていると思います。 2006年前半の景気展望と株価の行方それから、株価もこれだけ高いですから、株価が頂点に来ているとすれば、量的緩和を解除した途端にドスンと下がると言う可能性もないわけではない。つまり株価が頂点に来ていると見るかどうか。 牧野: 確かに、実体経済の動きをみると、間違いなく景気回復過程に入っています。企業収益は、大企業製造業を中心に非常に良いですよね。それに支えられて投資家の株式投資も進み、株価が上昇しているというところもあるのですが、民間設備投資に意欲的なものが出始めてきているのが大きいです。 それから個人消費だって、しっかりした足取りになっています。もちろん成熟社会のもとで、モノ余りの状況があり、旺盛な消費需要という格好ではないにしても、企業の賃金上昇をきっかけに、企業収益が家計所得に移転し、それが消費の購買力増加につながってきています。 原油価格の高騰や中国、アメリカ経済が抱える潜在的リスクといった不透明要因はありますが、内需主導の経済になってきていることを考えあわせると、景気後退リスクとかデフレスパイラルリスクが出ることは、ちょっと考えにくいように思えます。 町田: 二つほど補足しておこうと思います。 まず内需に関して。これは終わってみないと分かりませんが、春闘で久しぶりにベアをしようという、個人消費にはプラスの話が出てきています。また企業収益で言うと、全産業ももちろんそうだし、過去10数年間、日本経済の一番のネックになっていた銀行の不良債権の問題が解消して、貸し出し先企業の倒産リスクに備えて積んであった準備金の取り崩しが可能になった。 数日前でしたが、三菱UFJファイナンシャルグループが一兆円を超えるトヨタ並みの利益を出すというニュースがありました。もはや金融政策が従来のスタンスから離れて良いんだというシグナルに他なりません。こうした景気の好転のサインを無視していると、経済は過熱の段階に入っていくのではないでしょうか。 早房: 春闘で賃金が上昇する。正規労働者はそんなに増えないかもしれないけど非正規労働者は増える。その結果、賃金総額が増えるわけですから、実際のお金の量でも、心理的にも購買意欲がこれまで以上に出てくるとは考えられますね。 ですから、この春闘がどういう形で収まるか注目したいですね。 一方、個人投資家について言うと、郵便貯金が去年の10月から投資信託を個人向けに販売を始めているのですが、1月の18日と19日、ライブドアの家宅捜査で東証に売り注文が殺到しシステムダウンした時ですが、あの時に実は連続で1日当たり過去最高の販売を記録しているんです。 そういうのを見ていると、個人の方も「株価が下がれば買いだ。割安になるなら、買ったほうが良いんだ」と強気になっているのが今のマーケットでしょう。 この2つの面から見て、量的緩和を解除したから株価が下がると言うのは考えにくい。下がったら、むしろ買いが入ってくると思います。 ただし、量的緩和解除の先、つまり、ゼロ金利が解除になり、長短期金利が上昇局面に入り、さらに、そのペースがあまりにも速いと市場が感じる場合には、前提条件が変わってしまいます。とはいえ、量的緩和の解除はやらないほうが、むしろマイナスだと考えていいと思います。 牧野: ライブドアショックの後の、全体の株価の戻しなどをみていると、少なくとも株価は底堅くなってきており、内外の投資家は、日本の実体経済の強さを見て、「買い」だと判断した結果のように思います。 それに量的緩和を解除したからと言って、ゼロ金利という超低金利状態は続くのですから、株価には、大きく影響しないと思います。 むしろ、若干、懸念されるのは、長期金利が弾みがついて上昇するかどうかというところでしょう。長期金利は、景気の先行きに明るさが出てくると、それを先取りして上昇する余地が出てくるでしょうが、問題は、マーケットが日銀の量的緩和解除を市場金利の上昇容認、それはそのまま金融引締め政策への転換、という受け止め方をすると、長期金利の上昇にまで波及するリスクが出ます。 だから、日銀は当然のことながら、仮に量的緩和政策の解除後も、金融調節で市場金利を抑えながら今の超低金利を続けていくと思います。 日銀の量的緩和解除とその後の金融政策(中)は明日22日掲載予定です。ご期待ください。
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