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 5年ぶりの日銀の量的緩和政策解除は4月の金融政策決定会合での決定だろう、という市場関係者のコンセンサスを振り切り、3月9日の早期解除決定となった。しかし株価や為替、長短金利の動きに大きな変動もなく、結果的に、市場にすんなり受け入れられた、といっていい。
 また「まだデフレ脱却したとは言えないのではないか」「3月解除は早すぎる」(政府高官)と慎重だった政治サイドも、決定後には、小泉首相自身が「日銀の政策決定会合で十分に議論したうえでの結論だから尊重する」と受け入れを表明し、1つの区切りがついた。
 日銀の金融政策決定会合での決定は民間出身の審議委員6人を含む合議制でのもので、仮に、解除決定の3つの約束事の一つである「消費者物価の上昇率がゼロ%以上安定的に推移する」などについて、もう少し情勢の見極めが必要、といった慎重論が大勢だったら、状況は変わっていたかもしれない。
量的緩和政策を解除し金利機能を活用した本来の金融政策への復帰が念願だった日銀当局にとって、何が追い風だったのだろうか。

追い風―解除決定の3つの約束事クリア
 複数の日銀関係者、それに日銀OBの話を総合すると、10−12月の国内総生産(GDP)が年率5.5%の高成長となり、しかも四半期連続の前期比プラスの成長を続けたこと、
 1月の鉱工業生産も前月比0.3%プラスで6ヶ月連続の上昇したことーなどから、景気が回復軌道に入り、景気のダウンサイドリスクはなくなったと判断できること、さらに最大のポイントである1月の消費者物価が+0.5%となり、しかも先行きの物価も安定的に推移することが見込めるとの判断ができ、3つの約束事もクリアできる、という判断に至ったことだ、という。
 いわばマクロの経済指標の好転が追い風となったのであることはいうまでもない。
 日銀にとっては、この経済指標のよさをもとに、市場関係者が4月の量的緩和政策の解除を織り込んでしまうだけでなく、市場金利の上昇を先取りするアクションを起こしかねない。その意味でも、早期に、量的緩和政策解除という判断を下して、先手を打った方がいい、という判断が出たことは間違いない。

政治サイドの思惑崩す結果に
 しかし、日銀にとって、厄介なのは、やはり政治サイドの動きだった。前述の複数の日銀関係者は、率直に、その点を認めている。
 「日銀には金融政策の独立性が与えられているとはいえ、マクロ政策運営の面で政府や政治とは協調体制を維持しておきたい、というのが本音。その意味でも政府よりも政治サイドの動向をしっかり探り、かつ読み取るのが重要だった」というコメントもその1つ。
 確かに、政治サイドには、ポスト小泉政権がからんでか、中川自民党政調会長、竹中総務相らが意識的にリフレ政策を狙ったような言動がみられ、それを踏まえて、日銀には量的緩和政策解除の先延ばしを求める発言が目立った。
 そのポイントは、次期政権が消費税率の引き上げ判断に直面するため、量的緩和政策を続けることで株価や地価、不動産価格などの資産価格の上昇を図り、増税のショック緩和策の布石をしておく、ということなのだろう。
 一方で、自民党関係者らによると、小泉首相は、次期政権にバトンタッチするにあたって、長期にわたったデフレの脱却宣言を高らかに行い、経済構造改革の成果をはっきりと示した改革派首相、という名声を残したい、という政治的な思惑があるのは間違いない。
 さらに、その関係者は、首相官邸サイドとしては、経済財政諮問会議が6月に「骨太方針」を決定し、今後の財政を軸にしたマクロ政策の方向付けを行うので、そのあとの7月ごろに政府のデフレ脱却宣言を行う、というシナリオを持っており、日銀の量的緩和政策の解除もそれと同時に、というのがベストシナリオだったのでないか、という。
 そういった点では、日銀の今回の量的緩和政策の解除は、政治や首相官邸サイドの思惑を崩す結果になった。
 しかし、日銀OBのマーケットエコノミストは「GDPや鉱工業生産などのマクロ経済指標がよかったこと、消費者物価もそこそこの伸びとなったことが日銀にはフォローの風となったが、政治サイドにとっては、このマクロ経済指標の好調さを見せつけられると、独立性にまで手を突っ込んで批判や反対はできなかった、ということだろう。結果論だが、4月以降、どういった状況の変化が起きるか、それによって緩和解除のタイミングを失するリスクだってあり得た」と述べている。

 いずれにしても、5年の長期にわたった金融の量的緩和政策によって、マネーがジャブジャブ状態になり、それが結果的に株価の上昇、大都市商業地域の不動産価格の上昇などミニバブルの予兆のようなものが見えていただけに、予防する意味でも、今回の政策解除は的確な判断だった。
 それと、まだ、地域経済や中小企業などには景気回復の恩典が及んでいないところもあり、日銀としては、ゼロ金利という超低金利政策を継続していくことは必要だろう。(牧野 義司)

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