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米民主党系のシンクタンク、アメリカ進歩センター(CAP:Center for American Progress)は、5月3日「戦略的再配置2」と題するイラク問題についてのレポートを発表した。このCAPは、「ヘリテージ財団」の民主党版で、昨年9月にも同題名のレポートを発表しており、今回はその第2部、執筆者はレーガン政権の国防次官補だったローレンス・コルブとクリントン政権時代国務省スタッフだったブライアン・カツリスである。 レポートは、ブッシュ政権の期限なきイラク派兵が逆に米国の安全を損なっているとして、内外のアメリカ人を守りイラクの安定化を図るために、イラク派遣部隊の撤退と中東地域の米軍再配置計画を提言している。 米軍―今年中に6万人減少、来年にはゼロにそれによると、即時撤退はイラクと中東の不安定を恒久化するおそれがあるとして段階的撤退を提唱しており、具体的には、▽現在の13万人の兵力を今後毎月9000人ずつ削減し、2006年末には6万人減少する。▽特に州兵と予備役は今年中に全員帰還させ、本土の災害・テロに対応させる。▽残りの7万人はイラク治安部隊への訓練と兵站支援、少人数部隊によるテロ組織の殲滅作戦、国境警備に任務を特化した上で、2007年末には撤退し実質的兵力をゼロとする。アフガンとクウェートは増強イラク国内からは撤退するが、イラクの争乱やイランの不安定化に備えてクウェート駐留の地上軍を増強するほか、ペルシャ湾岸の空母や海兵隊の配備は継続するとしている。また、リポートは、「9.11」の根源となったアルカイダとタリバンの掃討作戦は完遂しておらず、アフガニスタンの治安も悪化しているとして、▽アフガニスタンに2万人を追加派遣し、NATO中心の国際治安支援部隊と合体して、米将軍指揮下の新たなNATO部隊を創設する。さらに、アフリカやフィリピン・インドネシアなどアジアでのテロリストとの戦いを支援するため、1000人の米兵を増派するとしている。 軍隊の再配置計画と同時に、イラク安定化のジュネーヴ平和会議の開催や復興支援の国際基金なども提唱しているが、ありていに言えば「イラクからは手を引いて、アフガニスタンのアルカイダやタリバンを片づけましょう」というものである。イラクからの段階的撤退にしても、現在の混乱の要因の一つになっている部族間・宗派間の対立については楽観的で、英豪伊日など他の部隊派遣国との関係には一切ふれていないなど、かなり大雑把なリポートとの印象は否めない。 「イラク戦争不支持が過半数―直近の米・世論調査」しかし、4月末から5月初めにかけて実施された世論調査を見ると、米国民の不満と不安はかなり高まっている。イラク戦争は誤りとするのが55%(CNN)、現政権のイラク政策不支持が64%(CBS)、米国内での新たなテロ攻撃に不安を感じる人は77%(サーベイUSA)にも達している。今回のリポートは、平均的なアメリカ人の気持ちを反映したものとも言え、11月の中間選挙で民主党に有利に作用することは確かだ。アメリカ進歩センター(CAP)はヒラリー・クリントンの呼びかけでクリントン政権の首席補佐官だったジョン・ポデスタが2003年に設立したもので、2004年の大統領選で強烈に反ブッシュ運動を展開したジョージ・ソロスや西海岸の億万長者・サンドラー夫妻らが資金提供をしている。昨年からは大学のキャンパス活動を開始、草の根運動にも力を入れており、民主党の中間選挙や2008年大統領選の戦略に欠かせない存在となろう。 (仁平 俊夫) |
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