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日本企業の企業防衛を阻む元凶は、日本の公正取引委員会――。中国特需の追い風もあって大復活を遂げた新日鉄だが、今度は、敵対的な買収の脅威にさらされている。しかも、その究極の防衛策作りの障害になっているのが公取委の合併審査だという驚くべき実態が財界関係者の証言で明らかになった。 言わずもがなだが、新日鉄といえば、日本を代表する名門企業。1901年に創業を開始した官営・八幡製鉄所が母体で、戦後、富士製鉄と分割された時期もあった。が、1970年に再合併。新日本製鉄としてスタートし、高度経済成長を支えてきた。二度の石油危機、高度成長の終えん、円高不況、バブル経済の崩壊と度重なる試練を経て、ここ数年は復活。2006年3月期連結決算でも前期比47.4%増の5744億円の経常利益を稼ぎ出した。 この新日鉄がここ数ヶ月、敵対的な買収に対する企業防衛策作りに躍起だ。今年3月末に住友金属工業、神戸製鋼所との連携強化や買収防衛策の導入を発表したのに続き、今月11日には三菱UFJフィナンシャル・グループが新日鉄株を買い増して持ち株比率を2%弱に引き上げたことも明らかになっている。 背景にあるのは、粗鋼生産量6600万トンと世界第1位のミタル・スチール(オランダ)が仕掛けた買収攻勢。粗鋼生産量1億トン乗せという目標を掲げて、今年1月、同3300万トンで第2位の座にあるアルセロール(ルクセンブルグ)に買収を提案した。アルセロールはもちろん、ルクセンブルグやフランス政府も買収に反対し、2社は激しく対立している。ただ、仏経済紙トリビューヌによると、ミタルは3月に、目標の粗鋼生産量を「2015年までに2億トン」に引き上げたという。こうした状況に、世界第3位の新日鉄(粗鋼生産量3300万トン)も危機感を強めざるを得なかった。 そして、「新日鉄が究極の買収防衛策の一つとして検討しているのが、国内3位の住友金属工業、同4位の神戸製鋼所との経営統合案」(財界関係者)だ。ところが、こうした巨大企業の合併には、公正取引委員会の合併審査が避けられない。そこで問題になってくるのが、その審査基準として、公取委が国内市場のシェア(市場占有率)を重視していることだ。公取委の『企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針』をみても、「会社の事業区域が国外に及んでいる場合であっても、法により保護すべき競争は日本国内における競争であると考えられるので、国内の取引先の事業活動の範囲を中心としてみる」と明記している。 ただ、経済競争のグローバル化によって、公取委の合併審査が実情にあわない産業も増えている。例えば、クリントン前政権の米司法省がマイクロソフトを提訴したのは、同社のシェアが米国内ではなく、世界レベルであまりに高かったからだ。 ミタルの12日の発表によると、その同じ司法省が「米反トラスト法上、ミタルのアルセロール買収は問題なし」と判断したという。これに対し、日本の鉄鋼大手4社の粗鋼生産量の合計はミタルとアルセロールのそれに届かないが、日本勢は、3社合併はおろか、2社合併さえ難しいという。 鉄鋼業界には、「仮に新日鉄、住金、神戸鋼の3社合併が実現して新会社が誕生しても、ミタルのキャッシュフローならば、その新会社だって買収する力がある」と冷ややかな声があるのは事実。だが、産業界だけでなく、経済産業省や経済財政諮問会議も公正取引委員会には批判的。敵対的な買収に対して、欧米企業ならば打てる手が打てないのは、日本企業にとって大きなディスアドバンテージではないだろうか。(町田 徹)
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