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 福井俊彦・日銀総裁は6月20日、インサイダー取引容疑で逮捕された村上世彰容疑者の率いた「村上ファンド」への投資状況に関する報告書を国会に提出するとともに、日銀など2ヵ所で記者会見を行い、自らに減俸処分を課すことを明らかにした。これでけじめが付いたのかどうか、先行きは予断を許さないが、総裁個人の責任だけを追及する「福井バッシング」よりも、もっと重要なことがある。現行の証券取引法のインサイダー取引規制の規制対象が、「個別企業の内部情報」だけに限定されており、財政、金融、為替、規制など企業の株価に大きな影響を与える「政策情報」が「法の網の目」にかかっていない点を見逃すべきでないという問題である。言い換えれば、政治家、中央銀行マン、官僚の「インサイダー取引天国」が放置されているのである。一連の騒ぎを教訓として活かすためには、スキャンダル騒ぎだけに明け暮れず、事態を冷静に分析し、法制の不備を改める議論をすることが重要だろう。
 日本のインサイダー取引規制は、極秘段階の資本提携交渉の情報が漏えいし、不正な株式売買が行われた“新日鉄・三協精機事件”がきっかけとなり、1980年代後半に整備された。ただ、何が刑事罰の対象になる「違法な行為か」を厳密に規定する、「罪刑法定主義」の足かせがあって、「インサイダー取引」の規制対象を、M&A(企業の合併・買収)、増資、業績、新製品投入、事故や天災による被害など、企業サイドの情報だけに絞り込んでしまった問題がある。
 このため、例えば、ある企業のM&A情報を知り株式を売買して不正な利益を得れば、証券取引法違反に問われて、懲役、罰金の刑事罰を受ける可能性があるが、同じように企業経営を大きく左右するはずの財政、金融、為替、規制、行政処分などの情報は、インサイダー取引規制の対象外になってしまったのだ。
 具体例をあげれば、金利の引き下げが決まり、収益改善が見込まれるメガバンク株を売買して不正な利益を得ても法的な責任に問われることがないのである。言い換えれば、企業の役員・従業員と違い、政治家、中央銀行マン、官僚などに不心得者がいれば、実にインサイダー取引がやりやすい環境が放置されているわけだ。この点では、成文化された条文の文言に捕らわれず、法の精神を重視して、市場監視当局、捜査・司法当局、裁判所などが果敢に“事件”に取り組む、「インサイダー取引規制の本家」米国の制度と、日本のそれが大きく異なっている。
 実際に、こうした政策情報を利用したインサイダー情報を規制する場合、証券取引法で網の目をかけるのは、立法技術の面で難しいうえ、いたずらに円滑な取引を制限する恐れもある。そこで、立法化にあたっては、政治資金規正法、日本銀行法、国家公務員法などで該当者への禁止規定を設けるような工夫も必要かもしれない。
 足りないのは、インサイダー取引規制だけではない。新聞で指摘されている、日銀幹部の資産公開制度も必要だ。さらに、登用試験の充実も必要だ。米国でFRB議長を登用する際には、「大統領が指名し、議会が承認する」となっており、議会が、資産内容だけでなく、経歴や思想、政策哲学まで徹底的に吟味する。これに対し、日銀法には「両院の同意を得て、内閣が任命」という規定があるものの、衆、参両議院の同意は形ばかり。日銀総裁の人選は、首相の専管事項になってしまっているのが実情だ。こうした点も、しり抜けのインサイダー取引と同様に改善が急務ではないだろうか。(町田 徹)

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