北海道で「最果ての地」というと知床を連想しますが、世界自然遺産に登録されたこともあって、連日押すな押すなの大賑わいのようです。
こんなに大勢の人が押しかけては、もはや最果ての地のイメージには程遠いといえましょう。
代わってまだ観光化されてない北海道北部の サロベツ原野 から 宗谷丘陵 が最果ての地にふさわしい地域となりました。
その最果ての地の自然を求めて7月の上旬でかけてきました。
札幌から日本海を北上すること5時間余、日本で4番目の大河 天塩川 を通りました。
水平線には利尻富士がうっすらと見えます。
江戸時代の探険家、松浦武四郎は丸木舟で天塩川を渡ると「三角の頭をした魚があちこちから顔を出して気味悪かった」と日誌に書いています。
天塩川には昔は世界三大珍味のひとつキャビアがとれる チョウザメ が生息していたことを示しています。
冬は凍結する天塩川ですが、夏はカヌーなどのアウトドアで賑わっています。
茫洋とした大湿原
天塩川の氾濫によってできた湿原が サロベツ原野 です。
標高差がほとんどなく見渡す限りの大湿原です。
木道が湿原を縫うように続いており、強い日差しにも拘らず、さわやかな風が足取りを軽くさせます。
この時期 エゾカンゾウ (本州で言うニッコウキスゲ)が満開です。
サロベツに暮らす人々にとってエゾカンゾウは誇りだそうです。
自然環境の厳しい当地に入植し、開拓の年輪を重ねてきた人々にはエゾカンゾウは1年に1度、大地がまとう晴れ着に見えるそうです。
水があふれると牛を担いで二階に避難したということもあったそうです。
エゾカンゾウは北海道各地の湿地帯で見られますが、茫洋とした湿原一面に咲くサロベツのエゾカンゾウの群生は第一級品です。
湿原にはこの他、紫色の ノハナショウブ(写真) 、ピンクの トキソウ 、白い コバイケイソウ 、沼の中から黄色い ネムロコウホネ などの湿生植物の花が顔を出して疲れを忘れさせてくれます。
この大湿原も乾燥化が進んでいるということです。
北海道命名の地
人口がわずか1000人余の日本一の小さな村、音威子府(おといねっぷ)に近い天塩川中流域に「北海道命名の地」がありました。
北海道は江戸時代まで蝦夷と呼ばれていました。
この地を探検した 松浦武四郎 はもてなしを受けたアイヌの古老からアイヌの通称である「カイナ」の「カイ」はこの地に生まれたものという意味であることを聞きました。(「ナ」は尊称)
武四郎は明治2年、地名に関する意見書を明治新政府に提出しますが、この古老の話をヒントに「北加伊道」など6つの案を提示しました。
この中で「北加伊道」が採用され、「加伊」の字に北方の海に通じる「海」が当てられて「北海道」が誕生したということです。
北海道がアイヌ語から来ているとは知りませんでした。
ちなみに北海道の地名の8割はアイヌ語から来ているといわれています。
和人の役人が地名をつける際に、アイヌの人から聞いた言葉をそのまま漢字に当てはめました。
ちなみにこれらの地名が読めるでしょうか。
15のうち3つ読めたらあなたは相当の北海道通、1つ読めたら一度は北海道を訪れたことでしょう。
1つも読めなかったらこれから北海道の旅をぜひ楽しんでください。
1.忍路 2.花畔 3.濃昼 4.晩生内 5.一已 6.比布 7.安足間 8.咲来 9.興部
10.止別 11.音調津 12.旅来 13.分遣瀬 14.火散布 15.穂香 (解答は最後尾)
身長145センチ、足の長さ24センチの小柄な松浦武四郎(写真)が苦労して何年もかかって探検した未開の地・蝦夷地を、150年後の私たちは車でわずか数時間で走り抜けます。
車窓からみえる広大な原野にロール状に巻かれた牧草があちこちに点在しています。
まるで畑のバウムクーヘンです。 ロールベール というんだそうです。
近づくと直径は1.5mほどあり、人間の手では動かないほどの重量級です。
むきだしになったロール状の牧草もありますが、ビニールでまかれた牧草がよく見られます。
これは牧草を乾燥させないまま外気と遮断し、中の牧草を発酵させて保存しています。
ちょうどビニールカバーがサイロの役割を果たしており、 ラップサイロ といわれています。
牧草の保存はいまではこれが主流となり、タワーサイロは最近めっきり見られなくなりました。
白、青、黒・・・。 色とりどりのラップサイロが転がっている原野は北海道の新しい風物詩です。
(望田 武司=寄稿)
地名呼び名解答
1.おしょろ 2.ばんなぐろ 3.ごきびる(ゴキブリではありません) 4.おそきない 5.いちやん 6.ぴっぷ(ヒップではありません) 7.あんたろま 8.さっくる 9.おこっぺ 10.やむべつ
11.おしらべつ 12.たびこらい 13.わかちゃらせ(わからないなんて言わないで)
14.ひちりっぷ 15.ほにおい
頭をひねる地名もあれば、語感のいい当地にぴったりの地名もあるのも面白いところです。
望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。
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