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この時だから知りたい北朝鮮

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第7回 北朝鮮と「南方外交」


ASEANを重視

 ミサイル発射で国際的批判が高まる中、北朝鮮は東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムに参加した。ここでも北朝鮮の行動に対する懸念が表明されたが、北朝鮮にとって織り込み済みのことだ。不参加の道をとらず、あえて批判覚悟で参加、という選択で、北朝鮮の「南方外交重視」の姿勢を物語るものといってよい。

切っても切れないベトナムとの関係

 ベトナムとの関係を見てみたい。同じ社会主義国として友好関係を維持してきた仲である。92年、ベトナムと韓国の国交樹立により、一時冷却化したが、北朝鮮の指導部がたびたび訪越するなど関係は改善されてきた。両国の親密さについてはこんな経験をした。ハノイで取材したベトナム外務省の日本担当者は、少し硬いが、正確な日本語を話した。「どこで日本語を学んだのか」という質問に対して「平壌の外国語大学に留学した」と答えた。ベトナム戦争当時、敵国の米国を支援する日本に留学することは不可能で、北朝鮮で日本語を習得する外務官僚が多かったのだ。今では、北朝鮮留学組がベトナムの日本外交を支えている。

ベトナムと立場が逆転

 ベトナムが北朝鮮への留学生派遣を打ち切ったのは、約30年前だ。それまでの間、日本語習得にとどまらず、数百人のベトナムの若者が金日成総合大学などに留学し、北朝鮮の農業や工業などについて学んだという。ベトナムが戦時でも将来の国つくりを見据え、当時の「社会主義先進国」である北朝鮮に留学生を派遣したことは先見の明があったと評価されよう。現在のベトナム改革にもつながった。
 今この立場が逆転した。北朝鮮はベトナムに留学生や経済実務者を多数派遣している。

続々生まれる北朝鮮直営レストラン

イメージ 1 ベトナムと共にインドシナ三国と言われてきたカンボジアとラオス。最近、その首都プノンペン、ビエンチャンに平壌冷麺などを食べさせるレストランが開店した。北朝鮮関係者が切り回す、いわば国の直営店である。プノンペン店に入ったが、ウェイトレスらも本国から派遣されていた。冷麺のほか焼肉、犬料理などもある。韓国料理とやや違う素朴な味は、物珍しさもあって観光客や日本の駐在員らに人気があるようだ。
 北朝鮮の直営レストランが東南アジアまで進出してきたのは02年からスタートした「経済管理改善措置」が後押ししたためだ。その北朝鮮の経済改革については前々回で詳しく説明したが、キーワードを簡単に言えば「実利追求」と「生産意欲の向上」である。直営店の展開は、政府や党などの関係者が組織の独立採算を念頭に実利を追及したものだといえる。

主席と国王

 消息筋によると、プノンペン店は北朝鮮の警護関係者らが運営に関わっているとの話だった。カンボジアのシアヌーク前国王は退位前から病気療養・静養のため北京、平壌に行くことが多かったが、カンボジア国内に滞在する時は警護に北朝鮮の警備要員がつく。前国王と北朝鮮の故金日成主席との親密な関係によるものだ。

三大革命力量論

 北朝鮮は64年、「三大革命力量論」を明確にした。すなわち祖国統一を果たすためには北朝鮮国内の革命力量、南朝鮮(韓国)における革命力量、そして国際的革命力量を高めることが必要という理論である。国際革命力量については、例えば「平壌−北京−ハノイ−プノンペン−ジャカルタ」の枢軸強化を呼びかけた。ベトナム戦争が続く中で「反米主義」を貫く指導者たちの連携である。そのキーパースンがシアヌーク氏。もう一人はアジア・アフリカ会議(バンドン会議)を成功させ、第二次大戦後に独立した新興国の雄として名をはせたインドネシアのスカルノ大統領(当時)だった。

重要な場面には二人がいた

 北朝鮮は韓国に対する「対話のよびかけ」などの重要政策を、シアヌーク氏が平壌に滞在中の歓迎集会で明らかにしたことが何度かある。シアヌーク氏の行動力と国際的知名度を期待した面もある。また、金日成氏は65年にインドネシアを訪問し「社会主義建設と南朝鮮革命」について講演したことがある。この中で「思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛」を打ち出した。初めて「主体思想」について公式的に言及したのだ。今もインドネシアとの関係は、スカルノ氏の娘、メガワティ前大統領が大統領時代に平壌を訪問、金正日総書記と会談するなど良好な関係にある。

南方外交重視の姿勢は揺るがない

 北朝鮮はASEAN諸国からミサイル発射による懸念が表明されると「地域フォーラムからの脱退」をほのめかしたが、すぐさま議長国のマレーシアに「脱退はしない」と通告したという。食糧難の北朝鮮はコメが豊富にあり、また伝統的に友好関係にあるASEANとの絆を自ら簡単に断ち切る考えはないと思う。
 昨年、ミャンマーの軍事政権がヤンゴン北の山岳地帯に首都移転を決めた。米国の脅威に対応してトンネルを掘る計画も伝えられているが、最近、掘削技術を伝授するため北朝鮮のトンネル専門家が現地入りした、との情報もある。北朝鮮の南方外交はしぶとく静かに続いている。(薄木 秀夫=寄稿)

薄木秀夫(うすき・ひでお)74年、毎日新聞入社、大阪社会部、サンデー毎日記者を経てソウル、バン
コク特派員、外信部デスク・編集委員などを歴任。著書に「韓国人の本心」、「反日と親日のはざま」(
いずれも東洋経済新報社)

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