▼「在日」の故郷大阪市生野区周辺はかつて「猪飼野」と呼ばれ、朝鮮半島から多くの人々がこの町にやって来た。そしてここに落ち着いたあと日本全国の炭鉱やダム建設現場などに流れた人もたくさんいた。「猪飼野は『在日』の第二の故郷」といわれた。いまも約3万人の在日朝鮮・韓国人が住む日本最大のコリアタウンである。消防車が入れないような狭い道にマーケット、朝鮮料理屋、零細家内企業、住宅がぎっしり並ぶ。大阪の下町的雰囲気も漂い、多くのものが混ざり合う「ビビンパ(混ぜ飯)」のような町だ。大阪社会部時代、よくこの界隈を歩いた。平野川が走り、焼肉屋のネオンが灰色に濁った川面にうっすらと映る。この川の改修工事にも多くの朝鮮人労働者が動員された。やがて零細な家内工業を営む朝鮮人が増えた。 1922年、済州島と大阪間を結ぶ連絡船の定期航路が開かれ、済州島から多数の朝鮮人が大阪に渡航してきた。差別で日本人が経営するアパートや下宿に入居するのは難しく、同胞のところにころがり込むほかなかった。やがて生野区周辺にコリアタウンが形成されていく。 ▼父は朝鮮総連の活動家だった梁英姫さんも3人の兄とともにこの町で育った。15歳の時、済州島から来た父は、ここを拠点に朝鮮総連の大阪本部幹部として活動してきた。金日成主席を敬愛する父は、30数年前、3人の息子を「祖国」の北朝鮮に送った。「祖国に忠誠を尽くせ」が口ぐせ。いわゆる帰還事業に対して朝鮮総連幹部だった父は積極的に協力せざるを得ない立場にあった。▼帰還事業と兄の平壌暮らし当時、朝鮮総連は祖国の社会主義建設に協力しようと組織を挙げて帰還運動を展開した。日本政府は「人道的措置」としてこれを認め、1959年帰国第一船が出航した。帰国者総数は計約9万3000人。しかし「夢の祖国」に着いた帰国者を待ち受けていたのは貧しさと重労働、そして「資本主義に染まった異分子」という冷たい視線だった。ただ総連幹部の子弟らは「コネとカネ(送金)」で比較的恵まれた生活を送った。 梁さんも総連幹部の娘として北朝鮮を「祖国」と教えられた。朝鮮学校の修学旅行で初めて「祖国」の土を踏み、その後も幾度となく平壌を訪問、兄たちの家族と交流してきた。 兄たちは平壌の高層アパートに住み、翻訳や建築などの仕事に取り組む。アパートでは甥や姪にあたる、兄たちの子供がクラシック音楽の曲を弾く。満足そうに見つめる家族の姿。梁さんの父母の潤沢な仕送りのおかげである。 ▼「行かせなくてもよかった」――父の苦悩梁さんは、こうした家族の姿を10年にわたり撮り続けてきた。カメラで父と真正面から向き合ううちに「なぜ兄たちを送ったのか」、「生活のすべてをなぜ『祖国』に捧げなければならないのか」という疑問がわくようになる。自身も米国や韓国に留学や仕事で行かねばならない。「朝鮮籍」ではなにかと渡航に不便だ。父に「韓国籍に替えていいか」と問い掛ける。これは総連幹部だった父にとってタブーである。そうした娘とのやりとりの中で父も「(息子たちを北朝鮮に)行かさなくともよかった」と漏らすようになる――。苦悩の末の言葉。これが映画のクライマックスシーンだ。 兄たちを送り出した時に働き盛りだった父も78歳、兄たちも50歳代になった。父は脳梗塞で倒れ闘病生活の身。「もう一度家族の待つ平壌に行こうよ」と梁さんはベッドで呼びかける。 ▼最悪の日朝関係の中で、映画が語ったものは映画は父を中心にした家族の絆を描きながら在日1世と2世との祖国観の違いやそうした拉致問題などで国際的孤立を深める「祖国」に対する失望感もにじませている。 梁さんの「この国とあの国はこの海によってつながっているのか、隔たれていのか」というナレーションの言葉に、進展しない日朝関係に対する「在日」の思いが集約されている。重いテーマの映画だが、撮影が難しい万景峰号の船内の様子や平壌の市民生活もさりげなく収められ興味深かった。 ●8月26日から「渋谷シネ・ラ・セット」で公開中。このあと大阪、ソウルでも上映予定。 (薄木 秀夫=寄稿) 薄木秀夫(うすき・ひでお)74年、毎日新聞入社、大阪社会部、サンデー毎日記者を経てソウル、バン コク特派員、外信部デスク・編集委員などを歴任。著書に「韓国人の本心」、「反日と親日のはざま」( いずれも東洋経済新報社) |
この時だから知りたい北朝鮮
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10/4 夕方のフジ系列のニュースで映画の特集が組まれておりましたね。拝見しました。地元・コリアタウンのある大阪での公開が楽しみです。
2006/10/4(水) 午後 6:04
一度 この映画を 見て、また 監督さんに 会いたいですね。こういう ドキュメンタリ 映画が 本物の ヒューマン ドラマでは ないですか。監督と 個人的に 連絡する方法が あれば 教えてもらいたいですが。。。
2007/4/2(月) 午後 11:22 [ yan*ha*as* ]