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 大手証券会社の日興コーディアルグループの「利益水増し疑惑」について、筆者が昨年暮れ発行の「月刊現代」や当ブログでスクープしてからほぼ1年――。証券取引等監視委員会(日本版SEC)がここへきて、大詰めの調査を進めている。決算処理に問題があれば、正すのは当然のことだ。この問題に関連して、見逃せないのが、この間の新聞の報道ぶりである。

いいとこどりで140億円も利益を膨らませた決算処理

 疑惑が注目を集める端緒となった月刊現代の記事のタイトルは、「日興コーディアル証券『封印されたスキャンダル』」。筆者はこの記事でまず、同グループに、暴力団に対する違法な「利回り保証」など、過去に表沙汰になっていない数々の不祥事があることを報じた。
 そのうえで、喫緊の問題にも言及。2004年9月中間決算で、同グループが孫会社を通じたコールセンター会社の買収に関連して、発生した評価損を計上せず、評価益だけを取り込む不可解な決算処理をしていることを指摘した。そのような「いいとこどり」は、明らかにおかしい。
 具体的には、同グループは、孫会社を連結決算の対象から外し「評価損」を簿外におきながら、コールセンターの株価に価値が連動するとみせかけた特殊な債券を孫会社に発行させて、これを持ち株会社が引き受けることによって、本体に「評価益」だけを取り込んでいたのだ。この処理によって、問題の中間期の利益は、140億円も膨らんだ。
 実態より利益を大きく見せるなど「投資家に誤解を与える」有価証券報告書の開示は、証券取引法や内閣府令が禁じている行為だ。悪質ならば、刑事罰を科されることもある。

SECが金融庁に処分勧告へ

 同グループは、投資家と証券を発行する企業の仲介役の証券業が本業でありながら、問題の有価証券報告書に基づいて、05年11月に社債発行によって500億円を調達した。こうした行為が、投資家の証券市場への信頼を著しく損なう懸念は拭えない。
 そこで、SECは、金融庁に対し、過去最大の5億円の課徴金を含む行政処分を求める処分勧告を出す方針で、早ければ年内にも金融庁が実際の処分を下す可能性がある。これに対し、日興は「監査法人の了解があったので、問題のない経理処理と判断した」と依然、抵抗しているという。だが、当時の関係者は、筆者に「日興は、この決算処理の不当性を認識していたからこそ、中央青山監査法人(当時)のお墨付きをとっておくことにした」と内情を証言している。こうした行為に、ある公認会計士は「当然の措置。むしろ、行政処分だけでは生温いぐらい」と怒りを隠さない。

同グループを擁護した新聞報道

 ところが、この問題を巡り、主要紙は、同グループを擁護していると取られかねない報道を繰り返してきた。
 ある経済紙は、筆者の昨年の記事の翌日付け紙面で、「日本会計士協会の監査委員会報告第60号」の例外的な細則を持ち出して「現在の会計ルールでは、投資事業に関連して保有している株式は連結対象にしなくてよい」と主張。そのうえで、「会計ルールを巡る議論が活発になりそうだ」と、問題がルールの方にあるかのような話にすり変えて報じた。これは、証券取引法などの大原則を無視して、その下部規定が準用できるという日興の主張に肩入れしたものに他ならない。
 次いで、同紙は、日興グループの06年3月期の決算変更について、「連結範囲を広げ透明性を高めた」と称える記事を掲載した。ところが、この変更は、問題の含み損を損益計算書に反映させず、貸借対照表の連結だけで済ますことによって、孫会社の連結外しに対する批判をかわそうとしたものに過ぎないと見られていたのに、である。
 さらに、SECの処分勧告方針が明らかになった先週末。今度は、ある全国紙が、問題の背景として、日興の有村純一社長の「証券業界の『勝ち組』へのこだわり」があったとの解説記事を掲載した。つまり、一読すると、問題が経営者の勇み足と読めなくもない話になっていたのである。だが、この記事は、利益水増しの結果、同社長が05年3月期にその前の期より6500万円多い1億3500万円の役員報酬を手にしたことに言及していない。この会社は、業績がよければ役員報酬が膨らむ仕組みを導入しており、あまりの報酬額の多さに株主総会で批判が相次いだことも指摘していないのだ。こういう記事では、決して問題の本質が見えて来ない。バランスのとれた、よい記事だとは言えないだろう。

記者は、大原則を重視すべし

 3つの記事に共通しているのは、取材した記者が、そろって証券取引法の大原則を理解しているとは思えない記事を書いていることだ。証券市場では、企業が開示した決算内容を見て、投資家はその企業に投資するかどうかを決定する。だから、企業が、投資家に誤解を与えるような開示をすることがあれば、大変なルール違反であり、厳しく追及されるべきである。こうした基本を記者が認識していないから、当該企業の言い分を鵜呑みにしたとしか思えない記事が乱発されるのではないだろうか。
 最近は、日興の例に限らず、権力者や大企業に甘い新聞論調が少なくない。特定の取材先の言い分をそのまま報じるようでは、「公器」としての新聞の使命は果せない。取材が難しくても、真実に果敢にチャレンジして、それを読者に伝える真摯さが求められている。(町田 徹)

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