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核問題に問われる日本の態度


NPTとNSG(※注)
 平和目的で核技術開発を行う国(非核兵器国)は、それが軍事目的ではないということの証しとして、国際原子力機関(IAEA)による査察を受け入れる義務(保障措置:safeguardと呼ばれる)がある。それを受け入れない国に対しては、核技術開発に必要な資材を提供しない、というのが、原子力供給国グループ(NSG)といわれる取り決めの中身である。核不拡散条約(NPT)に加盟しなかったり、実質的に違反したりする国に対する予防措置、あるいは牽制装置という性格が強い。そもそもこの枠組みが成立したのが、インド(NPTに加盟していない)による核実験に対する制裁を目的としたものであった。
 他方、NPTそのものについても、核を持つものによる持たざるものの差別である、という批判があるほか、核兵器保有国の核軍縮が一向にはかばかしく進んでいない、という事実がある。さらに、NPT枠組みに逆らって核兵器保有国になった国に対して追認姿勢ともいうべき態度を見せる米国に、非核兵器国からさまざまな疑念が提示されているのは周知の通りであり、いわゆるNPT体制のほころびが随所にみられるようになってきた。

日本の態度
 非核三原則を国是とするわが国はNPTの支持者であり、またNSGのメンバーでもある。どの国のいかなる核実験にも反対の立場を貫き通しているし、まして新たに核兵器を保有しようとする国に対しては断固反対という抗議の姿勢をとり続けている。その一方で米国の「核の傘」の下で安全保障条約のメリットを享受しているのも現実であり、その限りにおいては、核兵器既保有国を是認するものの、その拡散を防止しようとする(NSGを含む)NPT体制を擁護しようとするのは首尾一貫した立場であったといってよい。
 パキスタン、インドさらには北朝鮮、イランの核保有についても、わが国が反対、抗議の姿勢を貫いているのもこれまでの延長線上にあり、揺らぎのない姿勢であったといえよう。ところが、昨年3月の米印合意を受けて、この態度が今後も貫き通せるか否か、いささか微妙な局面に立ち至っている。

米印合意の中身
 米国とインドの合意の中身のうち、一番肝要なのは、インドが自ら民生用であると認めた原子力施設にはIAEAによる査察(保障措置)を認めるが、軍事用であると指定した施設はその枠外、とするインドの態度を追認ないしは是認する点である。これはインドを事実上の核兵器保有国と認めることに他ならず、NPTは骨抜き、あるいは崩壊したという見方も可能である。
 またしても米国の独善的ユニラテラリズム、あるいはダブルスタンダード、と断ずるのは容易だが、火の粉はもろにわが国に降りかかっている。というのも米国はこの合意成立に際して、国内法改正(具体的には)対インド核開発関連物資禁輸措置の解除とNSGの同意を条件としたからである。このうち前者は米国内の強力なインドロビーの影響力もあって成立。あとはNSGの論議が残っている。
 これまでのところ態度を明確にするのを避け続けてきた日本だが、近々予定されているNSG会合においては米国とインドの立場を支持するか否か、はっきりさせねばならなくなるであろう。

何が問題なのか
 誰が何を言おうとも、どうせインドは核開発をするに決まっているのだから、せめては痕跡程度にでもNPT枠組みとのリンクをつけておいたほうがよい、という現実主義的な、あるいは敗北主義的なアプローチがある。いうまでもなく、第二・第三のインドが出てきたときどうするんだ、という懸念はあるものの、興隆著しいインドの国際的地位に対する配慮、さらには中国に対する牽制要素としてのインドの存在まで考慮に入れれば、あり得る選択肢の一つと言ってよいだろう。さらにその経済力とを考え合わせれば原子力発電の巨大マーケットとしてのインドによだれが出るというのも一つの要素ではある。
 これらの諸点に対する是非の議論より先に、わが国において、この問題が全くと言ってよいほど取り上げられないことのほうが問題だ。核問題について日本の立場が問われている、という意識も、認識もないままにNSGにおいてわが国が態度表明をしたとすれば、それこそが大問題である。もしかすると、世界唯一の被爆国が世界に向けて発信しなければならない最重要課題であるにも関わらず、全くと言ってよいほどだんまりを決め込んでいるメディアは、その機能を停止しているかのごとくである。(入山 映)


※NSG=原子力供給グループ
1977年、インドの核実験(1974年)を契機に設立。
現在、日本を含めて45カ国参加。
原子力関連資機材、技術の輸出国が守るべき指針に基づいて輸出管理を実施している。(法的拘束力のない紳士協定)

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