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近年、急激な高成長を続ける中国。北京オリンピック、上海万博を控えて、成長に弾みがついており、今後ますます発展することが予想されている。しかし、その一方で、エネルギー消費が急速に増え、それに伴い環境汚染などの問題も発生している。隣国の日本は、そういった中国の影響を最も受けやすい状況にあるため、政府、民間ベースで、省エネ技術や環境防止技術などの面で中国との関係強化を図って、共生の関係を築いている。
今回のシリーズ「中国経済・エネルギーの展望―企業トップに聞く日中関係」では、2007年4月に中国の温 家宝 首相が初訪日した際に開催された「日中エネルギー協力セミナー」に参加された日本企業のトップの方に日中関係の現状や展望をうかがっていく。
第2回は、製鉄技術を始め、環境・省エネルギー技術を世界に誇る、新日本製鐵株式会社の三村明夫代表取締役社長に登場願った。
「Win-Win」の関係のためには、文化の違いを認めること
続いて、新日鉄と中国の、上海・宝山鉄鋼へアルセロールと共同で合併事業を展開されていること、また初期の宝山の建設への協力など、長い関係に触れ、中国との「Win-Win」の関係(日本にとっては、世界的にも進んだ省エネ・環境技術を中国に供与することで、世界全体のエネルギー相場安定や環境保護、日中関係の改善などが見込める。という意味の二階俊博・前経産相の言葉から)を築くためにはどうすれば良いのかについては、「言葉で言うのは簡単だけれども、実績としてとして残すのは大変です」と、慎重な態度を示した後、「『日中友好』というのは交渉が決裂したときの決まり用語で、逆に何かがマズくいっているということの証拠でもある」と辛辣な言葉で表現した。
アルセロールとのジョイントベンチャーに関しては、「確かに世界に類を見ないくらいうまくいっているが、これはいろいろなことが重なった結果で、これをうまく運営していくのは非常に大変」と、その苦労を語った。
「文化の違いというのがとても大きい。我々は当たり前のこととしてやっている仕事のやり方も、彼らからすると当たり前ではない。議論していくと、文化の違いがだんだんわかってくる。そういうことを乗り越えて、違いの存在を認めながらさてどうするのかというところまでいくとようやく本物になる。秘訣はない」と、国を超えての事業の大きさと、得たものを強調した。
最大の問題は、非効率的な企業の淘汰の進捗
今後の展望に関しては、全世界的に鉄鋼の需要がここ数年で爆発的に伸びていることを挙げ、「先進国だけではなく、発展途上国も伸びている、バランスの取れた伸び方をしている」とし、「需要については当面心配は要らない」とした。そして最大の心配事項として、「その需要を上回るペースで中国の生産能力が増えていること」を挙げた。
「これに伴い、中国政府はこの生産能力の伸びを抑制しようと、特に環境対策をほとんどしていない小さいメーカーを淘汰して、環境対策をし、エネルギー効率のよい大メーカーに吸収するというきわめてわかりやすい政策を打ち出している。そのために、懲罰的な電力料金を課す、輸出税を課す、また元が8〜10%上がったことも、輸出には不利な状況です」と、中国の現状を述べた。
しかしそういう状況にも関わらず、中小メーカーは依然として操業を続けている。その理由として三村社長は、「地方にとっては税収のもとであり、雇用の先でありますから、中央政府がいくら言っても、地方としてはこれを優遇することによって、地方としての成長を遂げたい。『政策あれば対策あり』ということがそのまま起こっているわけです」と分析した。
そして中国最大の問題を、「非効率的な企業の淘汰の進捗が、中央政府の言うように『遅々として』いるわけです。ただ将来的には、中国の展望というと、小さなメーカーは淘汰されていくことになると思います。しかし時間がかかる。世界の鉄鋼業界の需給関係としては、これが最大の、当面は唯一の問題です」と語り、「まあこれくらいの課題があるほうが、全て良いということよりも健全な企業経営ができるのではないかと、諦めています」と冗談を交えて括った。 (事務局スタッフ=伊奈 恵子)
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