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ブッシュ大統領は、1にも2にも3にもイラクのことで頭が一杯になっている。従って、北朝鮮問題には関心がない。これは、2ヶ月前にブルッキングス研究所のタルボット所長から直接聞いた話である。しかし、最近、この言葉に反し、北朝鮮問題が前進している。 この夏、ユーラシア大陸の東西にあるパレスチナ問題と北朝鮮問題が、同時に動き出そうとしている。その背景には、ブッシュ外交の変化にある。そして、今後の展開として、カリスマ的な外交特使の役割が期待されている。 ブッシュ外交の変化敵と交渉しないのが、チェイニー副大統領の外交戦略であり、それがブッシュ外交の主流となってきた。しかし、チェイニー副大統領の影響の陰りと共に、敵と交渉・協議するという外交の奔流が活発化してきた。 中東和平のロードマップを描く、米国、ロシア、欧州連合、国連のカルテットの中心にブレア前首相が、中東特使として任命され、中東を訪問中である。ライス国務長官とゲーツ国防長官が、8月上旬に中東を訪問する。また、フランスのサルコジ大統領、ドイツのメルケル首相など米国との連携を重視する勢力の台頭にも注視する必要がある。 このように中東問題に関しては、今までとは全く違った動きが出ている。まるで、今までのブッシュ外交の真空を埋め、対話路線を通じた外交重視による大統領選に向けた共和党のイメージ向上戦略のようである。 北朝鮮問題における日本の立場北朝鮮問題については、日本のメディアが、ブッシュ政権の対北朝鮮政策は、融和主義的過ぎると主張するほど、奇妙な展開になっている。概して、軍事力が弱い日本が、外交を重視することが多かったが、現在の北朝鮮問題では、六者協議の中で、日本が最もタカ派的な立場にある。この特異な事態において、日本では対極的な二つの見方があるように思う。 第一は、拉致問題の解決なしには、北朝鮮への宥和政策を採るべきでないとの主張。 第二は、六者協議が進展する中で、日本の孤立化を回避しなければいけないとの主張。 この主張を貫くためには、特に米国との親密な協議が不可欠である。何故なら、北朝鮮に対し、対話と圧力、アメとムチ、封じ込め政策(Containment)と建設的関与政策(Engagement)が求められるからである。この二つを併せた造語であるコンゲージメント(Congagement)即ち、日本が封じ込め政策を遂行し、他の国は建設的関与政策を行なうことでバランスがとれるという戦略である。 その上になお、日本の孤立化を避ける意味でも、北朝鮮に国際社会との協調に向けた明るい兆しが現れた時には、日本は、北東アジアの平和戦略のシナリオ、例えば、外交のみならず経済協力、北朝鮮周辺の社会資本整備などの明確なグランドデザインを示すことが重要である。 北朝鮮問題で求められるカリスマ的な外交特使現在、北朝鮮は、軽水炉の提供を条件として核施設の無能力化や解体を期限を限定せず認めようとしている。しかし、これは、13年前の米朝枠組み合意で、軽水炉が提供されたが、北朝鮮が高濃縮ウランによる核開発を進め、苦い失策に終わったことと類似しているように映る。 今日、北朝鮮問題を解決するためには、カリスマ的な外交の調整役の登場が必須である。13年前、クリントン政権の時に、カーター元大統領が、米朝の交渉を行ない、一発触発の危機を回避した。現在、中東問題では、ブレア前首相が主役を務めようとしている。さて、北朝鮮問題においては、誰が適役なのであろうか。共和党政権に近くブッシュ大統領の信頼が厚い、キッシンジャー元国務長官が適任ではないだろうか。(中野 有)
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