アメリカの国務長官と国防長官が揃ってアラブを歴訪するのは、非常にまれなことらしい。ライス長官が、マニラで開催されたアジア地域フォーラムの出席をブッシュ大統領の意向で急遽キャンセルされた。ライス長官のキャンセルは珍しいことでもあるので、それはちょっとしたニュースになった。余程、重要な中東戦略が練られたのだろうということは想像できる。
軍事産業複合体
そして数日して、アメリカがサウジなど湾岸諸国に約2・4兆円、イスラエルとエジプトに10年契約で、約5兆円の武器売却を行うとの報道がなされた。
あえてアメリカの危険な所を一つだけ挙げるとすると、軍事産業複合体の存在がアメリカの経済に大きな影響を与えているということである。平たく言えば、安全保障上の不確実性要因が上昇した方がアメリカの基幹産業である軍事産業が儲かり、ひいては経済も良くなるとの不健全な構造にある。
軍事産業複合体を活性化させる要素として、イランの核開発とイラク戦争の泥沼化が巧妙に利用されている側面も否定できない。
イランの野心を抑止するために湾岸諸国の軍事の近代化が必要となる。イスラエルは、イランやアラブ諸国との勢力を均衡するために、軍事力の強化が必要となる。脅威を取り除くために軍事力という脅威が増強されるという悪循環に陥っているのである。
世界中の大多数が、平和のためには、武器でなく教育であり経済協力であり、社会資本整備であり、人と人との交流であるということを期待しても、現実には、その反対の動きが顕著になっている。
アラブ内部の分断、そしてアラブとペルシャの対立で漁夫の利を得ることができるのは、イスラエルである。また、アラブとイスラエルに武器を提供し利益を得ることができるのが、ペンタゴンであり軍事産業複合体であり、アメリカである。
柔よく剛を制する
このようにアメリカの戦略の根底には覇道が歴然と存在している。先の世界大戦の勝者ゆえに陥る盛者必衰の理が、覇道の行き着く先であろう。一方、王道とは、相互依存、協調、共生に根ざした政策や戦略である。王道は脅威を排除し、共に発展する原動力である。
軍事というハードパワーでなく、文化交流や経済協力などのソフトパワーが求められている。戦時中のハンディキャップを克服しサッカーのアジア杯で優勝したイラクは、スポーツという王道を通じ世界に向けた貴重なメッセージを送った。イラクのメッセージを無駄にするのでなく、我々に求められているのは、「柔よく剛を制するための活動」が具体化されるための行動であろう。 (中野 有)
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マニフェストデスティニーの精神旺盛なアメリカらしいですね。覇道ははた目から見ていて、わかりやすいし結果が速く出ますが、王道は時間がかかるし成果がわかりにくいと思います。加えて弱腰にもとられかねない。目先のことがより重要である多くの民衆にとっては、覇道のほうがウケがいいのではないでしょうか。
王道政治実現のためには、長期政権の実現が不可欠と考えます。そのためには、「国民の教育と積極的な政治参加」あるいは「王政復古」が肝要かと・・・。
2007/8/9(木) 午後 2:58 [ 劉邦 ]
>王道とは、相互依存、協調、共生に根ざした政策や戦略である。王道は脅威を排除し、共に発展する原動力である。 その意味では、日本が存在感を発揮しうるチャンスですね。日本にはその文化的素地が多分にあると思います。国連常任理事国入りという悲願もあることですし。このような話が選挙でも争点になるようになればいいのに・・・。
故事に「四馬のたとえ」というものがあります。1.ムチを見ただけで走り出す「駿馬」2.ムチが入ってはじめて走り出す「良馬」2.何度も叩かれ、皮が破れて血が流れてはじめて走り出す「平馬」4.ムチが骨に達してはじめて走り出す「駄馬」。我々は、どの馬なのでしょうか。
2007/8/9(木) 午後 3:09 [ 劉邦 ]