メディア・レボリューション

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えりもの秋


        ♪ 風はひゅるひゅる 波はざんぶりこ

             誰か私を呼んでるような 襟裳岬の 風と波 ♪

イメージ 1

 日高山脈の最南端に位置し、厳しい自然と向かい合っているエリモ岬の秋はどんなものでしょうか。
 秋の証を求めて、9月末、出掛けてきました。

天高く馬肥ゆる秋
イメージ 2 札幌を出て苫小牧から海と並行する日高路を走りますと、車窓から見えるのは牧場ばかりです。
 広くて青い牧場に、ふんわりと浮かぶ白い雲、サラブレッドの親子が仲良く牧草を食んでいます。
 (写真:三石地区)
 これこそ天高く馬肥ゆる秋といえる光景です。
 けれど実際にはサラブレッドが肥えたら、競走馬にはなれません。
 贅肉のない流線型の体形が美しい動物です。
 むしろ肥えているのは同行したお腹の出た紳士と、くびれたウエストがないご婦人たちです。

絶滅危惧種
イメージ 3 のどかな光景も札幌を出て4時間、浦河を過ぎて襟裳岬に近くなりますと一変します。
 太平洋に落ちる崖を、くり貫いた隧道をいくつも通ります。
 バスをおりて、隧道わきの崖を登りました。
 はやくもこの日のフィールドワークの目玉とご対面です。
 赤い花、サボテンのような分厚い葉のヒダカミセバヤが岩肌にへばりつくように咲いていました。(写真)
 ヒダカミセバヤはかってはあちこちで観察できたそうです。
 道路開発と岩肌がコンクリートで固められたことから急激に減少し、いまや絶滅危惧種に指定されている貴重な植物になっています。

 去年は岩肌の高いところを見上げるようにしてしか観察できませんでしたが、ことしは目の前の岩肌でじっくり観察できるチャンスに恵まれました。

イメージ 4 今回のガイド役は北大歯学部の先生で、仕事の関係もあってえりもに百回以上通ったという植物好きの先生です。
 盗掘を恐れてあまり公にされてない場所に案内してくれました。

 フランスギクのようなコハマギクも咲いていました。(写真)

 北海道から東北太平洋岸に分布する秋の花の海浜植物です。
 花の時期は春夏だけじゃないよ、と言わんばかりに強い風にゆれながら咲いていました。



漁師の植樹
イメージ 5

 恐竜の尻尾のような襟裳岬に到着しました。
 この日の襟裳岬は相変わらず風はありましたが、比較的穏やかな日でした。(写真)
 襟裳周辺の海岸とハゲ山は、ひとたび雨が降ると土砂が流れ出して前浜を濁らせ、昆布漁にも影響が出ていました。
 このため良い魚場を作るには植樹が大切だということで、
 この地域一帯で地道な緑化事業が行われています。
 漁師が生活のために植樹する、というのが毎年ニュースになっています。

イメージ 6 緑化事業が始まってほぼ半世紀、荒れ果てた土地に緑が次第に増えてきました。
 天皇陛下はこの緑化事業に強く関心を示され、去年、札幌で開かれた医学学会に臨席されたあと、地方事情視察と称してわざわざえりもに立ち寄りました。
 失礼ながら天皇もよく勉強されてるなと思ったものです。

 今回訪れた襟裳岬の先端には、早くも天皇陛下の来訪記念碑が立っていました。

   吹きすさぶ 海風に耐へし 黒松を

         永年(ながとし)かけて 人ら育てぬ

 石碑には天皇の思いが伝わる御歌が刻み込まれていました。


花の宝庫
イメージ 7 襟裳岬から百人浜へと海沿いに日高の反対側に向かう道路数十キロには、電柱は全くありません。
 地下に埋没されている? 
 ブー、
 このあたりには人が全く住んでいないため必要ないのです。
 江戸時代に南部藩の廻船が襟裳岬で難破し、乗組員100人以上がこの浜に漂着したものの、飢えと寒さで死亡したことから百人浜と名づけられました。

 実はこの百人浜の湿地帯こそ珍しい植物の宝庫です。(写真)

 すでに終わりかけですが、チシマセンブリがまだ観察されました。(写真下左)
 独特の青い花弁に濃紫色の斑紋があり、一見アケボノソウを思わせますが、こちらのほうが神秘高潔な雰囲気があります。
 あちこちに土が掘り起こされており、盗掘が絶えないことが一目見てわかります。
 清楚なウメバチソウも風に揺られながら咲いていました。(写真下右)

         イメージ 8 イメージ 9

 このほか、紫のオオノアザミ、黄色のアキノキリンソウ、白いナガボノシロワレモコウ、さらにハマナスの赤い実があちこちに観察されました。
 10月になろうとするのに、こんなに多くの花を観察できるとは思いもよりませんでした。
 ただ、いずれの草木も他の地域と比べて背丈が小さくて、まるでミニ盆栽のようです。
 風が強い厳しい自然状況であることがしのばれます。

サケの遡上
イメージ 10 日高沿岸には日高山脈から多くの川が流れ込んでいます。
 いずれの川にも、この時期サケが、故郷の川に帰ってきます。
 秋サケはサケが遡上する直前の沖合いにいるが時が、一番脂がのっておいしいと言われています。
 このため、どこの沿岸にも定置網が張られて、一番おいしい時期のサケを一網打尽にしています。
 日高沿岸のサケはとくに「銀聖」というブランドで、高値で取引されています。
 その定置網をかい潜ってきたサケが、えりも町の小さな2級河川、歌別川に遡上していました。

 車から降りて橋の上から覗き込みますと、川幅一杯にサケが群れていました。
 秋を実感する光景でした。

 広い北海道も道路事情が良くなり、札幌からの日帰り圏が広くなりました。
 札幌から250kmのえりも岬も日帰り圏に入りましたが、この辺が限界です。
 往復8時間、バスに揺られる強行軍でした。(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

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