メディア・レボリューション

マスコミ各紙各局のOBや、現役の解説者などからなるニュースブログです。TVや新聞には出てこない「新しい」情報を発信します。

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60代初体験のつぶやき

 長寿化時代に入って定年退職からの時間は、一昔前なら想像もつかないくらいほど無尽蔵にある。
 寝てるうちにお迎えが来ないかと待っていると、朝目を覚ますと息をしている。
 こうなると家庭内動物園でえさが出てくるのを待っている。
 クマのようにごろりとしているのも楽しからずやではあるが、達磨さんになって生活習慣病の総合デパートになりそうだ。
 きょうもゴロゴロ・・・毎日うさん臭そうな顔をする家内と朝昼晩食事するのも精神衛生上よくない。
 少しでも社会のお役にたつならばと思って、退職後、観光ボランティアを始めた。もう3年になる。

観光ボランティア
 本州からの観光客に対し、単なる観光案内だけでなく、ウオーキングガイドといって求められれば大通公園や時計台、北大などを一緒に回って案内している。
 案内所の場所が変わって、今月から重要文化財の道庁赤レンガの中で詰めている。
 観光ボランティアも少しづつ市民権を得ているようだ。

 観光を町の柱にしようとする札幌では、観光ボランティアに対する需要は多く、この夏からは思いもよらなかった体験をしている。
 観光バスガイドである。
 人生右肩下がりの、くたばり加減の者が「何で物好きなことを」とお思いかもしれないが、これがまた実に楽しい。

札幌ヒルズ循環バス
イメージ 1

 札幌商工会議所とJRバスが共同で新しい観光コースをつくった。
 札幌都心に近い所にある大倉山・円山・藻岩山を回る循環バスである。(写真:右から三角山・大倉山、左に切れているが円山、藻岩山と続く)
 札幌に一度はお見えになった人なら耳にするか、あるいは足を運んだであろう山々である。
 名づけて「札幌ヒルズ循環バス」

< さすがに広い石狩の平野も、札幌市街の南西に連なる大小の山々に行く手を阻まれる。

  藻岩山・円山・双子山・大倉山・それに前後して三角山、手稲山と続く山々。

  札幌で春が来たといい、雪がきたというとき、いつもこれらの山々のたたずまいが鏡になる・・・ > 

イメージ 2 札幌出身の野外彫刻家、本郷新のエッセーを紹介するまでもなく、札幌の人はこれらの山々が皮膚感覚に中に入り込んでいるということを、純粋道産子でない私にもよく理解できる。
 標高250〜500mほどのこれらの山の麓を走る循環バスは、ことし8月から試験的に運行された。
 いわゆる路線バスでないため、チケット(\1500)を購入しなければ乗車できない。
 7箇所のステーションを2台のバスが30分ごとに循環し、客は好きなところで降り、好きなところで乗ることができる。
 乗り降り自由のバスである。
 ボンネットのあるレトロ調のバスが旅情を誘う。
 またこの間の施設の入場料、利用料はすべて無料である。

ビューポイント
イメージ 3 多くの客はまず藻岩山のロープウエーで頂上までいって、眼下に広がる人口189万の札幌の街並みに目を見張る。
 定山渓から流れてくる豊平川の大扇状地に形成された碁盤の目の街ということがよくわかる。
 天気の良い日は日本海から遠く大雪山系まで眺望できる。
 また藻岩山には見事な落葉広葉樹が繁っている。
 明治時代に藻岩山を訪れたアメリカの高名な植物学者が
 「この地と同じ気候で、しかも狭い面積の中に、これほど木の種類の多い所は世界にない」と高い評価を与えた。
 これを受けて大正10年「藻岩原始林」として天然記念物に指定された。
 天然記念物の多い北海道ではあるが、藻岩原始林こそ北海道の天然記念物指定第一号である。
 以来、都会のど真ん中にありながら藻岩の森は手厚く保護され、緑豊かな町の象徴として市民に愛されている。
 絶滅危惧種のクマゲラやエゾリス、ウサギ、キタキツネなども観察できる山である。
 もし天然記念物に指定されていなかったらどうなっていたであろうか。
 周囲の山々の状況、そして終戦直後のことを考えると、藻岩の木々は薪として伐採され、はげ山になっていたであろう。
 そして今頃は神戸の六甲山と同じように、眺望の聞く高級住宅街として変貌していたであろうと推測される。

バスステーション
イメージ 4

 バスは4000株のバラが咲き誇る山麓のちざきバラ園(上写真)から、円山の鎮守の森の一角にある円山動物園と、次々に止まる。
イメージ 5 そしてウインタースポーツの花形とも言える大倉山シャンツェに到着する。
 シャンツェはドイツ語でジャンプ台という意味だ。
 テレビではおなじみのジャンプ競技も、初めて訪れた観光客はジャンプ台の威容に圧倒される。
 そして「えっ、こんなところを飛ぶの」と驚く。
 競技場を目の当たりにするとジャンプ競技は「飛ぶ」というよりは「落ちる」という競技であることがわかる。
 札幌オリンピックのときは90m級ジャンプがこの地で行われた。
 今では90m級とか70m級とか言わない。いつの間にかラージヒル、ノーマルヒルと言っている。
 リフトに登って307mの頂上の展望台からの眺望がまたすばらしい。
 ジャンパーは展望台の下からまっすぐ札幌市街地に飛び込むように飛ぶ。
 そう思うと背筋が寒くなる。ジャンプ競技は勇気と胆力が必要だ。
 バスはこのあと日本の代表的な野外彫刻家、本郷新の作品が数多く収められた札幌彫刻美術館から、北海道神宮円山公園と循環する。

観光ガイド
イメージ 6 バスが循環する間、ボランティアは客にガイドする。
 当局からアンチョコのようなものはもらっているが、これが全くのお役人的な解説で少しも面白くはない。ピントはずれもある。
 ボランティアは報酬をもらってるわけではないから拘束はされない。好き勝手なことを話す。
 けど一応、札幌シティガイドと北海道観光マスターの資格は有している。
 歴史・地理・自然・文化・生活など、それぞれ得意分野もある。
 中には大変な専門家もいるのに驚く。
 バスのドライバーに言わせると、個々のボランティアが思い思いに話しているから面白いという。
 ただガイドをしているとあっという間に、次のステーションについてしまう。

(写真:札幌彫刻美術館前庭に立つ本郷新の代表的作品戦没学生記念像、わだつみの像 )

 ガイドをしていると、ある事に気づいた。
 客は本州の人より、地元、札幌の人が圧倒的に多いのだ。
 どうやらこの循環バスがとても割安感があるということに目をつけて、家族づれやご婦人のグループが利用している。
 確かに個々の施設の料金をすべて足すと\3600ほどかかるのに、チケットを購入すれば\1500ですみ、しかも足も確保されているので大変お得な行楽だ。
 ステーションはわずか7つであるが、ひとつづつ回ると見ごたえがあるだけに、丸々1日はかかるコースでもある。
 この間、地元の人にイロハのイからガイドするのもちょっと恥ずかしい。
 けど客はいう。
 「札幌に住んでいるけど札幌のことほとんど知らないの。ガイドさん 気を使わないでいろいろ話してください」と言う。
 いずれの行楽地もテレビではよく見るけど、実際に足を運んだことがないという地元の人が多いのに驚く。

魅力あるヒルズ観光
 この札幌ヒルズ循環バスも、冬が近づく今月中旬で運行終了だ。
 来年再開するのかなと思ったら、どうやら中止の気配である。
 聞くと財政難の札幌市が補助を打ち切るためらしい。
 それはないよ。札幌市さん。
 観光で飯を食っていこうと言っているのは札幌市さんじゃない。
 せっかく芽を出した新企画を、1年で終わりにするとは情けない。
 ステーションを都心の時計台や道庁赤レンガなどと結べば、客は飛躍的に伸びる。
 利用した客はいまのコースでも\2000でも安いのでは、と口々に言う。
 実に魅力ある札幌観光新コースだと思うので、ぜひ再考してもらいたいものだとおもう。
イメージ 7

( 写真:大倉山から見る札幌市街地 )  

(寄稿=望田 武司)



望田 武司(もちだ・たけし)1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。

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