|
岩見隆夫・毎日新聞特別顧問の対談シリーズの2回目を、7月25日、ChannelJスタジオで、堀内光雄・前自民党総務会長をお迎えして行いました。
郵政民営化に反対を唱えて野に下った堀内氏は、5月に、著書「自民党は殺された!」(5.17,WAC,1575円)を出版。その中で、小泉政権の政策決定を巡って党と政府の間で何が行われたのかを、党総務会のマル秘の議事録を引用して克明に紹介しています。
まずは、この本の内容に触れながら、小泉政治を総括されました。
小泉政治総括
小泉総理に自民党だけでなく「議会も」殺された
岩見: 堀内さん、つい先日、本をお出しになりまして。
『自民党は殺された!』大変、刺激的な題名ですね。
堀内: 題名は私じゃなくて本屋さんがつけたものですから。
岩見: そうですか、これだいぶ売れたんですか。
堀内: 売れてまして、2万を越したようです。
岩見: あ、そうですか、こういう種類の本にしちゃ珍しいですね。
堀内: はい、そのようですね。
岩見: 「殺された」というのは小泉総理に殺されたという意味でしょうか。
堀内: そうですね、小泉総理が自民党を殺したということですね。
自民党というよりも、議会の最大与党であり、議会をリードする自民党というものを殺したということは、議会まで殺したということになると私は考えています。
岩見: 『殺した』っていうのは具体的には。なんか息の根を止められたような感じもしますけども。
堀内: そうですね、殺したっていうのは、今まで自民党というものが政権与党として、国民政党としてこの50年間以上続いてきたわけですね。
国民の声を吸収する。叡智を取り入れた政策を行っていたというのが自民党の国民政党たる所以だったんですね。
それは、自民党の組織。政調会とか、あるいは総務会。そういうものの中で、国民の叡智を吸いあげてきた。
(小泉さんは)それを、最後は一挙に無視してしまった。ということは国民政党ではなくなったって事なんですよね。
そこが『殺された』っていうことなんですね。
岩見: つまり小泉さんの、いわば独裁的な政治になっているっていうことでしょうか。
堀内: そうですね。『ミニヒトラー』ってやつ。ヒトラーはもう少し、なんか、いろんなものを持っていたと思いますけどね。
岩見: なるほど、ミニヒトラーね。この本にも書いてらっしゃいますけど、(富士急行の会長もなさっている堀内さんは)企業人の心得として、「意見は聞くけれども相談はしない」ということを小泉さんにおっしゃったそうですね。ところが小泉さんは、意見も聞かないし相談もしないという。
堀内: 始めはよく意見を聞いていたと思うんですけどね。ま、相談しなくてもいいんですけどね、だけどだんだん変わってきて。権力者ってそういう傾向がありますからね。頂点に長い期間いる間に、意見も聞かなくなってしまった。
で、自分の考え方が中心ですね。ですから、彼の政策は、(たった一つの)『円』なんですね。その中心に自分がいる。円の中心は一つしかないですからね。自分の考えが一番正しいんだということになるわけですけども、この円だけで収まらないのが、日本の社会でしてねえ。こっちの円もあれば、あっちの円もある。いろんな円があって、それが固まって社会になっているんで、その全体の重心を探すっていうのが政治なのではないかと思うんです。
その政治の取り組み方を一切なくしちゃって、円の真ん中の、自分の考え方を中心としたものを強引に進める。これが、自民党と議会政治を殺してしまったということですね。
ポピュリズム政治、小泉総理は自民党攻撃で英雄に−堀内 郵政選挙自民圧勝、「国民もどうかと思う」−岩見
岩見: 戦後、こういうタイプの総理大臣を見たことがないものですから、ちょっと怖い感じがします。
よく5年間もった。
堀内: ポピュリズムですね。ヒトラーの『我が闘争』を読みますとね、彼は議会を攻撃してるんですよ。「議会政治のある限り、無知な、無能力な議員の多数決に支配されなければならない」とかを盛んに国民にアピールして、最後は「授権法」ってもので(立法権を議会から)とっちゃった。
それと同じように、小泉さんは議会じゃなく、自民党を攻撃したわけですよね。「ぶっ壊す」って言って。自民党ですから国民が見ていると極めて安全。(加えて、国民は)「あんな自民党はだめだ」というふうに思ってましたから、攻撃しても「そうだそうだ」と。で、俺に反対するものは抵抗勢力だと。同じポピュリズムで、小泉さんを英雄化しちゃったんですね。
ポピュリズムが右傾化しますと一番怖い。だから私たちが子供の時、感じてますけどね、どんどん滑っちゃいますからね。「鉄火の如く」って言いますかね。
岩見: 今のお話でぴったりなのは、去年の郵政解散選挙ですね。
これ私もびっくりしたんですが、要するに、国会の判断が間違っているから国民の判断を示してくれという。国会軽視も甚だしい。このようなことをやった総理大臣も過去にいないですよね。
しかも、その総選挙で自民党が圧勝するわけですから。国民もどうかと思いますなあ。
堀内: そういう方向に持っていく。魔術師ですよね。ヒトラーが持っていったのと同じですよね。
みんな歓声をあげて支援したんですから。ホリエモンまで。
岩見: 私どもメディアも表現方法に困って、とうとう『小泉マジック』っていう言葉を使っちゃったんですよね。変な言葉なんですけどもね。
堀内: なるほどね。劇場でマジックしてるんですからね。(笑)
「無責任社会」は、小泉政治手法の結果
岩見: そういう政治が5年間続いた結果、相当国も社会も個人も、随分くたびれて、荒れて、しかも格差が広がった。
堀内: そうですね、いろいろ世の中荒れてきましたね。これも別に小泉さんに責任があるとは言いませんけどね、小泉さんの手法がそういう方向に導いたってことは言えると思うんですよ。
一つは『ワンフレーズポリティクス』でしょ。これ、改革って言えば、国民は「うん、改革か」となる。で、何の改革かということは言わない。
岩見: 言わないですね。
堀内: 「改革なくして成長なし」とか、「改革なくして・・・」でしょ。ですからみんな改革の先にあるビジョンとか結果っていうのは知らされないんですよ。それぞれ自分たちの考えている改革を頭に浮かべますからね、みんな賛成なんです。
岩見: なんか意味がわからないけどわかったような気になって。
堀内: そうそう。だから改革自体を見てみたら、結果どうなったかっていうとみんな中途半端。
改革を持ち出したことは非常にいいことですよ。だけど結果は、みんなビジョンもないし結末も出してませんから、みんな中途半端のことでおしまいになっちゃうってことがありますね。
もう一つ出てくるのが、『無責任さ』。これも政治を面白くしたことにおいてはすごい。
(例えば)すり替え答弁。普通の人だと困って詰まっちゃうか、謝るか、となるところを「人生いろいろ」。
岩見: うまいですよね、そのあたりは。
堀内: うまいでしょ。で、みんな、うまいこと言うなと思うわけですよ。
それからもう一つは、「自衛隊の行っているところが非戦闘地域」。なるほどうまいこと言うと、みんな感心するんですよ。で、その時は笑ってるんですよ。で、そのうちになんかこれで世の中いいんだなって感じにみんななってきちゃった。
ですから責任をとろうとしないんですよね。責任をとろうというのがなくなったところに今の無責任社会が出てきちゃった。
これは私は最も悪いことだと思いますね。
岩見: 「一億総『無責任』時代」を迎えていますけどね。あの、小泉政権は間もなく終わるわけですが、いいこともやったのかも知れませんけども、随分、傷あとを残したなという感じはありますね。
堀内: そうですね。
岩見: もう一つ、外交。近隣諸国との関係ですけどね、これも相当なところに来てしまってますが。
堀内: そうですね。やっぱり国益っていうものをお考えにならないところが(小泉流)。自分の考え方が中心ですからね。
向こうがどう受けとるかとか、何をしておかなければいけないかということは、基本的にあまりお考えにならないようなんですね。ですからひらめいたところでいきますからね。外交だっていきあたりばったりでしょ。
岩見: なんか直感と思い込みって感じがありますよね。
堀内: でしょ。それで進みましたね。だからこれを取り戻すのはなかなか大変なんで。次の人は大変でしょうね。
岩見: 小泉さんご本人は非常にうまくいったと思ってらっしゃるみたいですね。
堀内: うん、なんかはしゃいでいますからね。
岩見: 反省じみた話は全くなくて、最後を楽しんで外遊してらっしゃるという感じなんでね。
堀内: 幸せなお方だと思いますね。(笑)
岩見: この本の最後(の章)は『自民党の悲鳴が聞こえる』ということになっておりますけれども、この自民党も小泉さんの後、なかなか大変ですからね。
堀内: そうです。そうだと思います。
岩見: はい。次は今のお話を伺った上でのポスト小泉のお話をします。
岩見隆夫の「政界のご意見番に聞く」―堀内光雄・元自民党総務会長(下)「ポスト小泉」 は27日に掲載予定です。ご期待ください。
|